23.総統ミリア、国を手にする
「それでは私副総統カールが音頭を取らせていただきます。SPRの第一党躍進を祝して、Prost!(乾杯!)」
「Prost!」
選挙の開票日の夜、SPR党本部では祝賀パーティーが行われていた。
パーティーは党幹部らは勿論の事、多くの招待された支援者が参加した。党本部の前には招待客以外の多くの支援者が駆けつけ、てんやわんやの騒ぎとなっていた。
パーティーは立食形式で行われ、ベルンの老舗ホテルのシェフが作った沢山の料理が参加者に振舞われた。
総統ミリアは暫くの間支援者との会話をした後、会場から出て執務室へと向かった。会場では余りに多くの人が話しかけてきて、落ち着いて食事をとれないのだ。
「あら、これも美味しいわね。芳醇な香りが口の中に広がる。流石ホテルのシェフね」
窓から差し込む月明かりに照らされながら、彼女は少し呟く。
そして、ただ食べる。
外の喧騒など一切受け付けない彼女だけの空間がそこには広がっていた。
ミリアは過去を思い出す。
父の戦死通知が家に届き、泣く姿の母を呆然と眺めていた自分。
目の前で消し飛ばされた母と姉の最後の顔。絶望した顔。網膜に焼き付いた顔。
身なりの良い男に声を掛けられた時の喜び。
そして地獄へと叩き落された時の絶望。
何も考えず、ただ植物のように生きていた時。
屋敷を追い出されて、絶望に自由という希望が寄り添ったあの日。
組織に入り、初めてカールと会った日。
そして絶望を感じながら別れた日。
少し虚無感を感じながら生きたあの時。
そしてカールとの奇跡の再会をしたあの時。
APで初めて演説をしたあの日。心躍ったあの日。
SPRの党首となったあの日。更なる興奮と重圧を背負ったあの日。
そして今。政権を勝ち取ったこの日。それにこれからの未来。
ミリアの頭の中でそれらは複雑に絡み合い、更なる思考へと彼女を導いていく。
SPR政権が発足したことでSPRと敵対していたヒンデルブルグ大統領は危機に陥っていた。最早SPRの勢力を完全に抑えることは出来なってたのだ。未だに内閣の指名権を持って至るためミリア組閣は防げてはいるものの、周りからの圧力が酷くこの抵抗が出来なくなるのも時間の問題だった。931年には遂に彼の息子オスカーと側近オットーまでSPRに引き込まれ、説得を受ける。ヒンデルブルグはもう防ぎようがなく、総統ミリアを首相に任命、ここにミリア内閣が発足した。共通暦931年1月30日の事であった。
組閣後すぐに議会は解散され、選挙活動が始まった。しかし2月に国会議事堂が何者かによって放火されてしまう。SPRはこれを対抗勢力である共産党の陰謀と断定、議員を全員逮捕することで、選挙で過半数を超える議席を獲得することに成功した。
3月23日にはミリアは全権委任法を国会承認させることに成功し、立法権を国会からミリア政権に移譲させた。これによって議会の意味はほぼ消え失せたため既存の政党は次々と解散、同年7月に政党禁止法が出されたことで国内からSPR以外の政党は消滅した。
この頃にはドイチュラントが法治主義であることを利用し、憲法に定められた基本的人権や労働者の権利はほとんどが停止された。
932年6月30日には党内外に存在する全ての反ミリア勢力をSPRSSが一斉に粛清され、同年8月にヒンデルブルグ大統領が死亡したことに伴い国家元首法が発効、首相のミリアに大統領権限が委譲されることで、彼女はドイチュラントの元首となった。この頃には既にSPR幹部が州政府に入り込み、民主主義的な地方自治は停止されていたため、総統を中心とするピラミッドが出来上がる。
こうして独裁者ミリアは始まった。
相変わらずセウトな内容です・・・
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