13ページ目「壊された結界。」
「なッ!?」
「確かに英輔では役不足かも知れんな・・・」
真剣な顔で言うリンカ。
「何言ってんだよ・・・!大体、アイツ何考えてるのかわかんねえぞ!?」
「しかし魔術も使えんお前よりは戦力になるだろう・・・」
「な・・・・!?」
英輔は耳を疑った。
リンカに愛想をつかれたのか?
確かにリンカにしてみれば英輔は役に立たないかも知れない。
しかし、あんな突然現れた男に乗り換えられる程度の関係だったのか・・・?
「リンカ・・・」
「授業が始まるぞ」
「・・・・」
どうも納得がいかない。
何故こんなにも簡単に・・・・。
「捨てられた・・・のか・・・?」
あれからリンカとは一言も喋っていない。
既に4時限目が終わっており、これから食堂に向うところだった。
「どうしたんだ桧山。死んだ魚みたいな目しやがって」
笑いながら冗談を言う雄平にツッコミをいれる気にもならなかった。
「相当へこんでるな・・・」
「何かあったのかな・・・?」
淳も心配そうに英輔を見ている。
「なんでもないよ・・・・。さあ、楽しい食事の始りだ・・・・。はは・・・・」
無理に強がっているがどう見てもへこんでいた。
「磯野さんとケンカでもしたの?」
「ッ!?」
正解に近いが違う。
「そ、そんなことねえよ。面白い冗談だな森田」
英輔の顔はひきつっていた。
「マジか!?じゃあチャンスじゃねえか!」
興奮する雄平を英輔はギロリと睨みつけた。
「何のチャンスだ・・・?答えろ高島」
「す、すまん・・・・・」
「でも、図星みたいだね・・・」
心配そうに言う淳。
「そんなことないってばよ!食堂に行こうぜ!」
「どこの忍者だお前は!」
「何かおかしいよ桧山君・・・」
食事の後、5時限目の用意をしながら英輔は恐る恐るリンカに話しかけた。
「な、なあリンカ・・・」
「・・・何だ?」
英輔の予想に反してリンカはいつもと寸分違わぬ様子で答えた。
「今朝の話なんだが・・・」
「どうかしたのか?」
「ホントにアイツと・・・霧島雅と行くのか?」
「ああ。多分な・・・」
「冗談・・・だよな?」
信じられない、といった様子で聞き返す英輔。
「・・・。これが冗談を言っている顔に見えるのか?」
リンカは真剣な面持ちで答えた。
「とにかく私は放課後、霧島雅と話をする。ついてくるなよ?」
そう言ってリンカは英輔を睨みつけた。
放課後になるとリンカはすぐに雅の元へ向かった。
今朝の話の続きをするためだ。
「来てくれたんですね・・・」
「ああ」
「屋上にでも行きましょうか」
「そうだな」
雅は屋上に向って歩き出す。
リンカもその後ろに続く。
そして更にその後ろをそっと英輔がついていく。
英輔の奴・・・
来るなと言ったのに・・・・・。
英輔の気配に気づいたリンカは溜息をついた。
英輔に直接文句を言おうとリンカが後を向いた時だった。
リンカのより先に雅が英輔の元へ向かった。
「ッ!?」
ガッ!
雅は英輔の胸倉を掴む。
「どういうつもりだ・・・?」
「離せよ」
「盗み聞きするつもりだったのか・・・?」
「いいから離せよ」
「貴様・・・俺と会話する気があるのか?」
「ねーよ。いいから離せ」
「・・・」
英輔は緩んだ雅の手を払いのけた。
「英輔・・・・。ついて来るなと言っただろう・・・」
「納得いかねえ・・・。なんでそんな奴と行くんだよ!?」
「英輔には・・・関係ない」
「な・・・ッ!?」
関係・・・ない・・・だと・・・!?
「あれだけ巻き込んどいて今更関係ないだとッ!?ふざけんなッ!」
騒ぎが大きくなったため、周りの生徒がこちらを見ている。
彼らからすればふられた男が逆ギレしているようにも見える。
そんな英輔を無視するかのように雅は階段を上る。
「すまない、英輔」
一瞬切なげな表情を見せて、リンカは雅についていく。
「おい、リンカッ!」
英輔は2人の背中を見ながら、呆然と立ち尽くした。
「英輔・・・・」
「アレのことがまだ気になりますか?」
雅はそう言って軽く微笑んだ。
「心配はありません。屋上への扉には結界を張ってあります。彼の魔力では破壊出来ないでしょう」
「霧島雅・・・お前の目的はなんだ・・・?」
「ある男の抹殺・・・。それが俺の目的です」
「抹殺?」
「はい。その男は『星屑』に所属し、この世界に滞在している」
「名は?」
「男の名は、バロン・クロア」
「バロン・クロア・・・?」
「ご存じですか?」
「知識だけな」
「俺の目的はあの男の抹殺、貴女の目的は『星屑』の壊滅・・・。違いますか?」
「いや、その通りだ」
「なら利害は一致しています。俺と組んで、『星屑』を潰しましょう」
「そう・・・・だな。だが条件がある」
「何ですか?」
「この町の住民に一切被害が及ばない手段しか使うな」
「・・・」
雅は考え込むような素振りを見せた。
「彼が・・・桧山英輔がそんなに気になりますか?」
「な・・・・ッ!?」
「図星ですか?」
「ち、違う!そうじゃない、この町の住民に迷惑をかけたくないだけだ・・・!」
「・・・。そうですか、なら彼のことを忘れさせてあげましょう」
「何・・・!?」
雅がリンカの頭を掴む。
「記憶を操作させていただきます」
「ッ!?」
まずい・・・!
今の私はまだ英輔と契約した状態・・・。
魔術は恐らく使えない・・・!
「では・・・。行きますよ・・・」
雅がリンカに魔術を使おうとした、その時だった。
ガシャアアアンッ!
「!?」
ドアが勢いよく砕ける。
「馬鹿な・・・!?結界が・・・!」
現われたのは英輔だった。
「何をしようとしている・・・!?」
英輔が雅を睨みつける。
「貴様・・・!どうやって俺の結界を・・・!」
「さっきまでは・・・。リンカがそれで良いなら納得しようと思ってた。でもな、屋上まで来てみりゃドアのガラスから見えたのは、リンカに何かしようとしているお前だ・・・!お前なんかにリンカは渡せねえ・・・!」
「少し貴様を甘く見ていたようだ。桧山英輔。これからはお前を俺の敵とみなす」
「望むところだキザ野郎ッ!!!」
To Be Continued