15ページ目「解放された魔力。」
気持ちの良い朝だ。
土曜の朝は気持ちが良い。
英輔は気持ち良さそうにあくびをするとベッドから出た。
いつも学校へ行くためにバタバタする朝がこんなにも気持が良いのは一重に今日が休日だからだろう。
英輔が居間に行くと、既にリンカは起きており、ソファーに座ってテレビを見ていた。
「おはようリンカ」
「遅いぞ英輔」
「まだ8時だぜ?早い方だよ」
英輔はそう言ってあくびをすると顔を洗いに洗面所へ行った。
英輔はある程度身支度をすると台所へ向かった。
「リンカ、朝何食べたい?」
「麻婆豆腐」
「んなヘビーなもん朝から食えるか!」
結局朝食は目玉焼きにウィンナーといった簡単なものになった。
「なあ、リンカ」
「何だ?」
「今日暇なんだしさ・・・その・・・・」
「ん?」
「俺に魔術を教えてくれ!」
「え・・・?」
英輔の意外な言葉にリンカは驚きの表情を隠せないでいた。
確かにこの間英輔は魔術を使えるようになりたい、と言っていたがこんなに早く言い始めるとは思わなかった。
「霧島に勝ちたいんだよ・・・!」
リンカは「ふぅ」と溜息をついた。
「雅に勝てるかどうかはお前次第だ。良いだろう、お前に魔術を教えてやる」
「ホントか!?」
「ああ。そのかわり、私は厳しいぞ?」
「あ、ああ・・・!」
流石に室内では出来ないので、庭でやることになった。
「お前、魔力のコントロールは出来るか?」
「多分・・・無理」
「だろうな。今まで何度か使えたのも偶然だろう」
「・・・・」
「まずはそこからだ。コントロールすると同時にお前の魔術属性がわかる」
「魔術属性?」
「ああ。術者の得意とする魔術の属性だ。私なら炎、雅は恐らく風だな・・・」
「俺は・・・?」
「わからない。直接お前の魔術を受けた者ならわかるかもしれないが・・・」
「・・・・・・」
「まずは魔力をコントロールし、最初に出せたものが魔術属性だ。私の場合は手の上で炎が燃え盛っていた」
「なるほどな・・・・」
英輔は自分の手をまじまじと見た。
俺の・・・魔術属性・・・。
リンカと同じような炎か?
それとも正反対の水?
「考えても仕方ない」
「英輔、集中しろ。魔力を使うことに」
「リンカに魔術を使わせる時みたいにか?」
「いや、アレとは少し違うな」
「集中・・・・か・・・」
「身体の中で何かがうずまいているイメージだ」
身体の中で何かがうずまく・・・・?
英輔は目を閉じてイメージした。
うずまく・・・・。
イメージしたのは水だった。
風呂の水を抜く時のような・・・・。
「・・・・・」
バチッ!
静電気のような感覚。
冬場になるアレだ。
「これは・・・・」
英輔が目を開けると自分の身体中に電流が走っていることに気がついた。
「リンカ・・・コレ・・・」
「お前の魔術属性は電気だな」
「電気?」
「ああ」
電気・・・か・・・。
「じゃあアレか?10万ボルトとか出せるのか?」
「どこのピ○チュウだお前は」
リンカは呆れたように溜息をついた。
「まあいい。これで魔力の解放は成功した。次は術の発動だな」
「術・・・?呪文とかいるのか?」
「呪文の詠唱が必要なのは高度な魔術だな。基本的にはいらない」
「なるほど・・・」
「今のお前の状態はただ魔力が電流として流れているだけだ。魔力のコントロールの次の段階に移るぞ」
「ああ」
それにしても意外に早く解放出来たな・・・。
リンカは英輔の成長の早さに驚いた。
通常、魔力の解放には2、3日はかかる。
才能のないものでは1週間以上かかることもある。
「才能・・・か?」
「ん?」
「いや、何でもない。それより次はその流れ出る電流・・・電気を一点に集中しろ」
「一点に?」
「ああ。例えば手の上とかだな。慣れれば・・・・」
そう言いながらリンカは足を英輔に向けて上げる。
ボォッ!
「うわッ!」
リンカの靴の裏に火が灯る。
「こんな場所にでも出来る」
「な、なるほど・・・・」
「簡単なのは手の上だな。やってみろ」
「やってみろって・・・」
「解放の時と同じだ。今度は手の上に魔力を集中させるイメージだ」
「わかった」
手の上に・・・集中・・・・!
どうやら魔術の基本はイメージらしい。
恐らくコレもさっきの解放の応用といったところだろう。
バチッ!
バチバチバチッ!
英輔の体中を駆け巡っていた電流に多少変化が起きる。
英輔の意思に呼応して一点に集まろうとしているのだろうか・・・。
来い・・・来い・・・・・!
バチバチバチバチバチッ!
電流が移動しているのがわかる。
ソレは確実に自分の右手に向かっているという確信が英輔にはあった。
バチバチバチバチバチッ!
「ほう・・・・」
英輔の右手にはソフトボールくらいの大きさの電気の塊があった。
「出来た・・・・」
「中々のものだな・・・・。元々の魔力の量が多い分、密度も濃いな・・・」
「よし、やめ!」
「あ、ああ!」
英輔が消そうとするとすぐに電気の塊は消えた。
コントロール出来ている証拠だろう。
「午前はココまでだ。午後から実戦訓練だ」
「実戦!?」
「特別ゲストを呼んでやろう」
英輔の中で非常に嫌な予感がした。
To Be Continued