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落ちていた魔導書。  作者: シクル


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26/53

26ページ目「着けられた決着。」

ドォン!

巨大な地響きとともにゴーレムは英輔に向って一歩一歩歩いて来る。

このままゴーレムが来るのを待っているわけにも行かない。

かと言って闇雲に戦って勝てる相手ではない。

正直、勝機などないに等しい。

「何を弱気になっているんだ俺は……ッ!」

英輔は自分の頬を叩く。

そうだ。

弱気になっている場合ではない。

あのゴーレムを倒す方法を考えなければ…

いや、よく考えれば正面からぶつかってゴーレムを倒す必要などない。

ゴーレムを動かしているアルビーを倒せば済む話なのだ。

英輔はアルビーに向かって走り出した。

ゴーレムは無視。

相手にするだけ無駄だ。

ゴーレムは見るからに動きが鈍い。

本気で走れば捕まるまい。

「その策は最善に見えて最善でない」

英輔がゴーレムのすぐ近くまで来た時だった。

ドゴォッ!

「………ッッ!?」

巨大な柱に正面からぶつかったような衝撃。

いや、こちらも勢いがあった分それ以上の衝撃だっただろう。

ゴーレムの右足が英輔に直撃している。

英輔はそのまま後ろに吹っ飛ばされ、ドサリと倒れた。

避けられるハズだった。

そのハズだったのだが…

英輔はゴーレムの蹴りを喰らってしまっている。

「ゴーレムの機動力を甘く見ましたね?細かい動きも出来ないことはないんです」

あの巨体と攻撃力であの機動力だ。

「ごほっ……」

英輔は血を吐きながらもよろよろと立ち上がる。

「観念して下さい。これ以上は貴方が苦しいだけです」

「うる…せえ……ッ」

「こんな…ところで…負けてるワケにはいかねえんだ…!この戦いは…リンカを助けるためだけじゃねえ…。俺が強くなるためでもあるんだ…ッ!」

英輔はアルビーを真っ直ぐ睨みつける。

「俺の踏み台になってもらうぜ…!アンタにはなッッ!」

「どうみても動ける身体じゃないでしょうに…」

アルビーの言う通りだ。

先程の一撃であばらが何本かやられている。

半端ではない激痛。

それでも英輔は戦うつもりだった。

「行くぜ…!」



「アクネス…。さっきまでの威勢はどうした?急にこの私が怖くなったのか?」

リンカは不適に笑いながらアクネスに歩み寄る。

「な、何ですって…!?わ、私が…この私がリンカを怖がっている…!?」

アクネスはうつむき、怒りに打ち震える。

「そんな戯言、二度と言わせませんわッッ!」

ビュッ!

巨大な水の塊がリンカに向かって発射される。

「フン」

ジュッ!

リンカは右手でそれを軽く払う。

「魔力切れか?弱くなっているぞ…?」

「な、な、な、な…」

足がガクガクと震える。

本気で怯えているのか?

「負けるもんですかァァァァァァッッッ!!!」

アクネスは自分でも驚く程の声量で叫んでいた。

負けたくない。

その一心だけだった。

ビッビッビッ!

3つの水の刃がリンカに向かって飛ばされる。

「まだそんな力があったか」

順番に飛んでくる刃を、リンカは順番に払った。

「そんな…」

気が付けばリンカは既にアクネスの目の前にいた。

「付け焼刃の水魔術で私に勝てると思うなッッ!」

ゴッ!

怯えるアクネスの顔面を、リンカは容赦なくぶん殴った。



「おおおおおおおおおッ!!」

バチバチバチバチッ!

英輔は左腕で自分の右腕を押さえつける。

膨大な量の魔力の放出、その出力は右腕だけで抑えられるものではない。

イメージ。

目の前のゴーレムを倒すために。

もっと強くなるために。

武器をイメージする。

膨大な魔力によって1つの武器を形成する。

「何をする気ですか…!?」

明らかに異常な量だった。

修行でどうこうなるレベルではない。

天性のものだ。

バチッ!

バチバチッ!

英輔の周りで余った電流が弾ける。

「行くぜゴーレム…!」

剣だった。

高密度の電流によって形成された剣…

「おおおッ!」

英輔は走り出す。

今度はゴーレムに向かってだ。

ザンッ!

一振り。

英輔はゴーレムの足を片方斬った。

ドォン!

斬られた足は土に戻り、ゴーレムはその場に倒れた。

そして徐々に土に戻る。

「馬鹿な…!」

流石のアルビーも動揺を隠せない。

完全に予定外だ。

アクネスの邪魔をするのを防ぐため、ただ足止めだけをするつもりだった。

「俺の勝ちだ…」

英輔は剣をアルビーに向けた。

「そのようですね…」

アルビーもあっさりと認める。

こんな高密度の魔力で斬られたりすればひとたまりもない。

「あちらも…決着が着いたようですね…」

いつの間にか壁は消えていた。

アルビーが消したようだ。

あちらではアクネスが倒れ、リンカがそれを見下ろしている。

「姫様…」

アルビーはアクネスに向かって歩く。

「アルビー…」

「…申し訳ありません。負けました…」

「私もですわ…」

そう言うとアクネスはクスリと笑った。

「無様でしょう?あれだけのことを言っておきながら、結果はこれですわ…」

「無様なものですか…。負けてももう一度挑戦する、そう言ったのは貴女ですよ」

「もう帰りましょう姫様。ホテルで反省会です」

「…そうですわね」

そう言って2人は笑った。



後日、英輔はアルビーにもらった多額の治療費で入院し、ゆっくりと傷を癒した。

リンカは1人が嫌だったのか英輔が入院している間は病院で寝泊まりしていた。

家に帰らない理由について尋ねると顔を真っ赤にして怒るので英輔はもう何も聞かないことにした。

アクネスとアルビーはしばらくこの町にいるらしく、どこかのホテルに泊まっている。

「なあリンカ…」

「なんだ?」

リンカは見舞でもらった林檎の皮を剥きながら答える。

ものすごく歪な形になっているがそこはつっこまないことにする。

「俺、強くなってるかな…?」

「…ああ。なってるよ」

リンカにしてはやけにストレートな誉め方だった。

「あのアルビーという男、かなり出来る男だった。アイツを倒せたのなら、お前は十分強くなってるよ」

そう言ってリンカは微笑んだ。

「まあ、私には到底及ばんがな」

「自分で言うかよ」

そう言って笑うリンカにつられて、英輔も笑った。



To Be Continued

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