52.終わりの夜
「そう……ベルン防衛隊司令部が降伏したのね」
「はい……現在市内では散発的な戦闘が発生していますが、何分司令部が壊滅しているため有効な抵抗が出来ていません。ここまで敵が押し寄せるのも時間の問題でしょう」
「それでベルン南方の第4軍団の残存部隊を用いて市内を奪還する事は?」
「魔導通信を用いて確認したのですが……敵を撃退することさえままならない今増援を送るのは不可能との事です」
「……分かったわ、少し横にならせて貰うわ」
そういうと、ミリアはメイドに肩を担がれて自室へと入っていった。
共通暦943年4月29日、総統ミリアは党の幹部、そして使用人と僅かな護衛と共にベルン市内に設けられた地下壕にいた。
四方をコンクリートで囲まれた壕内の彼女の部屋は埃っぽい空気で満たされ、ただかつて流行ったレコードの音だけが響く。そして時々砲撃音がして、天井からぱらぱらと埃が落ちてくるのであった。
壕に入って1週間、彼女はまともに寝たり食事を摂ったりすることが出来ずにいた。もともと悪かった彼女の体調はさらに悪化し、一人で歩く事さえ不可能な事となっていたのだ。
「ふぅ……終わりね、何もかもが」
ミリアはメイドの力を借りてベッドへと腰掛ける。
「ごめんね、こんなところにまで付き合わせて。本当だったら逃げることも出来たのに」
「いいえ、私は総統に拾ってもらった身であります。ですので最後まで一緒すると誓ったのです」
「だから総統と呼ぶなと言うのに……あなたは本当に変わらないわね。……そうだ、ギュッとさせて貰えないかしら」
「わ、私をでありますかっ!?」
「ええ、今はそういう気分なの」
「も、勿論良いでありますが……」
「じゃあ遠慮なく」
ミリアはメイドをぎゅっと抱きしめる。
「……!」
メイドはミリアの細い腕と胸部、そして柔らかな香水の香りに包まれて、顔を真っ赤にする。
何分程そうしていただろう、ミリアは彼女を解放した。
「あらあら、そこまで恥ずかしがらなくてもいいのに」
「し、仕方ないじゃないですかっ!」
メイドは頬を赤く染めたまま、ベッドから急いで遠ざかる。
「そ、そんなに邪険にしなくてもいいのに……」
「総統が悪いんですからね!」
そういうと、彼女は部屋から出て行こうとした。
「待ちなさい!」
「そ、総統……なんですか?」
「貴方は今から私の抱き枕になってもらうわ、これは命令よ」
「そ、そんな……」
「最近私が眠れていないのはあなたも知っているでしょう?」
「それはそうですが……はぁ、仕方ありません」
メイドは渋々ミリアの腕の中へと戻るのであった。
「じゃあ、今晩は一緒ねっ!」
「うっ……やっぱり恥ずかしいであります」
「そんなこと言わないっ!ほらほら」
「ど、どこを触ってるんですか総統!」
「別にいいじゃないの、女同士だし」
「そういう問題じゃありませんっ!って服を脱がさないでください!」
そう言いつつも、メイドは特に抵抗せずにミリアを受け入れた。
ミリアはそれをいいことにさらに彼女を抱きながら、色々なところを撫でていくのであった。
日付が変わる頃、ミリアは久しぶりに夢の世界へと飛び立っていた。
そんな彼女の寝顔をメイドは眺めていた。
「……よかった、こんなに安らかに眠られて」
ミリアの寝顔はとても安らかな者であった。人生の終わりが近づいているとは思えない程に。
メイドはその様子を暫く眺めて、ミリアの腕の中で眠りにつくのであった。
狭い地下壕には、戦場と化したベルンで唯一の安らかな空間が存在していたのだった。
唐突のサービス回らしきモノです。作品に1回くらい必要だと思ったんデスヨネ……
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2017 7/30タイトル変更




