メイドさんの膨らんだスカートにはきっと夢と希望と暗器が詰まっている。
更新が遅れて申し訳ありませんでした!
ケース3 遠江 天&アリー・ウィーク
「蓮水。椅子を二つ使うなよ迷惑だろ」
実篤があきれたように言う。
ごめん実篤。許してくれ。こうしてないともう死にそうになるから。珍しくこうしてお前に頭を下げてるんだから許してくれ(心の中で)。なんかもう自己嫌悪とかに溺れそうになるから。
俺は椅子二つの上のうつ伏せになりながらそう思った。ああ、椅子の冷たさが心地いい。できることならこのまま椅子になってしまいたい。(注意!ドM的願望ではありません)
そんな俺にまたあいつが忍び寄る。
「ばばーん!…あれ?お兄ちゃん何やってんの?」
「ごめん、てっちゃん。今はそっとしておいて欲しいかな。立て続けの精神クラッシュにそろそろ何か大事なものが壊れそうで」
「大事なものはそう簡単に壊れんません〜はい起きる〜」
手をぐいぐいと引っ張られるが、俺に反応する気力はない。
「気力注入!ふぅ〜」
「ふぁ!」
耳に生温かい空気を吹きかけられて思わず飛び起きる。
「にひひ」
目の前には猫耳メイドがいた。
どう考えても短いスカートのメイド服。真っ白な手足を惜しげもなく晒している。カフス?でいいのかな。それもいいアクセントを出していた。極め付けは頭につけた猫耳。
そうか理想郷はここにあったのか。
「かわいい?」
「うむ」
かわいいとか言うキャラでもないのに条件反射的に頷いてしまうほどよく似合っていた。
「えへへ。あっ!ちょっと待ってね」
そういうとてっちゃんは再びスタタタと走っていった。後ろについている大きなリボンが揺れている。
「もう!覚悟を決めて早く来る!」
「ーーん!!」
服の列の陰で何かごそごそやっているがこちらからは何も見えない。俺はダラリと椅子から立ち上がる。
「何をやってんだ?」
俺はヒョイっと覗き込む。
「んんーー!!」
そこには犬耳メイドがいた。
てっちゃんと同じメイド服を着たアリーが手を引っ張られていた。一つ違うところは猫耳ではなく犬耳(たれ耳)をつけていることだ。
俺が来ちゃったせいか顔を真っ赤にしている。正直眼福ではあるが、
「すいませんでした」
そのまま華麗にターン。さて、今宵をあの椅子が俺を呼んでいるぜ。そろそろあの椅子にも愛着がついてきたよ。名前を付けちゃうレベル。
俺は踵を返すとキビキビとした動きで戻ろうとする。キビキビというかあれだな手と足が一緒に出てる。そこへー
「はいキャッチ」
「んん」
両腕に柔らかい衝撃。てっちゃんとアリーが俺の腕を抱え込み始めた。迂闊に動かせん。
ニヤリと笑うてっちゃんと。目をぎゅーと瞑って腕にしがみつくアリー。
「はいもう、流れわかってるね〜行くよ〜」
二人に引っ張られて連れてこられたのは、三度カメラスタジオ。また入ってきた俺にカメラさんはもはやあきれ顔を見せる。
プロなら隠しといてくれその顔。
俺ももう3回目。誠に遺憾ながらポーズをとったりするのがなれきた。
てっちゃんとアリーの雰囲気に合わせたのか、前回よりも壁紙はポップな感じのやつが多い。3人だから多めに色々パターンを試して連写していく。そろそろ終わるかな?
「いいですね〜世界観のマッチ具合がいいですよ〜執事とメイド。それは一緒に働いていながら、どこか離れた存在。執事がどんなにメイドに惚れようと。メイドがどんなに執事に惚れようと。尽くす相手はご主人様。しかも恋敵はまさかの同僚。職場恋愛などもちろん禁止。笑顔で仕事しながらも今日も3人心はすれ違う。ん〜〜いい!」
やっぱりこのカメラさんおかしいよね?なんかのスイッチが入った瞬間、間延びした喋り方しなくなるのがすごい怖いんだけど?
カメラさんはポンっと手を叩くと言った。
「執事さんメイド二人を抱き上げましょうか?」
「無理です」
ちぇーと悔しそうな声を出すカメラさん。いや無理だから二人で何キロあると思ってんの?
「わかりました〜じゃあ〜執事さんはカメラに背を向けて座ってください〜」
もう、顔も見たくねぇってことですか!?いや確かに見飽きただろうけどね!
「ではそこに〜メイドさんたちが互いに両手を握った状態で座る〜からの〜ちょっと目を伏せる〜」
うん、背中同士が少し触れ合ったりするがそれ以上に身体的接触はなく安心できる。前回と前々回がおかしすぎたのだ。
「いいですよ〜私の妄想いえいえイメージ通り〜いい絵が取れてますよ〜ああ〜この仕事についてよかった〜!はい!終了です〜立ち上がっても良いですよ〜」
やれやれ、やっと終わったか。慣れてきたとはいえ写真撮影も楽じゃないね。まあ、あと一回ぐらいこのスタジオに来そうな気がするけど。気のせいだよね。
「「きゃあ!」」
ほわッ!
てっちゃんとアリーがこちらへ倒れ込んでくる。何?足がしびれちゃったの?
身体を反転させ二人を受けとめ…られない。
そりゃ無理さ。座った状態で二人を支えるほどの筋力も体幹も持ってないよ。文化部舐めんな!
ーードシン
俺はそのまま後頭部から着地する。二人は空中でバランを整えると片手を離しそれぞれ俺の顔の横顔へ。俺が支えようとする必要なかった!?
こ、この体勢は…
まさかの二人の女子から同時に床ドンを受ける男子は史上初なんじゃなかろうか?
下から見るてっちゃんとアリーもなんだか新鮮というかなんというか。とりあえず変な感じだ。
「えっともう退いてくれません?」
俺の言葉に二人は顔を見合わせる。
「「きゃあーー」」
「えっちょ棒読み」
二人一緒に倒れ込んでくる。
「「むふー」」
やめて!満足気な息を出さないで。くすぐったい!アリーはメイド服は恥ずかしいのにこれは恥ずかしくないの!?
てっちゃんとアリーは俺の胸に二人してあごをのっけているのでこそばゆい。二人がいい匂い過ぎて辛い。本当にいつも俺と同じ環境で過ごしてます?
二人は何かを堪能しきると、俺には勿体無いくらいの笑顔で言った。
「お兄ちゃん。ごちそうさま」
「ハスミ。ゴチソウサマ」




