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骨身を惜しまず、挑め新世界!!  作者: 幸・彦
第五章・暮らしのアイディア改革
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快適な暮らし・3

というわけで、まずは朝食。これは手持ちで済ませます。


ラスクみたいな固いパンとほうじ茶っぽいお茶。それにリンゴを1個ずつ。

リンゴについてはもっと別の名前があるはずだけど、見た目も味も完全にリンゴ。

だからリンゴと呼称してしまっている。別にいいよね。

食の根幹が地球と変わらないのはありがたい。やっぱりここは「異星」よりむしろ

「異世界」と呼ぶ方がふさわしい気がするんだよね。


さあて。

日も高くなってきたし、食料調達に出かけるとしよう。


=====================================


「まずは何か狩ろう。食料大臣、狩猟対象について提案は?」

「え?あたし?」

「そう。」

「えぇー…っと、そうね。」


いきなり話を振られたリータは少し動揺したけど、すぐにその気になったらしい。


「ここから近い場所で捕れる、食用に適した動物と言えば…ケルクァ鳥かなあ。」

「鳥?」

「そう。かなり大きな鳥よ。しかもものすごく美味しい、いわゆる高級食材。」

「ほほう。」


いきなりソソるフレーズが出てきたね。

食に対する関心が薄かったのが嘘のように、味わってみたい衝動が湧き上がる。


「…だけど、あれはどうかなぁ…」

「何か問題でも?」


タカネの問いに、リータはちょっと肩をすくめる。


「大き過ぎるから、3人じゃちょっと持て余すかも知れない。持ち歩くにしても、

 燻製にするか干し肉にするかしないと、すぐ傷むから…。」

「食べ切ればいいじゃない。」

「いや、そうじゃなくてさ…」


うん、言いたい事は分かる。

だけど今は、とりあえず狩ってみよう。話はそれからだ。


「どっちに行けばいいの?」

「北の山の方ね。ササナサの谷の手前まで行けば、巣があると思うから。」

「よっしゃ。じゃあ行ってみよう。」

「歩いて行くなら、それなりの準備を…」

人狼融合(エヴォルフュージョン)。」


足を獣脚に変化させ、あたしはポーンと3mほど跳ねてみせた。


「谷まで一気に走るから、案内よろしくね。」

「え?いやちょっ…」


何か言う前に、タカネがリータの小柄な体をひょいと持ち上げた。それと同時に、

彼女の脚もほんの少しだけ変形する。

準備オッケー。


「いざ、ケルクァ鳥ハントへ!」

「いざ!」


次の瞬間、あたしたちは虚空に身を躍らせていた。


「ちょっとぉぉぉ!!!」


悲鳴交じりの異議は却下。

チート能力だからって何もかも制限してたんじゃ、楽しくないからね。

こういう時は遠慮しないよ?


