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落ちていた魔導書。  作者: シクル


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21/53

21ページ目「操られた白。」

「嘘だろ・・・・?」

英輔は恐る恐る振り返る。

そこにはうつむいた白が立っていた。

明確な殺意を英輔に向けながら。

流石のリンカも言葉を失っている。

今の白はあまりにも違った。

今までの白とは違い過ぎた。

「ふふふふ。ほんの少しの間でも家族と思ってたその子と、精一杯殺し合いなさいな」

死霊使いはニヤニヤと笑いながら英輔達を見ている。

「やりなさい、白。彼らはあなたの敵よ」

「テ・・・キ・・・?」

「そう、敵。よく言えたわね」

「テキ・・・・・!」

「ほら」

死霊使いはどこからかナイフを取り出し、白に向って投げた。

パシッ!

白はそれを受け取るとしげしげと眺めた。

「それを使いなさい。この前みたいに・・・・」

死霊使いはそれまでよりも一層妖しく笑った。

ビュッ!

認識出来るかとどうかギリギリの速度だった。

ナイフを裏手に構えた白は英輔に異常なスピードで斬りかかる。

「ッ!」

間一髪で英輔はそれを避けた。

白はベッドに着地すると、ベッドの上で跳ね、その反動を利用して更に素早く英輔に斬りかかる。

「痛ッ!」

致命傷は避けることが出来たが頬に軽い切り傷が出来る。

「英輔ッ!」

「待てリンカ!」

駆け寄ろうとしたリンカを英輔は制止した。

「これは・・・・これは俺の責任だ・・・。だから、俺が決着をつける!」

「馬鹿言うな!お前が・・・・お前がその小娘と戦える訳ないだろう!?」

「それでも・・・・俺の責任だから・・・!」

英輔は意を決したかのように構えた。

異常に早いとは言え、完全に認識出来ないスピードではない。

集中しろ。

英輔は自分の中で言い聞かせる。

見るんじゃない、感じるんだ。

神経を研ぎ澄ませろ。

全てを感じ、認識し、区別しろ。

リンカの魔力、英輔自身の魔力、死霊使いの魔力、そして・・・白の魔力。

既に英輔は眼を閉じていた。

未熟な俺に視覚は邪魔だ。

精神を研ぎ澄ませるのには眼を閉じるのが最適だ。

集中しろ。

英輔は再び自分に言い聞かせた。

「英輔・・・」

ゆらりと、感じていた白の魔力が動く。

ビュッ!

白の魔力が英輔に向って素早く動く。

ナイフが来る。

「英輔ッ!」

バチバチッ!

「ッ!?」

白のナイフが英輔の身体に刺さる直前で止まる。

「魔力障壁・・・。英輔の奴、いつの間に使えるようになったんだ・・・。いや、魔力障壁と言うよりは強大な魔力が漏れているだけだな」

英輔自身は全く意識していない。

ナイフが来たら素手で受け流すつもりでいた。

それが、何故か何もすることもなくナイフは止まった。

バチッ!

「あッ!」

ドン!

英輔の魔力障壁に弾かれ、白は吹っ飛んで壁にぶつかる。

「・・・・」

そんな様子を死霊使いは黙って見ていた。

「思ったよりやるわね・・・。あの少年」

死霊使いの考えでは英輔は白に戸惑い、何も出来ないまま死んで行く・・・。

そうなるハズだったのだ。

少し魔力が使えるようになっていたのが死霊使いの誤算だった。

「しょうがないわね」

パチンッ!

死霊使いは指を鳴らした。

「・・・・・ッ!?」

白に異変が起こる。

指の音に驚き、英輔は眼を開けた。

「う・・・ぐぐ・・・!」

白は再び苦しんでいた。

「白ッ!」

グキグキグキッ!

「何・・・!?」

英輔達は眼を疑った。

白の右腕が歪に変化し始める。

皮が伸び、ナイフに張り付く。

まるでナイフと腕が融合しようとしているかのように。

ナイフがほぼ全て皮に取り込まれ、グチュグチュと中で変化する。

「そんな・・・・」

ナイフの刃だった部分が長く伸びる。

鋭く、長く。

「ア、アア・・・・ッ!」

ビュッ!

白は変化した右腕で英輔に斬りかかる。

バチバチッ!

英輔の魔力障壁?が白の右腕を阻む。

が、それも長くは持たなかった。

ザンッ!

「ぐ・・・・ッ!!」

白の右腕が英輔の腹部を斬り裂いた。

「英輔ッ!」

返り血が白の顔に飛び散る。

白が後に下がり、体勢を立て直そうとした時だった。

「ッ!?」

英輔はしゃがんで白を抱きしめた。

「大丈夫」

「アア・・・・!」

「大丈夫だから」

今の白には届くかどうかもわからない優しい言葉を、英輔は繰り返した。

「何をしている英輔ッ!死ぬぞッ!」

白は再び英輔の腹部を斬り裂こうと右腕を動かした。

が、その腕はすぐに止まった。

「何をしているの白。早く殺しなさい」

余裕は消えているが、悪魔で冷静に死霊使いは指示する。

が、白は従わなかった。

「オ兄・・・ちゃン」

「白・・・・」

「ずット欲シカった・・・白のホントウノお兄チャん」

「お前・・・・・・」

英輔の脳内に様々なイメージが浮かび上がる。

恐らく生前の白のものだろう。

貧しい家に引き取られた白。

その家の家族に疎まれ、虐げられる白。

放置、罵倒、暴力。

イメージの中で最も白を傷つけていたのは長男であろう青年だった。

「白の・・・記憶・・・」

自然と英輔の眼からは涙が溢れていた。

「もう、お前を虐める奴なんていないからな。これからお前が行くところは、きっと幸せだから」

徐々に白から溢れる光。

未練のなくなった霊が天へ帰る際の光。

「ホんトに・・・?」

「ああ、嘘はつかない」

白が消える瞬間、英輔は一層強く白を抱きしめた。



To Be Continued

今日はすごく調子が良かったので久々に2話連続更新です。

最近サボりがちですいませんorz


21部分目と言えば前々作の「〜夢は現となりて〜」の話数と同じです。

話数的には前々作を越えました。

作品的には越えてるのかな・・・?

微妙なとこですので評価等で教えていただければ幸いです。


それでは今後とも「落ちていた魔導書。」をよろしくお願いします。


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