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53ページ目「落ちていた魔導書。」

桧山英輔ひやまえいすけは少しだけ退屈していた。

進級してからというもの、特に何の変哲もなく変わりのない日々を過ごしていた。

「なあ桧山」

「ん?」

「そろそろ帰ろうぜ」

「そうだな…」

英輔はダラダラと立ち上がると、机の上の鞄を肩にかけた。

「桧山君、高島君ー!」

「早くしろ森田ー」

雄平に急かされ、淳は急いで2人の元に駆け寄った。

「ねえ、今日もあの来るの?」

淳が問うと、英輔は少し困った顔になった。

「多分……来る…な」

「良いよなお前は。これで結婚相手困んねーもんなー」

「あのな高島。お前は簡単に言うけどあの娘は……」

そうこうしている間に3人は校門の前まで到着した。

「……うわぁ」

英輔の予感は的中し、校門の近くに黒い車が止まっていた。

ガチャリとドアが開き、長身で細身の男と、背の低い少女が現れた。

「英輔様ー!」

少女は英輔の元へ駆け寄ると、英輔に跳びついた。

「おわァッ!!」

ゴッ!

そのまま少女に押し倒され、英輔は地面で頭を強く打った。

「姫様……無茶はなさらない方が……」

男の忠告も虚しく、英輔は既に気を失っていた。

「姫様、彼のためを思うのならもう少し普通に接するべきかと……」

「お黙りなさいアルビー。正論だけどお黙りなさい」

「申し訳ございません」

アルビーと呼ばれた男は申し訳なさそうに頭を下げた。

「こんにちは。アルビーさん、アクネスさん」

淳と雄平が礼をすると、アルビーは彼らにも頭を下げた。

「こんにちは。高島様、森田様」

「とりあえず桧山は俺達が保健室まで連れて行きますんで…」

「ありがとうございます」

淳と雄平は2人で英輔を担ぐと、保健室まで連れて行った。



「ん……」

「大丈夫か?まあ大した事はないだろう」

英輔が目を覚ますとそこは保健室だった。

横には1人の男が立っていた。

「ヴァーム……」

「ヴァーム先生、だろ?桧山君」

「そうだったな、ヴァーム先生」

英輔はわざと「先生」を強調した。

「目を覚ましたか?」

ガチャリとドアが開くと、男がもう1人中に入ってきた。

「雅……。そういえば、2人は?」

「あの2人は帰らせた。お前と個人的に話がしたかったのでな」

英輔はベッドから出ると、ヴァームに頭を下げた。

「失礼します。ヴァーム先生」

そう言って嫌味っぽく笑うと、英輔は雅と共に保健室を後にした。



「まだ引きずっているのか?」

「何をだよ?」

英輔と雅は2人で帰路についていた。

「あの人のことだ」

「……」

英輔は一瞬考え込むような仕草をすると、屈託なく笑った。

「引きずってなんかねえよ。なんだお前心配してくれたのか?」

「少しだけな」

「珍しく素直じゃねえか」

英輔がニヤリと笑うと、雅は英輔に背を向けた。

「どこ行くんだよ?」

「お前の安否は確認出来た。それに、俺の家は逆方向だ」

「そうだったな」

そう言って英輔は雅の背中に向かって手を振った。

「……」

「あの人…ね」

英輔は感慨深そうに呟く。

兄の身体を媒体に、復活してしまった最強の悪魔ルシファー。

そいつを確実に倒すため、彼女はそいつと共に元の世界へと戻った。

結局彼女の最後の言葉は聞けずじまいだった……。

あれからもう数ヶ月も経つというのに、今でも家に帰れば顔を見れそうな気がする。

毎日毎日そんなことを考えながら帰っている。

我ながら女々しい。

「…ん?」

分厚い本。

いつもの帰り道だが、1つだけいつもと違っていた。

妙な本が落ちているのだ。

英輔はその本をそっと手に取った。

緑色の表紙、英輔はその表紙に見覚えがあった。

「ナメック語なんかじゃない」

英輔は微笑むと、その本を抱えて家まで走った。



「ただいま」

「お帰り英輔」

母の声がする。

「少し遅かったわね」

「ああ、ちょっと友達とふざけてて……麗華は?」

「まだ帰ってないわよ。あの子は英輔と違って部活動に夢中だから」

「だよな」

そう言うと英輔は母に向かって屈託なく微笑むと、2階にある自室へと駆け込んだ。

妙な期待と高揚感。

英輔は椅子に座るとすぐに先程の本を広げた。

「相変わらず読めねえな」

英輔はクスリと笑いながら本をめくった。

ボォ……

不意に本が光り始める。

英輔は本を机の上から床の上へと移動させた。

それとほぼ同時に床に魔方陣のようなものが現れ、激しく発光し始める。

カッ!!

閃光弾のようなまぶしい光で、辺りが一瞬真っ白になる。

「………」

徐々に視界が戻ると同時に、1人の少女の姿が目に映る。

「よく私を召喚してくれた」

金色の髪。

赤い眼。

そしてすこし小さな背。

彼女の言葉は初めて逢った時より誇らしげで、嬉しげであった。

「お帰り」

英輔は彼女にそっと声をかける。

間違いない。

彼女は…

「私はリンカ!お前に災厄をもたらしに来たっ!」

今思えば、あの時から英輔の運命は決まっていたのかも知れない。


Fin

長く続いた「落ちていた魔導書。」もついにこれで最終回です。

どうだったでしょうか?

私としては若干消化不良なところもあるんですが一応これで最終回です。

それにしても相変わらず文章は拙いですね^^;

1作目からあまり進歩した感じが自分的にはしませんorz

それでもよろしければ評価してやって下さい。



これまで支えて下さった読者の皆さん、そして作中で常に頑張ってくれていた英輔達に心から感謝しております。

これからもシクルをどうぞよろしくお願いいたします。


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