並んで空中を疾駆するあたしたちの目に、木々の緑が鮮やかに映えていた。


=====================================


「あれがケルクァ鳥ね。」


ほどなく辿り着いた森の端で、あたしたち3人は谷を覗き込むように並んでいた。

リータはちょっとジャンプ酔いしたらしいけど、何とか立て直したみたいだ。

眼下には、森と山を隔てるかのような切り立った谷が川沿いにずっと続いている。

この世界へ来た日に落っこちたあの崖に似ているけど、高さが倍以上ありそうだ。

そんな谷を縫うようにして、緑色の羽を持った大きな鳥が何羽も飛んでいた。


「確かにでっかいね。」

「でしょ?」

「食べ応えがありそう。」

「いや、その…」

「じゃあ、ちょっと狩ってみましょうか。」


そう言って、タカネがゆっくりと立ち上がった。


「どうやって狩るの?下手すると真っさかさま…って、あんまり関係ないのか。

 飛べるんだもんね。」

「まあそうだけど、こんな事くらいで飛ばないよ。あれは、本当に緊急の時用。」

「だけど、ここから撃ったら谷底に落ちちゃうんじゃ…」

「ま、見ててよ。」


ニッと笑ったタカネが、指鉄砲の形を作って谷間のケルクァ鳥にまっすぐ向ける。

そういうあたり、あたしに染まってきたのか…ただ単に合わせてくれてるだけか。


竜牙弾(ファング・バレット)!」


パシュッというかすかな音と共に、長さ5cmほどの牙が音速で射出された。

谷全体にかすかにかかる霧を吹き散らし、そのままケルクァ鳥へと到達する。

しかし標的のケルクァ鳥は、軽やかな反転でその凶弾を見事に回避してみせた。

そしてこちらをちらりと一瞥し、何事もなかったかのように飛び去っていく。


「距離があり過ぎるよね、やっぱり。」


あからさまに残念な表情を浮かべたリータが、フォローするかのように言った。


「ケルクァ鳥は反響定位が使えるから、狙撃は難しいかも知れな…」

竜牙弾(ファング・バレット)。」


もう一度、今度はごく淡白な声でタカネが呟いた。

それと同時に、悠然と飛び去ろうとしていたあのケルクァ鳥の体が一瞬で脱力し、

そのまま落下していく。


「あれっ!?」


リータは驚いたように身を乗り出したけど、あたしには分かり切った結果だった。


確かに彼女の言うとおり、距離があり過ぎる。いくら初速がマッハ1だとしても、

到達するまでに軌道を把握され、回避されてしまうという事だろう。さすが野生。


だけど、それがどうした。

竜牙弾(ファング・バレット)は、別に手元からしか発射できないわけじゃない。有視界内であれば、

どこの座標からでも撃てるのだ。そう、あのケルクァ鳥の数センチ背後からでも。

見た目が地味なのでアレだけど、きっちり結果は出るのだよ。


落下するかと思われたケルクァ鳥の体は、すぐ下に現れた骨の枠に引っ掛かる。

どう見ても死んでいるその体が虚空に浮いているのは、何ともシュールだった。

打ち抜かれた傷から滴っているのであろう血の滴が、どこか荘厳にさえ見える。


「ゴメンね。」


何となく、そんな言葉が口をついた。


「じゃあ、回収してくるからね。」


感傷とはあまり縁のないタカネが、そう言って虚空に一歩を踏み出す。もちろん、

その足元には骨の足場が形成されていた。


「よっ!!」


両膝を曲げたタカネは、そこから一気に跳躍する。と同時に、遥か前方の空間に

次の足場が現れたのが見えた。そこに着地し、また跳躍。

ランカ河を渡る際に自分もやったけど、こうして見てみると実に美しい跳躍だ。

躍動するタカネの金髪が日の光にキラキラと映えて、ちょっと見とれてしまった。


と、その瞬間。


視界の反対側に、何かの影が走った。

反射的に向けた目に映り込んできたのは、巨大な翼を持つ生物だ。あたしたちの

すぐ目の前を、谷に沿うように高速で横切るところだった。かすかな羽音と共に、

烈風がここまで届く。

鳥ではない。むしろ、翼竜に近い。チラッと見えた口には無数の牙が並んでいた。


滴る血の臭いを嗅ぎ付けたのか、それとも…


「タカネ後ろ!」


あたしは、とっさに叫んだ。

その甲高い声と、翼竜モドキの襲来はほぼ同時だった。


虚空に身を躍らせていた無防備なタカネの体が、ぐるりと勢いよく反転した。

ひときわ強烈な反射光が、離れているはずのあたしとリータの目を鋭く射抜く。

あの光は…

竜の刃(ジアノセイバー)だ。


己のすぐ後ろにまで迫っていた翼竜モドキの大顎めがけ、タカネは何も言わずに

遠心力と筋力を上乗せした亜音速の斬撃を叩き込む。


ヴォン!!


その音は、激突音と言うよりも突風に近かった。

さっきよりも強烈な風が、あたしたち2人の髪を乱す。リータは尻餅をついた。

直撃を食らった翼竜モドキの頭部は、砕ける間すらもなく鮮やかに切断された。

勢いそのままに縦裂きになった巨体が、タカネを避けるように真っ二つに別れて

谷底へと落下していく。

臓腑や血液を撒き散らしながら落ちていった体は、やがて川の水に色を着けた。


新たに出した足場の上に立つタカネは、まるで残心を示すかのようにゆっくりと

竜の刃(ジアノセイバー)を下ろした。やがてその青い刃は、音もなく消える。

やや落としていた腰をまっすぐに伸ばしたタカネの髪が、風になびいた。


やばい。

カッコいい。

動悸が速くなってるのが判る。

心を鷲掴みにされるって、こういうのを言うのだろうか。

その強さと美しさに、大声で叫びたいような衝動に駆られた。


あの人が…


ハッと気付いて振り返ると。

リータの顔は、笑いながら引きつっていた。かなりドン引きしていた。

あぁ、よかった。

…いや、何がよかったって?



何はともあれ、お目当ての高級肉ゲットです。

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