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骨身を惜しまず、挑め新世界!!  作者: 幸・彦
第十七章・もうひとりのクラスメート
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ラスの戦慄

「えっ」


蒼い炎がすぐ目の前で爆ぜるのを見て、あたしは血の気が引くのを感じた。

思わず、すぐ隣に立っているタカネに向き直る。

動いていない。

血相を変えて飛び出したかもと思ったけど、変わらず場の推移を見守っている。

彼女は強い。音を操るぐらいしかできないあたしから見れば、次元の違う存在だ。

もちろんそれを振りかざしたりはしないし、話せば気さくなお姉ちゃんだけどね。


そして、ここまで付き合えば嫌でも分かる。

彼女なら、シュニーホに在籍しているどんな魔術師にも負けないだろうって事は。

もちろんそれは、目の前に現れた「蒼炎のベステュラ」だって例外じゃない。

そこまで強い人がクラスメートになったという事実は、正直かなり嬉しかった。


だけど。

今この場の展開を目の当たりにすると、言いようもない不安が押し寄せてくる。


タカネがメルニィを大事に思っているのは、もはやクラス全員の周知の事実だ。

彼女が窮地に陥るような事があれば、タカネは世界中を敵に回す事も厭わない。

程度の違いはあるけど、リータだって似たようなものだろう。編入生の3人は、

そういう意味でも強い絆を持っている。

もちろんあたしたちだって仲良くなったけど、それとはまた別だろうなと思う。

その事について、特に思うところはない。人と人との関係なんてそれぞれだし。


じゃあ、何が不安なのか。


メルニィが別人だったから?

違う。

姿を変える魔法なんて別に珍しくもない。真相が何であれ、そんな事くらいでは

怖れたりしない。あたしだって伊達にシュニーホに通ってるわけじゃないんだよ。

だったら何か。


この期に及んで、()()()()()()()()()()()()()()()()が怖いんだ。


=====================================


オルラ・ベステュラは、在校生の中では最強と目される魔法の使い手だ。

まだ編入してそんなに経っていないにもかかわらず、その実力は圧倒的過ぎて

誰も相手にならない。たぶん本業の魔術師相手でも決して後れは取らないだろう。

事実、彼女はすでに何度も特命を受けて、単独出向しているという話だ。


戦闘系魔法の使い手たちが競い合っている1・2組の中にあってさえ、その地位を

脅かそうという者は現れないらしい。言わば彼女は、今のシュニーホの看板だ。

だけど隣に立つタカネは、そんなオルラの乱入にさえ行動を起こそうとしない。

どうしてか。いくら自分でも、彼女には敵わないと思っているからか。


逆だ。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と確信しているからだ。


きっと、その確信は正しい。

もし真っ向から衝突する事になったとしても、メルニィは決して負けはしない。

いつも明るく楽しく泣き虫な子だけど、本気を出せばオルラにも絶対に勝てる。

それが事実だという事は、今のタカネの態度で嫌というほど分かってしまった。

確信までは持てないけど、もしこれがリータでも似たような展開になるんだろう。


怖い。

そして、今の状況は決定的にまずい。


=====================================


ジェラが何だかおかしくなっているのは驚いたけど、それは原因を調べればいい。

あれだけ長い間どこかに行ってたんだから、何かしら起きてても不思議じゃない。

以前までならどうしようもなかった。でも、それこそ今はタカネたちがいるんだ。

どんなにジェラが猛り狂おうと、それ以上の力でねじ伏せてしまえば事足りる。

あくまでもそれは4組の問題でしかないから、大ごとにはなり得なかっただろう。


だけど、ここでオルラと激突するのはどう考えてもまずい。


何で彼女がジェラを庇うのかは見当もつかない。何か複雑な事情があるんだろう。

しかし理由がどうであれ、2組のトップと4組の編入生が真っ向から戦うってのは

危険過ぎる展開だ。そもそも、そういう衝突を避けるための教室設定なんだから。


自分こそ一番だと主張する連中が小競り合いを起こすのは、別に珍しくもない。

こないだのあたしとジョウの戦いだって、元はと言えばそういう話が原因だった。

あたしたち4組にはあまり縁がなかったけど、そんな喧嘩はしょっちゅう起こる。

実力至上主義の校風っていうのは、そういうのも含めてのものだからだ。


だけど今。

目の前でメルニィと向き合っている人物は、まぎれもなく在校生のトップだ。

彼女が負けるという事はつまり、”絶対的なトップの座”が崩れる事を意味する。

そこから新たなトップ争いが始まる…なんて能天気な話じゃない。


底辺のはずの4組に、そんな恐るべき実力者がいるのが明らかになるって事だ。

しかも最低でも2人。

気付いてなかったけど、他にも2組の人間がこの場に来ている。…という事は、

この後の展開も間違いなく他のクラスに広まってしまう。


ここまでタカネが動かない以上、きっとメルニィはオルラを負かす。

彼女たち自身がどう思っていようと、その事実は途方もない意味を持ってしまう。


あたしたちにとって、メルニィたち3人は仲のいいクラスメートだ。

底知れない実力を持っているのはとっくに知ってたけど、ごく当たり前の事として

受け入れていた。あたしたちにとって3人は、()()()()()()()()()()()だった。


当たり前の事になり過ぎて、その意味の重さをまともに考えていなかった。

オルラ・ベステュラ以上の実力を持つ人間が複数いるクラスなんて、他から見れば

あまりに危険だ。「全員の力」でグゾントを殲滅した時とは、認識が全然変わる。

魔術師なんて、突き詰めれば「個の力」こそが全てなんだから。


だからこそ、引いた血の気が戻らない。


=====================================


オルラは完全に目が据わっている。

メルニィも少なからず怒っている。


衝突は避けられない気がする。

そうなれば、何かしらの破滅も避けられない。



ささやかだけど楽しい学校生活が、終わってしまう。


嫌だ。

あたしはここでちゃんと一人前になって、笑って卒業したいのに。

その喜びを、みんなと分かち合いたいと思っていたのに。



こんなの嫌だ。

誰か


誰か何とかして!

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