25ページ目「形成されたゴーレム。」
「英輔ッ!」
リンカは不意に出現した英輔と自分を隔てる壁に驚愕した。
「アルビーですわね・・・」
「今すぐ止めさせろ!英輔は関係ない!」
「あら、彼も立派な魔術師ですし、問題はないのではなくて?」
「・・・ッ!」
リンカは壁を睨みつける。
「他人の心配をしている余裕はなくってよッ!」
ビシィッ!
アクネスが腕を振ると水の鞭がリンカの横で地面を叩く。
「ッ!?」
「私と・・・・たっぷり遊びましょう」
アクネスはニヤリと笑った。
圧倒的不利。
それが英輔の状況だった。
自分の魔術と相手の魔術との相性、魔術の熟練度、体格、全てに勝てる要素はなかった。
だが倒すと言ってしまった手前、引くわけにはいかない。
それに、引くつもりなどない。
なんとしてもリンカを助けに行く。
英輔の思いはそれだけだった。
「来ないのですか?」
「・・・・」
「来ないのなら・・・」
アルビーはそう言いながら地面に手をつく。
魔術を使う気だろう。
「こちらから行きましょう」
ボゴゴゴゴッ!
「ッ!?」
アルビーの周りの地面が大きく変動する。
アルビーの周りには巨大な穴ができ、その横で大量の土が蠢いていた。
その大量の土はまるで粘土のように変形し、徐々に人型へと変わる。
「マジかよ・・・・」
ゴーレム。
その物体を形容するのにこれ程適した言葉はないだろう。
土によって形成された人型のソレは頭はあるものの目はおろか鼻や口もない。
手足には指がなく、まるで幼稚園児が遊びで作った人型の粘土のようだった。
問題はその大きさだった。
長身であるアルビーすら比ではない程の大きさ。
2倍以上は確実にある。
それだけ巨大だった。
「土の魔術とは・・・初めて戦いますか?」
「初めても何も戦闘経験自体少ないんでな・・・。初めて見るよ、こんな化け物は」
「そうですか・・・。なら、少し可哀そうなことをしたかもしれませんね」
ドォン!
ゴーレムが一歩歩くだけでこの地響きだ。
コイツが本気で飛び跳ねれば大地震になりかねない。
「どうか・・・・死なないで下さいね」
死なねーよ。
そう言いたいところだがこのゴーレムが相手では本当に死ぬかもしれない。
そんな不安が英輔の脳裏をよぎる。
「ゴーレム、行って下さい」
ドォン!
アルビーの指示を聞いたゴーレムはまた一歩英輔に向かって歩いた。
ドォン!
巨大な足音が夜の校庭に響く。
「何だ・・・!?」
「アルビーですわね・・・。相変わらず不細工なゴーレムですわ」
リンカの隣の土の壁よりもはるかに巨大なゴーレムがリンカの目に入る。
土の魔術の基礎。
地面の土を操り、変形させ、造形する。
ゴーレムは基本中の基本だがあれ程巨大なゴーレムはリンカも初めて見た。
「英輔・・・・ッ!」
「さあ、そんなことより私と決着を着けましょうリンカ。溺れ死なせてあげるわ」
ビュッ!
先程の水の鞭がリンカの頭上から振り下ろされる。
「ッ!?」
リンカは横に跳んでそれを避けるとアクネスに向かって走り出す。
「来させませんわッ!」
「な・・・・ッ!?」
ビシィッ!
横からだった。
リンカは自分が油断していたことを理解した。
先程縦に振り降ろされた水の鞭は、今度は横に振られリンカの身体に直撃している。
ドッ!
リンカはそのまま横に吹っ飛ばされた。
全身を激痛が走る。
「ホホホホホホッ!良い様ですわリンカッ!」
リンカはその場でよろよろと立ち上がる。
思ったよりダメージを受けてしまった。
「今日こそ・・・今日こそリンカを私の前に屈伏させることが出来ますわ・・・ッ!」
完全にハイになっているアクネスはさらに水の鞭を伸ばし、横に振る。
ジュッ!
「ッ!?」
妙な音だった。
熱したフライパンに水をかけるような・・・・そんな音だった。
リンカの魔術を消した?
違う。
何故なら彼女は今直立している。
「アクネス・・・。さっきの一撃で冷めたよ。礼を言うぞ」
リンカは不適に笑っている。
「な、何を言ってますの・・・!?」
「知っているかアクネス・・・・。一見火は水より弱く見える。だがな、高温の炎は水を蒸発させる・・・ッッ!」
「そんな・・・・・ッ!」
無意識にアクネスは後に一歩退く。
怯えている?
違う、違うハズ。
リンカに有利な魔術を身に着け、修行し、確実に彼女より強くなったハズ。
アクネスはそう思いながらもまた一歩退いてしまった。
「反撃・・・・・開始だッ!」
To Be Continued