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52ページ目「最強の悪魔。」

悪魔がいた。

実に凶悪で、実に強大な…

最強、最凶、最狂。

3つとも兼ね備えた悪魔がいた。

いや、それは既に悪魔を超えていた。

他の悪魔や魔物達は強大なソレをルシファーと呼び、畏れた。

ルシファーは破壊の限りを尽くした。

悪魔達は考えた。

ルシファーを倒すことは出来ずとも、封じることは出来ないかと。

そして悪魔達はルシファーを封じることに成功した。

1人の赤子を犠牲にして……






英輔はゴクリと唾を飲み込んだ。

圧倒的な威圧感。

圧倒的な魔力。

無意識の内に英輔は後ずさっていた。

「お前は一体……」

「我はルシファー。貴様ら低俗な悪魔共に封じられた最強の悪魔だッッ!!」

何という自負心。

この男、ルシファーは己が最強だということに少しの疑いもなく叫んだ。

だが自称最強なだけはある。

事実ルシファーの放つ魔力は半端なものではない。

「で、どうする?我に従うか、我によって滅せられるか…」

傲慢な態度でルシファーはニヤリと笑う。

「今我はすこぶる機嫌が良い。貴様らの態度次第では妥協してやらぬこともない」

「兄上は……兄上はどうしたッ!?」

「兄上…?この身体の小僧のことか?」

「………そうだ」

「知らぬ」

「な……ッ!?」

「我の意識に上書きされ消滅したかも知れぬし、まだこの身体の底辺で残っているかも知れぬ」

その言葉にリンカはギュッと拳を握りしめた。

「ふざけるなァーーッ!!」

「リンカッ!!」

英輔の制止を無視し、リンカはルシファーに向かって思い切り走り出した。

「なんと愚かな」

ルシファーは悠々とした表情で右手をリンカに向けた。

「ヌンッ!!!」

ブアッ!

何か見えない力でリンカは遥か後方まで飛ばされる。

「リンカーッ!!」

ドサリと倒れるリンカに、英輔は急いで駆け寄った。

「我は今すこぶる機嫌が良い……が、あまり調子に乗るでない。我もそこまで寛容ではないぞ」

「ぐ……ッ」

リンカがよろよろと立ち上がる。

かなり弱っているようだ。

無理もない。

今はクレスとの戦いの直後なのだ。

こんな相手とまともに戦えるハズがない。

万全の状態でも無理だ。

そして英輔も、リベリアとの戦いでかなり消耗している。

状況はかなりまずい。

「そこの小僧。我と戦うことがいかに無謀なことかは理解しているであろう?大人しくその小娘と共に退くが良い。身の安全だけは保障してやらぬことはないぞ」

正論だ。

正論かもしれない。

自分もリンカも死なずに済む方法、このルシファーにひれ伏すこと………

「何を弱気な目をしている英輔」

「リンカ……」

「まさかコイツに従うことなんか考えてるんじゃないだろうな……?」

図星である。

「でもリンカ…」

「大丈夫だ。私に考えがある」

「考え……」

リンカは英輔の耳元まで顔を近づけるとヒソヒソと何か喋り始めた。

それを聞いている英輔の表情が徐々に驚愕に歪む。

「いつまで我を待たせる気だ?」

痺れを切らしたのかルシファーがイライラと表情で英輔達を睨んでいた。

「リンカ…それ、本気で言ってるのか?」

「ああ。少し早まるだけだ。問題はない」

「おい、他に方法はないのか…?」

「ないな。コレが最良だ」

納得のいかない英輔の頬に、リンカがそっと触れる。

「そんな顔をするな英輔…」

リンカは優しく微笑むと、英輔の唇にそっと自分の唇を重ねた。

「…ッ!?」

「英輔、お前との時間……短かったが幸福だった」

「リンカ…!」

リンカは英輔の唇から唇を離すともう一度微笑んだ。

「ありがとう。英輔」

それだけ言い残し、リンカはルシファーに向かって駆け出した。

「リンカァァァッッッッ!!」

リンカの右手には一本の短剣が握られていた。

相手の魔力を一時的に封じる短剣…

兄からの、クレスからの過去の贈り物だそうだ。

何かの役に立つかも知れないと取っておいたらしい。

「リンカッ!!リンカァァ!!」

英輔は力いっぱいリンカの名前を叫んだ。

「それが貴様らの答えかッッ!!愚か者がッッッ!」

ルシファーの右手に膨大な量の魔力が込められているのを感じる。

短期決着を狙っているようだ。

リンカが目の前まで近づくと、ルシファーは右手をリンカに向かって突き出す。

リンカは即座にしゃがんでそれを避けると、右手に握られたナイフを思い切りルシファーの腹部へ突き刺した。

「ぬ……ッ!?」

ずぶりと。

ルシファーの身体にナイフが突き刺さる。

「私と来てもらうぞッ!!ルシファーッッ!!!」

不意にリンカとルシファーの身体が光り始める。

「小娘…!何をしたッ!?」

光り始めた2人の足元に魔方陣が現れる。

「まさか……ッ!!」

「英輔……」

リンカはナイフを突き刺したまま、英輔の方を振り向く。

「おいッ!!ふざけんなッ!!話があるんじゃなかったのかよォッッ!?」

「英輔……私は…」

リンカとルシファーの身体が徐々に足元から消えていく。

「リンカァーーーーッッ!!」

気が付けば英輔は泣きながら叫んでいた。

リンカが……消える?

想像もしたくなかった出来事が、英輔の目の前で現実として起こっている。

嘘だ。

嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ…

「私は、お前のことが――――」




リンカは言葉を言いきらないままルシファーとともに姿を消した。



To Be Continued

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