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白
2×××年 東京
ぽつぽつと水色の空を彩る雲がゆっくりと移動していく。
時間の流れを気にしないようなその動きに、青年は小さく欠伸をする。
しかし、少し細めた深い藍色の瞳に明らかに雲とは違う物体が写り、青年は表情を固める。
それは、逆三角錐に切り取られた地底の地面を持った一つの島だった。
「………こら水野くん!授業に集中しなさい!」
「……はーい。」
めんどくさい気持ちを滲ませて青年は若い女性教師に生返事を返す。
教室の端で小さな笑い声が上がったのをよそに、青年は頬杖をついて、分かり切った黒板の問題を見る。
だけど、あの島が目に入れば自然と口角が上がる。
(もう……あと一年か。)
心の中でそう思い、誰にも気づかれないくらいの音量で笑う。
表情の消えた瞳が静かに細められる。
整った顔立ち、高い身長。艶やかな黒髪。
藍色だった瞳が、わずかにきらりと輝いた。
今まで、【天翼の罪人】をありがとうございました!