25.女王ミリア、共和国同盟を切り捨てる
バイエルン王国ミュンヘン城の一室で、ミリア1世は大臣や将軍を集めて緊急の御前会議を行っていた。
「私は即時開戦を行うべきと思います。最早奴らは我らを敵として軍を動かしています。陸戦兵力で劣る我らは今すぐにも先制攻撃を行い、敵の出鼻を挫くべきです!」
「待たれよ!我が軍には抑止力となる超巨大魔導船があるではないか!今回もあちらから仕掛けてきたのではない、話し合いをすれば戦争は防げるはずだ」
「そもそも今回の騒動は我ら軍ではなく貴様らが抗議をしたからであろう!だからこそ奴らは軍を終結させたのだよ」
「あれは最低限の譲歩だ!奴らは我らバイエルン民族に対し迫害を行っている。それだけでも許しがたいのに隣国を無理やり併合するとは我らが宣戦布告してもおかしくない事態だったのだぞ!」
「抑止力としかならない兵力でか?王国軍は防御に特化した兵だ。その程度、いくら外務大臣の貴様でも知っているだろ?」
部屋ではバイエルン王国軍ドイチュラント方面軍司令官ジョージ・ジューコフと外務大臣チェスラウ・モロトーは揉めていた。元来仲の悪い二人であったが、ここまで言い争う事は滅多に無かった。国家の緊急時となった今ある意味必死になっていたのだ。
「黙れ」
一言、彼らの目の前に君臨する女が言う。
「大臣、将軍、両方の意見は分かった。私の意見を言っても良いか?」
声を掛けられた二人は急いで頭を下げ、一歩後ろに下がった。
「私としては、現時点での戦争は避けたい。将軍が言うように我が軍は陸戦兵力にかけている。それに敵も空戦能力が不足している。確かドイチュラントが建造している魔導船も完成するのは後2年後と聞いている。基本的に彼らも現時点での我らとの交戦は避けたいはずだ」
ミリアの目の前の男らは黙って頷く。
「そこで私の意見なのだが……共和国同盟を餌に彼らとの密約を結びたい」
沈黙が場を支配した。
ドイチュラントの総統ミリアはほとんど開戦するつもりでいた。幸いなことに向こう側から宣戦布告を受けそうであり、これでバイエルンによる侵略戦争と言う事が出来るからである。しかし一部の将軍は空戦能力の不足から、開戦反対の意見もちらほらと起こっていた。
そんな時、在ドイチュラントバイエルン王国大使館に一通の電話が届き、それを聞いた外交官ヤーコフは複雑な感情に陥った。
それはドイチュラントとの戦争を回避させよとの物であった。ポーレン共和国やその傀儡国東ドイチュラントへの侵攻を黙認する事を条件にして。
勿論ではあるが、当時旧領土奪還の為に共和国同盟との戦争計画をドイチュラントは練っており、本来であればザクセン王国併合後に宣戦布告するつもりであった。国民は実際の所バイエルン王国よりも共和国同盟の方に強く恨みを持っており、この計画には賛成的であった。
この条件であれば確かにドイチュラントとの開戦を止めることが出来るかもしれない。しかしバイエルン王国にはかつて共和国同盟から移り住んできたものも多く存在する。皮肉なことに、彼もその内の一人であった。しかしこれは重大な仕事である。
彼はドイチュラント政府の外務省へと会談の要請を行った。
外交戦全然知らない……orz 短くなってすいません<(_ _)>
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