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天翼の罪人  作者: 葉月 都
4/15

記憶



産まれてきた男児に授けられた白い翼についてのニュースは一夜で全世界を駆け巡った。

そして、一般家庭として、一国民として日々を暮らしていた男児の家族は、たった一夜にして超高待遇を受けることとなった。


男児は他の赤ん坊とは違う新生児室に寝かされ、24時間厳戒態勢で警備された。


男児の両親と姉は都内のマンションから5LLDDKの二階建ての住宅に引っ越した。

もちろん政府が用意したものだ。

彼らは最初のうちは戸惑っていたものの、数か月もすればすっかり家に馴染んでいた。




そして、男の子がその家にやってくると、警備も男の子についていくように移動した。

その数は男の子が三歳になる頃には100人に上り、マスコミの数も比例するように増えていった。



男の子は、そんな環境の中すくすくと育ち、背中の翼も年齢とともに成長した。

多くの警備員が男の子を警備し、男の子は大きく世間を騒がせながらも姿を見せることはなかった。




明るい性格に育った少年は、広い家の中をひらひらと舞い、きらきらとした笑顔を家族に振りまいていた。

その純白の翼を動かし空間を飛び回る少年を見て、家族はにこにこと笑っていた。

彼らは本当に幸せだった。




ーーーーー



そして、少年が10歳になった頃。

政府の機密機関で少年の翼……【天翼】の研究が始まった。


提供された天翼の一部である羽を、数十人という有数の研究者達が研究した。


彼らの目的は【天翼を持った人間を増やすこと】。

空を飛ぶ、という人類の夢は飛行機の開発で実現されたが、やはり生身の人間が鳥のように空を飛ぶことも夢見られていた。

だからこそ、少年の天翼は貴重で、夢の詰まったものなのだ。



まず、研究者達は羽の成分調査を行った。

様々な方法で羽は調査されたが、成分もDNAの構成さえも読み取ることができなかった。



次に、彼らは少年に精子を提供してもらい、人工授精による天翼を持った人間を作ろうとした。

しかし、この方法は失敗した。

なぜなら、少年の精子は外気に一瞬触れただけで崩壊してしまったからだ。



この失敗を糧に、彼らは精子の複製を試みた。

外気に触れないように細心の注意を払いながら、精子に改良を加えることができるかどうか試したのだ。

しかし、この方法も失敗した。

羽のように、精子も構成を読み取ることができなかったからだ。



研究者たちは苦悩した。

どうすれば、彼ら…そして人類の長年の夢の一つ「空を飛ぶ」ことができるのだろうか。



悩んだ。

彼らは必死に考え、悩んだ。


しかし、この方法しか、思い浮かばなかった。

それは、本当に、最後の手段だった。


チーフが、言った。





最後の手段だ……"自然受精"を行う。





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