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46ページ目「現われた兄。」

長い間探し続けていた。

ずっと、ずっと。

片時も忘れることなく。

ただ貪欲に求め続けた。

あの顔を。

あの背中を。

あの声を。

もう一度だけでも。

星屑壊滅なんてそのための目的の1つでしかなかった。

そして、星屑の壊滅まであと一歩。

この部屋にいるであろう首領を潰せばもうすぐ会える…

ハズだった。

だが、今目にした光景は彼女の…リンカの予想を大幅に裏切った。

「嘘だ……何かの間違いだ……」

「リンカ……!?」

初めてだ。

リンカのこんな状態を見るのは……

リンカは英輔の隣でブルブルと震えている。

「久し振りだね」

この部屋にいた男はニコリと微笑んだ。

間違いない。

この男がリンカを動揺させている。

「何で貴方が今ココに……」

「兄上…………」

「な………ッ!?」

英輔も驚愕の色を隠せない。

この男が…?

リンカの兄?

震えるリンカをよそに、男はクスリと笑った。

「そんなに驚くことないだろう?リンカ、久々に会えて嬉しいよ」

「どうしてココに……!?」

「簡単なことさ。この部屋は星屑の首領の部屋。つまりココは僕の部屋だ」

やはりこの男が星屑の首領であることは間違いないようだ。

だが、英輔には信じられなかった。

リンカの兄が、星屑の首領……。

この驚きようを見るに、リンカ自身も知らなかったようだ。

「君は……。こっちに来てからリンカの面倒を見てくれてたんじゃないかな?」

不意に、男は英輔の方を見る。

「僕はクレス。君の隣にいるリンカの実の兄だよ」

クレスと名乗った男はまたしてもクスリと笑った。

だが、どこか嘘くさい。

心からの笑顔ではない、上っ面だけの笑顔だ。

英輔は直感的にそう感じ取った。

「兄上……!何故貴方が星屑の首領なんかに……!?」

「星屑は僕の組織だ。今も昔も僕が首領だ。おかしい所など何もない」

「矛盾している…!!兄上、私の記憶と矛盾しています!」

今もリンカの中で明確に思い出せる記憶。

兄が、クレスが旅立った日。

人間界で不穏な動きを見せる星屑を壊滅させるため、クレスが旅立った日のことだ。

「兄上は……兄上は星屑を壊滅させるために………!」

「ああ、アレか」

そう言うとクレスはまたクスリと笑った。

「嘘だから」

「う……………そ…………?」

「本当は星屑を人間界で活動させている首領が僕であると気づいた父上が僕から魔力を奪い、人間界へ追放したからだよ」

そしてクレスは耐えかねたといった様子で「ハハハハ」と笑い始めた。

「まあ、組織のみんなが尽力してくれたおかげで僕の魔力も随分と戻ったよ!!」

「テメエ……!」

「まあ組織のみんなも僕の目的に同意した奴らばかりでもなかったけどね。一部は他に目的があって、組織に属した方が得策と考えただけだったんだろうけど……。お互いに利用し合ってお互いに利益を得た、まあそれだけのことさ」

「テメエ……ずっとリンカを騙してたのかよ……ッッ!?」

「何か問題でも?」

まるで当たり前だとでも言うように。

一切悪びれた様子もなく、クレスは聞き返した。

「目的のためなら関係ない。誰だって騙すさ。例えそれが肉親でもね」

「本気で言ってるのか……!?」

「愚問だな」

クレスは英輔をあざけるように笑った。

「そん……な………」

その場にドサリとリンカが崩れ落ちる。

無理もない、希望を失ったのだ。

「何のために……今まで何のために私は……」

「世界平和のため……かな?ハハハハハハハハッ!!」

リンカの頬を涙が伝う。

信じていた。

いつか会えると、あの優しい兄に会えると、信じていたというのに。

現実はこれだ。

これまでにリンカが見た優しい兄は偽りで、今ココにいる卑劣な兄が現実なのだ。

「リンカッ!」

「近寄るなッッ!」

駆け寄る英輔を、右手で制止する。

「リンカ……」

「慰めなら必要ないッ!もう誰も私に近寄るなッ!!」

「リンカ!」

「来るな!!来るなッ!!」

リンカはブンブンと腕を振り、英輔を遠ざけようとする。

「リンカッ!」

リンカの背中に、優しく手が回される。

身体が触れ合う感触。

温かく、優しく、英輔の体温がリンカに伝わった。

「俺がいるから……!」

「うる……さい…」

英輔は更に強くリンカを抱きしめた。

「私は……私はどうすれば……っ!」

「大丈夫…。大丈夫だから……!」

かつて妹にそうしたように…

英輔はリンカを抱きしめた。

「おや、妹にこんな素敵な恋人が出来ていたとは…!」

「茶化すんじゃねえよ糞野郎が」

英輔はリンカからそっと手を離し、クレスを睨みつけた。

バチバチバチバチッ!!

英輔の右手に、膨大な量の電流が集まっている。

それらは徐々に形を成し、1つの武器として英輔の右手に握られる。

剣。

かつて英輔がアルビーと戦った時に見せたあの剣。

「覚悟しろよ……ッ!」

「中々の密度だ」

ダッ!

英輔はクレス目がけて勢いよく走り出す。

その時だった。

「……が……ッッ!!?」

ズブリと、鋭利な何かが英輔の腹部を貫く。

「よぉ大将。これで良いか?」

「上出来だよ。ありがとうリベリア」

リベリアと呼ばれた男はニヤリと笑う。

「英……輔?」

「リ……ンカ…………」

リベリアが英輔の腹部から腕を引き抜くと、英輔はその場にドサリと倒れた。

「英輔……」

「英輔ェェェェェェェェェッッ!!!」



To Be Continued

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