22.総統ミリア、躍進する
SPRの本部は大きな混乱の中にあった。
「なんだと!それは確かな情報か?」
「はい……政府から正式な文書が届きました。こちらです」
「くそっ……確かに止められなかった私たちにも責任はあるが、いくら何でも総統には何の罪もないだろう!バイエルンめ、野蛮人共がっ!」
「落ち着いてください、どうにかして総統を助ける方法を考えましょう」
「……そうだな」
カールら幹部は、彼らの崇拝するミリアを助けるべく動き始めた。
なんだろう……温かい空気を感じる。むしろ暑いほどだ。
うーん、掛け布団をどけてしまおう。
彼女はまだ完全に起き切っていない頭でぼんやりと考える。
起き上がろうか……いてて、体が痛い。それに重い。
上体を起こし、目を少しだけ開ける。
あれ……?何かいつもと違う部屋だ。
そう思った瞬間横から声を発せられた。
「総統が意識を取り戻したぞ!」
結局ミリアは襲撃されてから丸々3週間眠り続けていた。
体は今にも折れそうなほど細くなり、筋肉は完全に衰え、一人で歩くのもままならない体であった。それに加えて左肩の傷跡が寒さで痛みを発している。
ミリアは事の顛末を聞き、自死した幹部に激怒していた。勿論バイエルン民族に危害を加えたからではなく、無断に動いたことに加えてドイチュラント人にまで手を出したからである。
彼女はこの事件を必ず忘れないよう、部下に厳しく命じた。
幸いなことに、結局ミリアら幹部が引き渡しされることは無かった。これはSPR幹部がブランデンブルク州知事に抗議を行うよう依頼し、実際に中央政府に対して抗議を行ったからである。今ではコレンに首都が移ったとはいえ、未だ旧帝都を擁するブランデンブルク州の力は絶大であった。
無事、ミリアらはSPRの活動を続けれる事にはなったのだが、バイエルン王国がドイチュラント政府の引き渡し拒否に激怒した。
これによって両国は一気に緊張状態になり、動員がかかる寸前にまで達した。
両国の戦力差は圧倒的である。ドイチュラント政府は必死の思いでポーレン共和国政府に戦争を回避すべく仲介を依頼した。ポーレン共和国政府は賠償金の支払いを失うのは痛いと考え、了承した。
バイエルン王国は会談に応じたものの、とんでもない要求を行った。それはバイエルン王国と国境を接するダニューブ川沿いに広がる工業地帯及び国内の殆どの魔石を算出するラインランド地方の割譲である。
巨額の賠償金を負ったドイチュラント政府には、多くの金を生むラインランドの割譲は非常に厳しい要求であった。しかし断ることが出来る訳が無く、これを受け入れてしまう。
共通暦922年2月5日、ラインランドにバイエルン王国軍が占領、王国領を宣言した。こうして主要な工業地帯、そして魔石の採掘源を失ったドイチュラントは、更なる不景気へと突入した。
街には多くの失業者があふれ、酷い惨状になっていた。彼らのヘイトはドイチュラント政府、それにバイエルン王国に向けられた。
これは反政府かつ反バイエルン民族であるSPRにとってまたとないチャンスであった。
926年頃にはブランデンブルク州だけでなく国内中に、総統ミリア及びSPRの名は広がっていた。解散されたSAは名を変え、二度と総統を傷つけない事を表す為にSPR親衛隊(SPR Schutzstaffel)、略してSPRSSとして再スタートを切る。このSPRSSの力もあり、各地にSPRの支部が作られた。党員は一気に10倍以上に増え、ミリアが入党した時からは信じられないほどの規模になった。
共通暦928年、万全の構えでSPRは初の国政選挙に挑み、490議席のうち見事107議席を獲得、一気に第二党へと昇り出た。また930年4月には大統領選挙が行われミリアも出馬し、当選はしなかったものの全体の票のおよそ30%を集めるなど、確実にSPRが国民に支持され始めている事を示した。
そしてついに同年7月の選挙でSPRは全584議席中230議席を獲得、過半数には至らなかったものの遂に第一党の座を占めたのであった。
なかなかセウトな内容ですね・・・
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