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33.小人は巨人に打ち勝つ

共通暦938年9月3日0時頃、戦線南端付近に駐屯していたドイチュラント軍機甲師団及び艦隊が遂に動き始めた。そして3時頃、クシェピツェ要塞は接近する敵を察知し、迎撃を開始する。



クシェピツェ要塞はヴィスワ川が国境から外れた地点から国境の南端まで築かれた要塞線の内、最南端に位置する要塞である。その地下深くに、多くの兵士が集結していた。

それを眺めるように見る男がいた。

「戦力を集結させたと思ったら、またこの要塞に突っ込んでくるとは……奴らには学習能力と言うものが無いのか?」

彼はヤロスワフ・ザイユォンツ大佐、現在クシェピツェ要塞に配置されているポーレン共和国軍第9大隊指揮官であり、前大戦にも参加した古参の人物だ。

この要塞を熟知し信頼している彼は、この要塞をドイチュラント軍に対抗する絶対的存在と考えていた。

上方で爆発音がする。

「だから爆撃しても無駄だというのに。さて、今回も奴らに地獄を見せてやるとするか」

彼こそが地獄に落とされるとは知らずに、そう呟いた。



「ほらよっ、奴さんのお出ましだ」

要塞のとあるトーチカの中、兵士は興奮した空気の中敵が来るのを待っていた。

「お、やけに今日は真っすぐ突っ込んでくるな、まあいい。狙いよし!」

「撃て!」

要塞が誇る5ゾル砲がドイチュラント軍戦車に命中する。

付近に土煙が巻き起こる。

それを突き破り、新型戦車は前進する。

「何っ!もう一度撃てっ!」

焦るポーレン兵は何度も撃つ、が戦車はそれらを無効化し前進し続ける。

「くそっ、何なのだあれは!もう一度っ」

その瞬間、至近距離から放たれた3ゾル魔導砲がトーチカを消し飛ばした。



クシェピツェ要塞は大混乱に陥っていた。

「現在の状況はっ!どうなっているのだ!」

「ザイユォンツ大佐、現在敵は上部トーチカ群を無力した後、ポーレン共和国内に進軍しております!また一部の敵軍が要塞内に侵入、現在銃撃戦が展開されている模様です」

「なんだとっ!何故トーチカが無力化されたのだ!あれは至近距離でもなければ爆撃や魔導砲に耐えれるはずだぞ!」

「それが、にわかには信じがたい話ですが……生き残った兵によると敵の戦車が魔導砲を無効化したとか……」

「そんな馬鹿な話があるか!情報をきちんと集めてくるのだっ」

「いえ、生き残った兵が皆口を揃えて言っているので確かかと……」

「……信じがたい話だが。まあいい、現在要塞どの辺りまで敵に侵入されているのだ」

「まだ司令部からは遠いという話ですが……この要塞が敵の手に落ちるのも時間の問題でしょう」

「……撤退する」

男は物凄い形相をしながらそう告げた。



こうしてクシェピツェ要塞突破作戦は成功し、クシェピツェ要塞はドイチュラント軍の手に落ちることになった。これによって地下で結ばれた要塞線は情報伝達の混乱もあり南から次々と制圧されてゆき、共和国同盟軍がトンネルを爆破処理したころには3分の1近くの要塞が制圧された後であった。

要塞を失った共和国同盟軍がドイチュラント軍の機甲師団にまともに抵抗できるはずも無く、国境南端から次々とドイチュラント軍に占領されていった。


そして3週間後の9月24日、国境北部に兵を残したままポーレン共和国クラカウがドイチュラント軍に占領され、ポーレン共和国は降伏する。

共和国同盟軍はさらに東方の同盟国に撤退をするも、ドイチュラント軍の勢いをとめることは出来ず、遂に大陸から追い出され共和国同盟最東に位置する島国ウカイネ共和国まで撤退する事になる。


撤退の船の中、とある士官はこう言ったという。


「我らは巨人なれど、無知でその躰は老いていた。故に、知を持ち、鍛錬した小人を止めることは出来なかったのだ」



最早共和国同盟は風前の灯火となっていた。


いつまでもミリア達が出てこなくてすみません<(_ _)>

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