4ページ目「食堂の西瓜。」
職員室から帰ってきた英輔は教室に戻る途中でリンカと会った。
「おい、ここにいちゃまずいだろ」
「そうなのか?」
「・・・。ちょっと来い」
英輔はリンカの手を引き、体育館の裏に連れていった。
「お、お前・・・。私をこんなところへ連れ出して・・・・何をする気だ・・・?」
頬を赤らめながら言うリンカ。
「何言ってんだ。さっきの話」
「何かいる・・・って話か?」
「ああ」
「そのままだ。この学校内に不正な方法でこの世界に来た者がいる。それだけだ」
「それって相当まずくないか?」
「それなりにまずいな」
「どこにいるかわからないのか?」
「ハッキリと位置は指定できない。ただこの学校内にいるってことは確か」
「それに、人間に擬態してる可能性が高いから・・・・」
英輔は考える。
この学校内にいるということは何度か学校内で被害が出ているハズなのだが・・・。
これといって噂は聞かない。
いるということ自体が疑わしい。
「近くに行けばわかるか?」
「うん。擬態してても近くで私の目を欺けるような奴はそういないハズ」
「とりあえず授業終わるまで待てるか?」
「うん、それと・・・」
「何だ?」
「何か変わったことはないのか?」
「・・・・。友人の目が虚ろだ」
英輔が半笑いで言うと同時にチャイムが鳴り響く。
「ヤバ、授業行くからそこで待ってろ」
「え、ちょ・・・」
リンカが言い終わらないうちに、英輔は走り去って行った。
「まったく、私を置き去りにするとは・・・」
「こうなったら私1人でも・・・」
「はぁ・・・」
その頃英輔は何とか授業には間に合ったが疲れ果てていた。
リンカの奴、ちゃんと待ってるかな・・・
そんなことを考えている時だった。
ガタン!
突然勢いよく雄平が立ち上がる。
「ん?どうした高島」
「・・・」
「高島?」
虚ろな目をしたまま、雄平は答えようとしない。
ダッ!
「!?」
雄平はドアを開け、どこかへ走り去って行った。
「お、おい高島ッ!」
「先生、俺探して来ます!」
「あ、ああ。頼んだぞ桧山」
英輔は雄平を追いかけるため、廊下に飛び出した。
「高島・・・。まさかリンカの言ってた奴と関係あるのか・・・?」
「この辺の気配が濃いな・・・」
その頃リンカは食堂に来ていた。
自分で魔力の濃い部分を探し、学校内にいる「あちら側の世界」の住人を探し出そうとしたのだった。
「特に変わった様子はないが・・・」
「あらお嬢ちゃん」
「ッ!?」
気が付けば背後に1人の女がいた。
まるでスイカのような巨乳の女。
「お前、何者だ?」
「何者って・・・。それよりお嬢ちゃんはココの生徒さんかな?」
「違う。お前こそこの世界の住人か?」
「何のことかしら?」
「とぼけるなスイカ女。お前から漏れてる魔力は凡人にはわからんかも知れんが私にはお見通しだ」
それを聞いた途端、女の顔付きが変わる。
「そう、いつから気づいてたの?」
「さっきからだ」
バタン!
不意に勢いよくドアが開く。
「・・・。誰だお前は」
「私の下僕よ」
雄平だった。
雄平は何かに取りつかれたかのように血走った目でリンカを睨んでいる。
「高島ッ!」
続いてドアが勢いよく開く。
「英輔!」
「リンカ!高島の奴、一体どうし・・・」
「あら、鼻血君じゃない」
「げッ!アンタは・・・」
英輔の目の前にいた女は昨日の食堂の女性だった。
「知っているのか英輔」
「いや、知ってるってほどじゃないけど・・・。見たことあると言うか・・・」
「私の胸見て鼻血出しちゃったのよねー?」
「う、うるさい!油断しただけだ!」
「な、ななななな何を油断したと言うのだ英輔ッ!」
「何でリンカが怒るんだよ!?」
「おま、こんな女の胸を見て興奮したのか!?」
「仕方ないだろ!こんなデカいの始めて見たんだ!」
「わ、悪かったな!私が貧乳で!」
「誰もそんなこと言ってないだろ!?それに、お前に会う前の話だ!」
言い合う英輔とリンカを見て「ふぅ」と呆れたように女は溜息をついた。
「バレたからには貧乳娘と鼻血君の夫婦漫才に付き合ってる暇はないのよ・・・」
「「誰が夫婦だッ!」」
ついつい同時に叫ぶ2人。
「まあ良いわ、やっておしまい」
女の一言で、雄平は英輔に飛びかかった。
「うわッ!」
間一髪で避ける英輔。
「リンカ、高島の奴どうなってるんだ!?」
「魅了だな」
「魅了?」
「ああ、相手を誘惑して簡単な催眠術をかける魔術だ。アイツは、操られている」
雄平は立ち上がるともう一度英輔に飛びかかろうとする。
「や、やめろって高島!」
「下がれ英輔!」
ドン!
「痛ッ!」
リンカの肘が英輔の腹部に直撃する。
「ハッ!」
ドッ!
リンカは思い切り雄平の腹部を殴った。
「ぐ・・・ッ!」
雄平はそのままその場に倒れた。
「高島!」
「大丈夫だ、死んでない。気絶してるだけだ」
「あら呆気ない」
女は呆れたように倒れた雄平を見る。
「次はお前だスイカ女」
「さっきから変なあだ名で呼んでるけど、ちゃんと名前で呼んで下さらない?」
「私は西瓜。植物系の妖怪よ」
「妖怪!?」
「悪魔と同居してる奴が今更何を驚いている」
驚く英輔に呆れたように言うリンカ。
「良いだろう西瓜。お前に、不吉を届けに来たぞ!」
「その台詞アウトッ!」
To Be Continued