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9.見習い将校ミリア、初めて戦術を立てる

今回の戦いでダンツィヒ残党はミュンヘン同盟に対空砲があることとい情報を入手したので、消耗する恐れがある魔導船を使わない事を決定した。そのため参戦戦力は歩兵800のみである。これに対し、ミュンヘン同盟の戦力は騎兵300、歩兵3200である。

これだけで見ると圧倒的にミュンヘン同盟側が優勢なのだが、ミュンヘン同盟の歩兵装備の大部分が前装填式マスケット銃であるのに対し、ダンツィヒ残党側は最新型の魔導小銃である。マスケット銃に比べ圧倒的に射撃精度が良く、また有効射程距離が長い。その反面かなりの技術力が無いと作成できず、高価な魔石を戦闘時に用いるため運用コストが非常に高い。技術力が高く、魔石を大量に採掘できるダンツィヒ残党だからこそ採用できた銃である。



ダンツィヒ残党はまず歩兵を200名ずつ4つの隊に分け、敵の予想進軍路である森を貫く街道の両脇に展開するよう、移動を開始させた。これに対しミュンヘン同盟軍は魔導船に警戒しつつ、夜間に同盟の中心都市国家であるミュンヘンから全軍を出発させた。

夜が明ける頃、ミュンヘン同盟軍は森の入口へと到着した。敵の魔導船を警戒しつつの行軍だったため、兵士にはやや疲労の色が見られる。森の中であれば見つかりにくいと考えた指揮官は、森の中心部にある村で休息させるために軍を前進させた。

丁度そのころ、ダンツィヒ残党軍も街道を挟むように布陣を完了していた。


段々と二軍の距離が近づいていく。森に入って半日後、ミュンヘン同盟軍は細長く伸びつつ進軍を続けていた。いつ二軍が出会ってもおかしくないため、同盟軍の指揮官は騎兵を偵察に出させた。しかし街道の脇に潜むダンツィヒ残党軍を補足することは出来なかった。前方に敵がいないとの情報を得た同盟軍はやや警戒を緩め、進軍スピードを上げた。そして前方の兵士がようやく村へと到着するころ、敵軍からの急襲を受けたのだった。


「一体何だ!どこから攻撃されたっ!」

軍の前方で指揮を執っていたミュンヘン同盟軍の指揮官が叫ぶ。

「前方及び両側からですっ!」

「不味い、このままでは殲滅されてしまう。後方の軍を下がらせて全軍を後退させよ」

「それが……混乱のせいで後方の兵士との連絡が途絶えています」

「くそっ、騎兵に前方を突破させ、それに続いて兵を森から抜けさせるぞ」

「了解しまし……ぐふっ」

「おい大丈夫かっ、衛生兵はいるかっ?こいつを治療してくれ」

そう言い終えたとき、指揮官は白い光線に貫かれた。


「あっという間に敵が死んでいくな、本当に簡単な仕事だ」

ダンツィヒ残党軍のとある兵士は銃を撃ちつつ呟いた。

「そうだな。しっかしなぁ……これは戦という次元ですらないな。ただの殺戮だ」

「噂によるとあのお嬢ちゃんがこの戦術を考えたらしいぜ。どうやら毎日本を読んで戦術について勉強しているとか」

「あの子も大変だねぇ……あの年で総指揮官とは、立派な物だよ」

殺戮をしつつ、兵士は会話を楽しんだ。


結果はダンツィヒ残党側が数名負傷したのに対し、ミュンヘン同盟側の9割近くが死亡或いは捕虜となった。地上戦力のほとんどを掃討したダンツィヒ残党軍は進軍し、次々とミュンヘン同盟に属する都市を占領していった。

そして戦いが始まって僅か3日後、ミュンヘン同盟は降伏、各都市はダンツィヒ残党に併合された。



「まさかここまで上手く事が運ぶとは……予想外だ」

「閣下の見事な戦術によるものです。我が軍の勝利は閣下によるものです」

「いや、私はただ本を参考に戦術を考えただけだ。一番の功績者は前線で戦った兵士だ。臨時に報酬を与えよ」

「了解いたしました。しかしたった数か月学んだだけなのにここまで見事な戦術を考えられるとは……閣下は天才ですね」

「エーミール、君でも出来るような単純な事だ。敵の見えない場所からクロスファイヤを行う。今回はたまたま敵軍の予想される進軍路の途中に隠れることの出来る深い森があったから出来たことだ」

「それでもやはり閣下はすごいですよ」

部下にここまで褒められるとミリアはやはり良い気分になる。

彼女は満面の笑顔でこう叫んだ。

「戦勝パーティーを行おう!」



パーティーは日が暮れた頃、司令部にて行われた。

パーティーは立食方式で行われ、軍人だけでなく地下施設の住人も含めて多くの人が参加した。


「こうして見ると壮観だな、最初はたった数百人でここに逃げてきたのにたった半年でここまで増えるとは」

司令部の2階からミリアは民衆を見下ろしていた。

「それも閣下による素晴らしい指揮による賜物です」

その脇に、一人の男が立つ。

「そんなことは無い。私は内政については基本的な指示をするだけで詳しくは占領した都市から引き抜いた役人に任せているし、軍事に対しても戦には参加せず後方で指示をしているだけだ」

「その簡単な指示、これが上手くいかないと何もかもが駄目になってしまいます。閣下がおられるからこそ、ここまで順調に事を進めることが出来たのです」

「……エーミールは本当に私に甘いな」

そう言いつつも、ミリアは少しだけ照れながら笑っていた。


今回の戦術は一応モッティ戦術を元にしています(オリジナルより大分ガバガバですが...)

感想、評価お待ちしています。

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