平凡で普通の高校生は自分のことを平凡で普通なんて修飾しない。
気持ちよい朝を迎えた。意外や意外にも昨日あんなショッキングな体験にもしたにも関わらずぐっすり眠れていた。ふむどうやら俺のメンタルはサッカー日本代表並みらしい。単位がわかりにくいな。微妙に強いか弱いかわからん。世代によるか。
そういえば朝起こしに来てくれる幼馴染っているよね。定番ネタだね。タッ◯の時代からの。よく考えるとあの話すごいよな。だって親が子供たちのために家と家の間に部屋作っちゃうんだぜ。どうするつもりだったんだよ、成長したらって感じ。テレビ番組の検証でやっていたが現実では双子の男に同世代の女子が隣の家に住んでいる所はいくつかあるらしい。だけど、流石に間に部屋はないらしいけどな。現実って儚い。
話を戻そう。朝を起こしにきてくる幼馴染に。あれって大体女子が男子を起こしにきてくれる訳じゃない?逆のパターンってあんまないよね。そりゃね。男子が女子の寝ている部屋に勝手に入んのどうなよって思いますよ。墓穴掘った。だけどねそういう事を望んでいる女子がいてもいいんだよ。好きな女子の家に起こしに行くような積極的な男子がいてもいいんだと思うんだよ。頑張れ肉食系男子。
……さてと……起きようかな。布団から。
「おはようございます。兄さん。今日は早く無駄な思考が終わったんですか?」
ブレザーにエプロンをつけた妹が迎えてくれる。うすうすお分かりかもしれないが、妹は別の学校それも女子高に通っている。本当は俺たちと同じ高校に行きたかったらしいが、親父が断固反対したらしい。
その親父とお袋も座布団に正座して妹からの朝食をもらっている。
「何でいんの二人とも?」
「朝から騒々しいな蓮水、食事の席でもう少し静かにできないのか?」
「そうよ蓮水。早く食べちゃいなさい。霞のご飯相変わらず美味しいわよ」
「いやいや。普通に馴染んでるんじゃないよ。あなたたち俺たちを置いて2年間もいなかったでしょうが。たまにしか連絡してこないし」
そう俺の両親は職業は自称旅人。なんだよそれドラクエかよとか思うかもしれんが、本当のことである。小さい頃は片方がどっちか残り俺らの面倒を見ていてくれたが、俺が中2の春両親とも旅立っていった。
いつもなんかわけのわからない事件を解決して報酬を貰ってるらしい。本当か虚偽か。嘘か真か。
「ちゃんとお金は振り込んであっただろう?」
「いや何不思議そうな顔してんの。お金の問題じゃないからね。それ親が言っちゃいけないセリフだからね。リアルでそんな親いるとか引くわ」
「「??」」
「二人で顔を見合わせて首をかしげるな。何にも難しいこと言ってないから。だからお袋その『あらあらまあまあ困った子ね。』みたいな顔でこっち見ないで」
「お前は親になんて口をきくんだ」
「ド正論!確かにタメ口だけど。ツッコミはどうしてもそうなちゃうだろ。なちゃうでしょうが」
「兄さんうるさいです。早くご飯食べてください。早くしないとこの箸の上にあるご飯を口に突っ込みますよ?」
それただのアーンだから。もしくは看護。
***
学校に向かうため、朝の住宅街を進む。ちらほらとランニングをしている人や駅に向かうであろうサラリーマン、学生の姿も見える。
いつもの朝。俺の人生に何があろうときっとこの光景は変わらないんだろうなと思うとなんか嬉しくなってきた。
「おっ。」
前方に鬼無里兄弟を発見。しかし今時姉弟で一緒に登校するなんて珍しいな。きっと仲がいいんだろうな。
「ぐべらっ!」
え。
実篤が投げられた。なんかすごいクルンって回ったよ今。てか、うちの道場の技こんな所で使わないでくださいよ。道場の沽券が。
「ふん。お前がそんな軟弱者だとはな。去ね!」
そう吐き捨てるとスタスタと歩いていく鬼無里先輩。去ねって初めて聞いたし、ていうか自分が去っていくし。
「おはよう実篤。大丈夫か?」
「おはよう蓮水。大丈夫に見えるか?」
身体が動けないのか道路に仰向けのまま答えてくれる。この状況周りからどう見られてんだろうか?
「で、なんでまたあんな事に?」
「いやさ。姉さんから自分の部活に入らないかって誘われたわけなんだけどよ……」
「ああそれで帰宅部に入りたいとか言って軟弱者とか言われてたんか」
「いやサッカー部入りたいって言ったら……」
「…………………………」
中々健康的だった。俺は無言で実篤に手を差し伸べる事にした。それから一緒に登校するのであった。
***
2年間いなかった両親が帰ってきても、自分の幼馴染が姉に道路で投げ飛ばされても、学校行ってクラスに行ったら普通の生活が始まる。クラスの不特定多数に埋もれていく。自伝ならともかく学園モノだったら俺は生徒Bとかそういう所。なんら変わりない1日を始めよう。
「おはよう〜蓮水くん!」