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40ページ目「現われた骸骨。」

「さて、これからどうするのだね雅。恐らくお前程度の力だと私を倒すのは困難だと思……」

ゴッ!

「ッ!?」

栄治が言い終わらない内に雅の右拳が顔面に直撃する。

ガッ!

そして続け様に左拳が直撃。

栄治はそのまま後ろに倒れた。

「早……」

ボゴッ!

間一髪で避けはしたが、栄治の顔の横の地面は軽くえぐれていた。

栄治は横へ転がると、すぐに立ち上がり、体勢を立て直した。

「まったく最後まで喋らせ…」

ドゴォッ!

まただ。

またしても素早い拳が栄治の顔面に直撃した。

「おおッッ!!」

ドゴッ!

栄治の腹部に雅の左拳が食い込む。

凄まじいスピードである。

「が……ッ」

「まだだ。姉さんの受けた痛みはこんなものじゃない」

雅はよろめく栄治の頭を両手で掴んで固定すると、右膝で思い切り顔面を蹴り上げた。

「がァッ!」

栄治の顔面は血だらけになっていた。

無理もない、立て続けにあんな攻撃を顔面に受け続けたのだ。

ガッ!

雅はそのまま右足で栄治を蹴り飛ばした。

栄治は後ろへ吹っ飛び、その場に倒れた。

「風の……魔術か」

栄治はよろよろと立ち上がる。

「身体の可動部分に局地的な突風を起こし、加速する。知覚出来ぬ程早い訳だ……」

「わかったところでどうにもならない。お前の負けだ」

「私もお前も格闘家ではなく魔術師だ。体術勝負というのもおかしかろう」

「ッ!?」

不意に栄治が強力な魔力を感じた。

本気になった証拠だろう。

雅は身構えた。

ボゴォ…!

「ッ!?」

栄治の足元に幾つか穴が空く。

その穴から這い出て来たのは真っ白な骸骨であった。

一匹、二匹、三匹…………八匹。

計八匹の刀で武装した骸骨が栄治の前に立っていた。

「紹介しよう。過去に死んだ豪傑無双の武者達の骨だ」

「武者達の……骨…?」

「魂こそないが、身体能力はほぼ同じだ」

もし栄治の言うことが本当だとすればかなり危険だ。

流石の雅と言えど、それだけの力を持つ骸骨が一匹二匹ならまだしも八匹ともなれば勝てない。

「やれ」

栄治の指示と同時に八匹の骸骨は雅に向かって走りだした。

「ッ!」

最初に雅の元へ辿り着いた骸骨が刀を振り上げる。

その隙に雅は骸骨の背骨をガッシリと掴む。

「ハッ!」

ボキッ!

背骨は音を立てて折れ、骸骨はその場に倒れた。

雅は振り向きざまに背後から近付いていた骸骨の頭部に裏拳を喰らわせる。

そして倒れた骸骨の骨を数本踏み潰した。

ガッ!

「ッッ!?」

二匹仕留めて油断していた雅の身体を、背後から骸骨が掴んだ。

そして正面から来た骸骨が雅の身体に刀を振り下ろす。

「が……ッ!」

雅の身体から血が飛び散る。

ビュオッ!

突風が吹き、雅を掴んでいた骸骨が吹き飛ぶ。

身体が自由になった雅は先ほど雅を斬った骸骨の顔面を思い切り殴った。

骸骨がそのままその場に倒れる。

「後四匹……!」

雅は傷口を押さえる。

かなりの出血量だ。

どうやら傷口は深いらしい。

残りの四匹はジリジリと雅に近寄る。

どうやら同時に襲いかかることにしたらしい。

「まずいな…」

そう呟く雅を見ながら栄治はニヤニヤと笑っている。

「もうすぐだ。お前を殺し、魔力を奪えばゲーデの魂は完全に定着する…。やっと、やっと私の願いが…ッ!」

気が付けば雅は既に四方を囲まれていた。

一方向だけに突風を起こすことは容易だが四方ともなると困難だ。

かなりの魔力を要する。

だがここで魔力を使い果たしてしまうと後の戦いがキツい。

魔力障壁も考えたが4つの斬撃ともなるとやはり消耗が激しい。

せめて自分に英輔程の魔力があれば……

「仕方ない」

死んでしまっては元も子もない。

ビュッ!!

辺りに強烈な突風が吹き荒れる。

雅を囲んでいた骸骨達が一斉に吹き飛ぶ。

「む!?」

ダッ!

雅は栄治に向かって駆け出した。

「ハァッ!!」

栄治の元へ辿り着くと、素早く栄治の顔面に右拳を突き出した。

バチバチバチッ!

「ッッ!?」

魔力障壁。

自分の周りに魔力の結界を張り、敵の攻撃を防ぐ基本魔術。

「青二才が……ッ」

ガッ!

栄治の右手が雅の頭部を掴む。

「少し痛いが、死ぬんじゃないぞ?」

バチバチバチバチバチィッ!!!

雅の頭の中で何かが弾ける音がする。

大量に魔力を頭部に流し込まれたのだろう。

「ガァァァァァァァッッ!!」

あまりの激痛に雅は絶叫した。

「ちとやり過ぎたかな」

栄治が手を放すと、雅は力なくその場に倒れた。



To Be Continued

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