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26.人は歴史から何も学ばない

会談は3日後、ベルン近郊の都市ポツダムのとある宮殿にて行われた。

バイエルン王国側からは大使を始めとする外交官総勢12人が参加し、ドイチュラント側からはノイラート外相やSPRの幹部などの錚錚たる顔ぶれが参加した。

後に同行したバイエルン王国外交官はこう語っている。



‘‘あの時、私は空気が重く、重く感じました。仕方がありません、あの時二国は開戦寸前だったのですから。そんな空気の中、大使が言ったんです。

「初めまして、ノイラート外相。今日は建設的な話をしに参りました」

そうはっきりと言ったのです。彼らは嫌悪の目から少しだけ興味を持った疑いの目へと変わり、私たちも幾らか気が楽になりました。確かにこの後の結果から見ると無駄である、と批判する人もいるかもしれません。ですが彼の一言は確かに平和の時をバイエルンにもたらしたのです。’’


共通暦961年―ヤーコフ元駐ドイチュラント外交官



この会談によって犬猿の仲であった二国は条約を結ぶ事になる。内容は表裏合わせて2つの事項である。

表側として両国は相互にいかなる武力行為、侵略行為、攻撃を行わない事、そして裏側では共和国同盟への侵略を黙認する事であった

この条約は周辺国、特に共和国同盟に多きな衝撃を齎した。と同時に、バイエルン王国内でも政府に対し不信感を覚えるものも出てきた。しかし大多数の人は戦争を回避できたことに安心した。彼らの大多数は前戦争の被害者だったからだ。


こうして両国の総動員体制は解かれ、国境は再び通行可能になるなど、少しずつ日常へと戻っていった。しかし同時に1歩、戦争へと近づいたのであった。



一年後、937年頃にはドイチュラントは共和国同盟には届かないとはいえかなりの陸上戦力、そして多数の小型魔導船から成る航空戦力を得ていた。またバイエルン王国においても超巨大魔導船を中心とした航空戦力だけでなく、ドイチュラントに対抗可能な数の機甲師団を中心とした陸上戦力を得ていた。

そんな中、不況の中にあった共和国同盟は旧式装備の歩兵師団が主力であり、数では両国に勝るものの機動力や突破力の不足が目に見えていた。それと同時に、ポーレン共和国では共産党が勢力を伸ばし、政治的内戦状態にあった。


最早一度戦争が起これば結果はどうなるか誰でも分かる。だがポーレン共和国はその伝統から成るプライドを捨てれなかった。


共通暦937年8月29日、ドイチュラント政府は共和国同盟に対し、東ドイチュラントを始めとする旧領土の返還を要求した。これを共和国同盟は拒否、同年9月1日にドイチュラント政府は宣戦布告を行い、同時にドイチュラント軍が国境より共和国同盟に侵攻を開始した。

ドイチュラント=ポーレン戦争の始まりである。



まずドイチュラント軍は北部及び南部より共和国同盟に軍を侵入させた。機甲師団による激しい攻撃により同盟軍の戦線は簡単に破られ、その穴より次々と歩兵を乗せたトラックが侵入していった。

これと同時に東ドイチュラント国内のSPRに賛同する反政府団体が一斉に蜂起、この蜂起により多くの補給路及び命令系統が途絶え、中央の同盟軍主力は動くことが出来ぬままドイチュラント軍によって半包囲されてしまう。

しかしポーレン共和国の高級将校には優秀な者もいた。ポーレン共和国第3師団は唯一ドイチュラント軍に対し有効な損害を与えている師団だった。突破を掛けてくるドイチュラント軍機甲師団に対しあえて一部の隊を下げることで自陣に引き込み、十字砲火で殲滅するという戦術をとっていた。そして敵が損耗した所で反攻を行い、ドイチュラント軍を撤退させることに成功した。


この様に反撃を行っている師団も、戦線の両脇が突破されたことでじわじわと押されていった。

そして遂に同年11月4日ポーレン共和国にドイチュラント軍が達した。しかし此処までの侵攻は同盟軍は想定内であった。なぜならばこの国境の殆どの区域にはヴィスワ川、前戦争の最も死傷者を出した、通称死の川が流れており、天然の要害となっていたからである。

この川ではドイチュラント軍虎の子の機甲師団も有効な戦力とはならず、対処法として考えられていた魔導船から歩兵を降下させ、一部の戦線を崩壊させる作戦も予想以上の対空砲火と航空戦力により失敗してしまう。



またしても戦線は膠着する事となった。

再び血を血で拭う殺し合いが始まる。

あそこまで死者を出した戦いが。

結局、人は歴史から何も学ばないのである。


外交がご都合主義なのは許してください<(_ _)>

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