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31.死神は鎌を失うも英雄となる

次に彼がまた目を覚ましたのは、やはりと言うべきか見慣れない部屋の中であった。

「いててて……足に痛みを感じたところまでしか記憶がないが、どうやら僕は生き延びれたようだな」


誰もいない部屋の中、一人呟く。もう日は落ちたらしい、すっかり暗くなった窓の外から涼しげな風が流れ込んでくる。

戦いのせいか、体中が痛い。

彼はふぅと一度だけ息を吐いたのち、もう一度眠りにつく。

新しい朝を迎える為に。



翌日、朝。

彼はいつも通り、朝6時に目を覚ます。暫く空想に耽り暇を潰していると一人の看護婦が入ってきた。


「ヴォ、ヴォルフマンさん!起きられたんですかっ!?」

「そりゃ僕だっていつかは起きますよ。で今回はどの位寝てたんですか?」

やけに冷静に聞くも、答えに驚く。

「もう一か月ほど眠っておられました。このままだと体がやせ細り命の危機に瀕する所だったんですよ」

「本当ですか?……因みに怪我はどの位ですか?」

「銃弾が掠ったのでしょうね、全身に裂傷がありました。あと銃創もです。それにあばら骨が二本と肩の骨折ですね、これはまだ治っていません。最後に……自分で左足を見て下さい」


エルンストは指示に従い、布団を捲り自分の左足を見ようとする。

しかし。

其処に彼の左足は無い。

「っ……こ、これは?」

「機関銃の銃弾を手遅れなほど受けていました。お気の毒ですが……」

「これじゃ僕は二度と戦場に行けないじゃないかっ!それにっ」

「ヴォルクマンさん、落ち着いてくださいっ!誰か鎮静剤をっ!」

「……いや、もう大丈夫です。取り乱してすみません」

「いえ、それが正常な反応です。……申し訳ありませんでした」

「もう仕方ないですし。それに生きて帰って来れたのだからそれで十分です」

彼は少し無理をしつつ、心を落ち着かせた。



しんみりとした空気が数分続いただろうか、空気を変えるためか看護婦が話し始めた。

「あ、あと素晴らしい知らせもあります」

「なんですか?」

「異例の二階級特進で軍曹に昇格だそうですよ、後勲章も。それに生身で戦車を何両も撃破したとして今国内中で報じられています」

「えぇ……本当ですか?あの二階級特進を?」

「はい、本当です。この病院の人なら誰でも知っているくらい」

「僕はSPRのプロパガンダに使われたんでしょうね、まあ名誉な事ですけど。……ですがこの後はどうしましょうかね」

「暫くはこの病室でお過ごし下さい。外だとかなり疲れるでしょう。それに、わざわざこの病室まで来て授章もしてくれるようですよ?」

「有難い事です。……とは言ってもこの体じゃその恩を返せそうに無いですが」

「あんまりそう悲観的にならないで下さい。左足が無くたって出来る事は沢山ありますよ」

「そうですね……正直暫くは悲観的に為らざるを得ません。でも他の楽しい事も考えて帳消しにしてみますよ」

「ええ、是非そうしてください。っと、朝ご飯がまだでしたね。すぐに取ってきます」


そうして看護婦が運んできたのは、やけに豪華な朝食であった。

「これは……僕には豪華過ぎませんかね?」

「目覚めたばかりの英雄に貧相な物を食べさせるか、と料理人が頑張ったんです。お気に召さなかったですか?」

「いえいえ、有難く頂きます」

ふんわりとした卵と白いパンを口に入れつつ、これは今後が相当大変だなとエルンストは思うのであった。

遅くなってすみません<(_ _)>

一応これにてエルンスト編は終わる一度終わるつもりです。

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