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部活の先輩と部活以外であったときの気まずさは異常。

「…おはようございます」


 教室で座っていたら挨拶された。

 まあ普通だな。

 教室に座っていたら女子に下の名前を呼ばれて挨拶された。

 まだこんなの普通、普通。まだいける。

 教室に座っていたら昨日押し倒された女子に突然、下の名前で呼ばれるようになり挨拶された。

 あれれ〜おっかしいぞ〜どんどん文字を足していったら急に怪しい感じになったぞ〜自意識過剰とかじゃなくてこれ完全に何か企まれてるよね。もう勘違いとかじゃないよね。


 「昨日はありがとうね。(保健室の)ベットまで運んでくれて」


 「いえいえ、急に学校で倒れるなんて大丈夫でしたか英さん。保健室ではよく眠れましたか?」


 「あんまり寝れなかったな。(頭が)痛かったからかな。蓮水くんがずっと側にいてくれたんでしょう?」


 「いえ保健室の先生に任せてすぐに帰りましたよ」


 ここはクラスメイトに誤解されないように嘘をつくのがベター。伝われこの思い。

 

 「嘘なんかつかなくてもいいのに。それにさっき英さんって言ったでしょ。花凛って呼んでもいいよって言ったじゃん」


 「そうでしたっけ。ははは」


 「えへへ」


 やばいよーやばいよー英さんがなんか知らんけど全速前進だよ。な、何か昨日しましたかね。むしろ悩みを聞いてあげたりと良いことしかしてない気がするんですけど。


 いつもはうるさい教室がすっごい静かだ。いつもみたいにキャッキャウフフしててよ。……キャッキャウフフって表現最近聞かなくなったよね。


 みんなが少し目を逸らしてくれている優しさが痛い。


 だが残念だったな英 花凛。ここからは授業が始まるんだよ!


 俺のキャラはどこへ向かうんだろうか。クール系を目指したいのに。



***


 「蓮水くん。今日うちきてくれない?」


 「はい?」


 右京さん風の返事をついしてしまうほど、唐突な言葉。積極的に俺に絡むように英さんがなってから数日が経った。その間一緒にお昼を食べたり(英さんが勝手に机をくっつけてきた。)休み時間は、ほとんど英さんとの雑談に費やしたりしていた。


 そんなこんなの金曜日である。


 「はいってことはオーケーなんだね。じゃあ行こっか」


 「すいません間違えました。いいえです。英さん」


 「ぶー」


 不満そうに言う英さん。かわいいじゃないかおい。というかぶーって実際に言う人初めて見た。今考えるとブタゴリラとかぶー太郎とかすっごいひどいあだ名。


 「なんでダメなの?」


 「なんでわかないんですか?」


 「なんかおかしいいかな。たくさん話をするようになった。イコール友達になった。友達の家に遊びに来てよ。以上」


 そう聞いちゃうと違和感ないですね。男女っていう前提が抜けてるのはともかく。


 「え〜とすいません。あれです。今日から部活に入れるんですよね。入部届けを出しに行ってそのまま部活してくるんで、いけません」


 「ふーん。……蓮水くんは何部に入るの?」


 「民俗研究部です」


 「ふーん」


 別に興味ないっすかね奥さん。


 「じゃあ行きますね。さようなら」


 「うん!わかった。またね!」


 この時俺は『またね』の意味をもう少し考えておくべきだった。




***



 突然だが俺の行っている高校の形について説明しておこう。この高校を上から見ると漢字の二みたいな形をしている。長いほうが新校舎。綺麗で1〜3年の各クラスルームがここに入っている。短いほうが旧校舎。特別教室などがこちらに入っている。1階と3階に2本ずつ計4本の連絡通路がある。他にも体育館が二つとテニスコート、グラウンド、部室棟なども敷地内にある。因みに校舎は三階建てである。


 民俗研究部が使用している部屋だが、旧校舎の3階にある今は使われていない社会科資料室らしい。まあ、民俗研究部だからそのピッタシの教室なんじゃないかなと思ったり。


 しっかし今日は活動してんのかな。


ーーコンコン


 正しいノックの数は3回らしいよ。みんなも気をつけようね!


 「入りたまえ」


 その言い方で先生とかだったらどうするつもりなんだろうか?


 「失礼します」


 その教室には壁際に本棚が並んでおり、会議室のように机が並んでいた。


 入って正面に机を挟んで鬼無里先輩が座っていた。両手を机の上で組み、口元を隠すようにしている。碇スタイルとでも言えばいいか。中々似合っている。


 「おお、来てくれたかい。蓮水くん。入部かい?入部部だよね、そうか入部か。私も嬉しいよ君が入ってくれたら」


 「えっと」


 「なんでそんなことで突っ立てるんだい?早くこっちへ来て座るといい私の隣に」


 「いや、あの」


 「なんだい二人っきりだからと言って恥ずかしがっているのかい。そうか、そんなに私を意識してくれているということか。いやはや私も嬉しい限りだよ」


 「……いや二人っきりじゃないですよね。そこに縛られて転がっている実篤がいるじゃないですか」


 部室の隅の床に転がっていたのは、縄でぐるぐる巻きにされた鬼無里 実篤であった。よくわからんけど滂沱の涙を流している。最初から視界の隅にいて気になってしょうがなかった。


 「ああ、そのゴミのことかい?世間では一応一人っていう単位で数えるからね。部活存続の足しになるかと拾ってきたのさ」


ゴミって。


 「大丈夫か実篤」


 「大丈夫に見えるか蓮水」


 「どうしたんだよ。お前ならゴミって言われたら『ゴミをなめんな!夢の島だってゴミでできてんだぞ。つまり俺は夢そのものだと言っても過言ではない。』ぐらいのセリフを言えるだろ」


 「うん、どこから突っ込んでいいかわからないけど一つ言わせて俺ゴミじゃないから。というかちょっと時間くれ。男のくせに姉ちゃんにポンポン投げられる自分に自己嫌悪中だから」


 「そうだよ。早く私とお話をしようじゃないか二人っきりで。」


 二人っきりを随分と押しこんでくるな。まあこの面子なら放課後もきっと楽しい日々を過ごせるだろう。



ーーガラガラ


 「すいません。入部希望者の英 花凛です。よろしくお願いします!」


 またお前か。


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