表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/56

34.雷雲は海を渡る

共和国同盟最東端に位置する島国、ウカイネ共和国は同盟国内で二番目に大きな国であった。古来から貿易で栄えたかの国は豊かな鉱物資源に恵まれ、同盟国内でも最初期に工業化に成功した国でもある。貿易で栄えた国という事もあり強大な艦隊を持ち、東方の海の遥か先に位置する大陸には植民地さえも持っていた。しかし開戦当初から戦争参加には消極的であり、強大な魔導船艦隊も本国を離れる事は無かった。それ故に共和国同盟は空戦で敗れる事となったのだ。

しかし大陸がドイチュラントの手に落ちた今、ウカイネ共和国には危機が訪れていた。

国民は一気に現実味を増した戦争という狂気を、今更恐れる事となった。



「えぇ、この作戦で行きましょう。奴らの艦隊を完膚なきまでに叩き潰すのよ!これで決定ね。では解散!」

共通暦938年冬のとある日の夜、ドイチュラント国ベルンにある総統の執務室にて、総統及び各軍総司令官及び将官はウカイネ共和国侵攻作戦について会議を行っていた。

「我がドイチュラント軍主力艦隊を用いれば奴らの艦隊などひとたまりもないでしょう!良い知らせが届くのをお待ちください、総統!」

そう言いつつ艦隊総司令官であるエーリヒ・ゲーリング元帥は部屋を出る。

それに続いて残りの軍人が退室を始める。

その中には要塞突破によって二階級特進したエルンスト・ルィンデルマン少将の姿もあった。


彼は総統官邸へ出て車に乗り込み、運転手に自宅へと走らせる。そして大きく息を吐き、ぼそりと呟く。

「調子の乗り過ぎだ……いくら快進撃を続けているとは言え、あの作戦が成功するとは到底思えん」

執務室で決められた作戦、それは余りにも未熟な作戦であった。

これは魔導船によって空挺部隊をウカイネ共和国にて降下させ、主要な魔導船港などを占領した後に主力部隊がウカイネ共和国に上陸するというものであった。

その為に、魔導船艦隊を用いて敵艦隊を殲滅、または交戦能力を奪う必要があるのだが、ここに一つ問題があった。

それはドイチュラント軍の主力艦隊は打撃力重視で構成されているため、植民地を持つため長く飛べる事を重視したウカイネ共和国艦隊に比べ航続距離が短いのだ。それ故、現在両艦隊はほぼ同じ規模を誇っているものの、今回のような長距離を飛ばなければならない場合にはドイチュラント艦隊は不利になるのだ。

これに加えて、交戦能力を奪うためには魔導船ドッグなどの破壊も必須であるため爆撃艦隊も出撃する事になり、主力艦隊はこれを護衛せねばならずさらに不利な状況へなってしまう。

しかしミリア総統はゲーリング元帥の言う華やかなこの作戦を気に入って採用してしまった。軍事にさほど知識が無い故に。


最早ルンディルマンにとって作戦の結果など分かり切っていた。しかしたかが少将の彼には絶対的権力者を止める力など無かったのである。



年が明けてまだ間もない共通暦939年1月12日朝、ウカイネ共和国侵攻作戦は手筈通りに開始した。

大陸からはドイチュラント軍ほぼ全力と言っていいほどの魔導船が飛び立ち、海を越えてウカイネ共和国へと向かってゆく。


主力艦隊や爆撃艦隊合わせて総勢13の艦隊が空をその姿で埋めて海を渡る。

その姿はまるで何もかもを打ち砕き流し去る雷雲のようであったという。


同日12時頃、ウカイネ共和国はドイチュラント軍の艦隊を察知、予め集結させていた全魔導艦隊を出撃させる。そして13時17分、ウカイネ共和国艦隊から最初の魔導砲が放たれる。

此処にウカイネ沖空戦が始まった。


ちょっとづつ話を手直ししていくので更新量が落ちます...すみません<(_ _)>

ブクマや感想、評価お待ちしています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