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31ページ目「替えられた姿。」

身体が分解され、再構築されるような感覚…。

二度もこんな経験をするとは思っていなかった。



「英輔」

最初に聞こえたのはリンカの声だった。

「んん…」

英輔がゆっくりと身体を起こすと、他のメンバーがこちらを見ている。

「散々待たせた挙句にゆっくり気絶とは、大層な御身分だな」

次に聞こえたのは雅の嫌味だった。

「うっせえ…」

英輔は立ち上がると服についた泥を払った。

「大丈夫ですか?英輔様、あの女に何かされませんでした?」

アクネスが心配してくれるのは良いんだが、何かされるも何も相手は英輔の母親である。

「ふむ。多少時間はかかったものの、これで準備は整ったな…」

ヴァームの言葉に、1人1人が頷く。

準備が整った…

そう言えばココはもうアジトなのだろうか?

英輔は辺りを見回す。

妙な空間だった。

目の前に巨大な建物はあるものの、後は地面と、月も太陽もない紫色の空。

とてもこの世とは思えない。

まるで夢の中のようだった。

「中に入るぞ」

リンカを先頭に、扉を開こうとした時だった。

「お待ちしておりました。侵入者の皆様方」

「ッ!?」

不覚だった。

魔力はおろか気配すら感じることが出来なかった。

いつの間にやら扉の横にはメイド姿の少女が立っていた。

警戒した英輔達は咄嗟に身構える。

「身構える必要はありません。私に戦闘能力はないのですから」

「…自動人形か」

「自動人形?」

不思議そうに問う英輔に、ヴァームは淡々と説明する。

「精巧に造られた人形に一定量の魔力を注ぐことで自我を与えたものだ。基本的には主の命に従うように出来ている」

「自動人形…ね」

英輔は見た目は普通の人間と変わらない、自動人形の少女をまじまじと見つめる。

「貴方方の侵入は30分と24秒前に主様が気づいておられました」

いやに正確である。

「で、お前は戦闘能力のないお前が私達に何の用だ?」

「主様にココで出迎えるよう言いつけられましたので」

「なら用は済んだな」

「はい、それと、1つ忠告を」

「入るなという忠告なら聞かんぞ?」

「わかっております。この扉の先には貴方方の人数に合わせて6つの扉があります。それぞれ1つずつお開け下さい。貴方方をバラバラにさせていただきます。」

バラバラ…

それは6人に固まっている英輔達を個人個人にバラすということだろうか?

しかし彼女に聞いても情報は得られなさそうなので、英輔達は従うことにした。

リンカが扉を開けると、彼女の言う通り扉が6つ用意されていた。

それぞれ赤、青、黄、茶、緑、白。

何か意味があるのだろうか?

どう考えても罠である。

「罠…だよな?どう見ても」

英輔が呟くと、横でアルビーが頷く。

「そうですね……。私としては姫様の傍を離れたくはないのですが…」

「運命が…運命が英輔様と私を引き離そうと…」

アクネスは英輔にしがみついておいおい泣いている。

「さっきから気になってたんだがどうしたんだ?アクネスの奴……」

英輔がしがみつくアクネスを迷惑そうに見ながら言う。

「さあ…。いかに私と言えど姫様の思考には理解し難いものがありますからね……。恐らくこの間の戦いが原因だとは思いますが…。まあ、姫様は結構惚れっぽい上に冷めやすいのでしばらくすれば落ち着きますよ」

ニコリと笑いながら言うアルビーだが落ち着くまでにどのぐらいの月日を労するのかわかったものではない。

まあ今は大した問題ではないのだが…

「で、どうします?リンカさん」

「……。罠なのは見え見えなのだがな…。他に侵入手段がないとなると行くしかなさそうだ」

「やはり指示に従うのが賢明かもな」

確かにそうだ。

「なら、それぞれ好きな扉を選ぶがいい。私は黄の扉にさせてもらうよ」

そう言ってヴァームは黄色の扉の前に立つ。

それに続いて各自、各々が選んだ扉の前に立った。

雅 赤

英輔 青

ヴァーム 黄

リンカ 茶

アクネス 緑

アルビー 白

割と適当に選んだようだ。

「んじゃ、行くぜ…」

英輔が扉に手をかける。

「せぇーのッ!」

英輔は勢いよく扉を開けた。

「……ッ!?」

何だこれは?

身体中から感じる違和感。

気持ち悪い。

扉の中は紫と黒の空間だった。

ぶよぶよと空間そのものが蠢いているように見える。

気持ち悪い。

多少危険を感じた英輔が離れようとした時だった。

「足が……ッ!」

動かない。

いや、正確には後に動かない。

どうやら開けたら最後、進むしかないようだ。

というよりも、吸い込まれている。

反発してはいるが徐々に英輔の身体は引きずり込まれていく。

やはり罠だった。

だが今更どうしようもない。

英輔は諦めて身体から力を抜いた。

このまま引きずり込まれてしまおう。

そう考えたのだ。

引きずり込まれつつ、英輔の意識は薄れていった。



「……」

意識が戻る。

英輔は急いで辺りを見回した。

これといって大したものはない。

むしろ何もない部屋。

扉すらない。

隔離されたのか…?

英輔はとりあえず身体を起こした。

バサリと、長い髪が頬を覆う。

「髪…?」

英輔は恐る恐る髪に触れる。

長く伸びた美しい金髪。

無論、英輔の髪ではない。

そのハズなのだが、引っ張ると髪を引っ張られている感覚。

何かおかしい。

よく見れば手もおかしい。

あまり筋肉質ではなかったとはいえ、こんなにも華奢で細い指ではなかった。

「………?」

英輔の脳内が疑問符で埋め尽くされる。

理解不能。

「どうなってるんだ…?」

自分の声を聞き、驚いて口に手を当てる。

こんなにも高い声だったハズがない。

他に変化はないか、英輔は恐る恐る自分の身体を見下ろす。

多少膨らんだ胸、フリルのあしらわれた美しいドレス。

英輔の頭はパンク寸前だった。

状況が全く理解出来ない。

今自分が来ているこのドレス、どこかで見たことなかったか?

必死に記憶を辿り、1つの答えを見つける。

後は確認だけだ。

妙に都合よく、鏡がおかれている。

遠くてよく見えない。

全身を映せる大きさの鏡だ。

英輔は慣れない感覚に惑わされつつも立ち上がり、鏡にゆっくりと近づく。

そこで、英輔は自分の姿を確認した。

「…………」

驚きで声が出ない。

この姿は。

間違えようがない。

「アク…ネス…?」

高く、美しいアクネスの声で、英輔は呟いた。



To Be Continued

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