JC設定は些か無理がある気がしてきた
すみません、短いです。
七瀬 冬香。中学一年生の時から友達だ。席が前後だったのでよく話していて、二年に上がった今もその関係は続いている。地毛らしい茶色の髪を伸ばし、制服を崩し姿はぱっとみギャル。そして今は自転車の後部座席に乗っている。
「ほらほら早く〜遅刻しちゃうよ〜」
「ぜっ、はっ、なんで俺は自転車を漕いでるんでしょうか?」
おかしい、小走りで間に合うペースで来ていたはずなのに。いつのまにか自転車のペースで遅刻ギリギリに。時間泥棒か?
「だって蓮水がパンを食べてから自転車に乗りなさいって言うから。はむはむ」
「そうでしたね!冬香が食べてる時間分遅れたんですね!てか、またなんか食ってない!?」
「え?サンドウィッチだけど?」
「まだ朝食が終わってない!」
***
そんなこんなで自転車を爆走させ、学校近くの交差点まで到着。人生初女の子と自転車二人乗りなのにこんな思い出になるなんて……しかも、おい誰だよ二人乗りする場合、抱きつかれて幸せな気分になれるって言ったやつ。夢みさせんなよ。肩に手を置かれてただけじゃねぇか。流石に肩じゃ女の子の手の感触も何も感じないよ。
「はぁ、はぁ自転車ありがとよ。お陰で間に合いそうだ」
嫌味を込めたお礼と共に自転車からおりる。自転車二人乗りで中学に突っ込むほど馬鹿じゃないので。
「存分に感謝するがいい」
したり顔で荷台からポンとおりる冬香。わぁイラっとくる。
「冗談、冗談。そんな怒った顔しないでよ。ちゃんと私も感謝知ってるって。蓮水が馬車馬のように働いてくれたことに」
ならよし。馬車馬という表現はともかく良し。
「あのさ……お礼をしたいから目を瞑って?」
「お礼?いいよ別に。そんなことより早く行こうぜ。遅刻する」
「………いいから、瞑れ」
「はい!」
すみません。どちら様ですかと言いたいほどの低い声で脅された。
眼を瞑る。もちろん真っ暗。冬香はなにかごそごそとしている。正直眼を瞑った瞬間いなくなる可能性が一番高いと思っていたが、どうやらまだ近くにはいるようだ。
「……はい、お礼」
「ちょ……なっ!」
耳元で囁かれた言葉に思わず抗議の声を上げようと口を開くとそこに何か詰め込まれる。
パンだ。
「あははははは」
「モガーー!」
冬香は自転車で笑いながら去っていった。
あいつめぇ。パンを咥えて投稿するわけにもいかないので、さっさとパンを食べることにした。しかし朝ごはんをちゃんと食べてる上に何も塗ってないパンを食べるのはなかなかの苦行だった。しかも飲み物もないし。
というか人の口に物を突っ込むなよ窒息したらどうすんだよ。
いつもより時間がかかって食べ終わると俺は歩き出した。しかし何か忘れてるような。あっそうだカバンを冬香の自転車のカゴに入れっぱなしだ。
まあ流石のあいつでもカバンを放置ってことはないだろ。教室に持って行ってくれるだろう……持って行ってくれるはず。持ってくれるよね?うん。面白そうだからって放置しそうだ。
キーンコーンカーンコーン
あっ…始業……
この後昇降口にいた先生に遅刻と学校に手ぶらで来た件の二つで怒られることになった。
違うんです。違うんです先生。俺のせいじゃないんです……!




