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オペラグラスでオペラ観たことありません。

「じゃあ、お兄ちゃん。今日も先行くね」


「おお、いってらっしゃい」


翌朝、霞はいつも通りに早めに学校へ向かっていった。いつもと変わらないような気がするが。


「よし、俺も行くか」


昨日冬香と計画した通りに。霞にバレないよう霞が登校した後に先回りをして教室を張る。まあ、先回りといっても20分ぐらいしか霞より先行できないので、それより前は冬香が張っていてくれるらしい。


冬香は家も遠いはずなのに朝早くから本当に申し訳ない。そこまで協力してもらうのも気が引けるので、『疑われてもいいから俺が早くから行く』と言ったが『霞ちゃんが心配するでしょ』の一言で黙らされてしまった。この一件が終わったら何かお礼しないとな。


***



学校に着くと冬香から指定された教室に行く。その教室は霞のクラスがある校舎の向かいの校舎の二階だ。ちょうど霞の教室を斜めに見下ろす形になる。


「あっ蓮水!こっちこっち」


教室に入ると霞がベランダの入り口で手招きをしていた。


「誰か来たか?」


「とりあえず今のところ誰も霞ちゃんの席には近づいてないかな」


霞の席は窓側から二列目の一番後ろ(リサーチ済み)。

こっちの校舎からもよく見える。


「はい、じゃあ蓮水これ!」


「これは?」


やたらごついカメラを渡される。


「証拠を抑えるためのカメラ。フィルムだから捏造もできないよ」


「そうなの?」


「多分ね」


そういうと冬香は双眼鏡を覗き込みながら寝転がる。流石にベランダだけじゃ長さが足りないので、教室の方に脚を伸ばしベランダの柵の方に向かってうつ伏せになる。俺もそれ慣い冬香の横にうつ伏せになる。


一人がカメラを持ち一人が双眼鏡を持ち教室を覗き込む。うん、犯罪臭しかしない。


「こうするとあっちの教室からは見つかりにくいんだよね〜」


冬香は双眼鏡から目をはなさずそう言った。ここまでの手際が良さすぎて怖いです冬香さん。


「でも、これあっちの校舎の3、4階から丸見えじゃないか?だいぶ怪しいぞ」


「あ!忘れてた。忘れてた。そう思ってこういう物を持ってきたんだよね〜」


冬香が取り出したのはでっかい灰色の布だった。


「これを被ればモーマンタイ。あっちから見てもここに人がいることはばれません」


「おお、流石!」


でも、怖い!


 二人で一緒に布を被ると布が意外に小さいことがわかる。冬香と肩が触れるぐらいまで近づいて二人がしっかりと隠れる。しばし無言の時間が流れる。二人して微動出せずに教室をじーっと見つめる。


 ふむ、最初はこの布薄いと思っていたが厚みがあるのかな?だんだん温かくなってきたような。あっ!ちげぇなこれ。二人の体温でだんだんあったかくなってきただけだ。というかよく考えたら冬香と近くない。意識したら急に触れている肩の部分が熱くなってくる。ちらりと冬香のほうをうかがう。真剣な顔で双眼鏡を覗いている。寒さでかその頬は若干赤みをおびている。そのよこ顔はとても綺ーー


 「ふーん!」


 「えっ!ちょ!なに?」


 自分の額をベランダの床にぶつける。この状況で何を考えてんだ俺はー!目的を忘れるな目的を!


 「いや、何ちょっとした眠気覚ましさ。ははっ」


 「額から血でてるけど……」

 

 ドン引きはしているがなんとかごかませたようだ。気を取り直してカメラを構え、監視を続けた。居心地は悪くはなかった。


***


丁度一週間張り込みをした。

しかし特に成果は生まれなかった。











  






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