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河原で殴り合って友情を確かめたことがあるやつは皆無

ちょっと、つなぎのための話。

短めです。

「あっはっはっはっはっ!いや〜楽しませてもらったわ」


「うるせぇ。笑いすぎだコノヤロー。他人事だと思いやがって」


裁判の後、俺は珍しく実篤と帰っていた。 前も言った気がするが、男友達と帰ることが珍しいとか俺の日常がおかしい。


「しっかし、なんか俺の知らんうちに楽しそうなイベントがたくさんあったんだな」


「イベント言うな。こっちは毎回必死になって掻い潜って走り抜けてんだから。こんなにバラエティに富んだ日常は求めてなかったよ」


「じゃあ、質素な非日常を求めてたんか?」


「言葉で遊ぶな。もはや意味がわからなくなってんだろ」


「何はともあれ、俺はお前を羨ましくもあるかな。俺なんて学校行って、授業を受けて、部活やって、帰って寝てまた学校行くみたいなことをずっと繰り返しているだけだからな」


「高校生らしすぎる。実篤、お前に聞きたいことがあるんだが」


俺のあまりの本気トーンに思わず実篤も身構える。二人とも気分は劇画タッチだ。


「なんだよ」


「友達何人できた?」


「友達って表現はなんだか照れ臭いな。まあ、クラスの連中と部活の仲間とはそれなりに話すな」


「友達といつ遊んだ?」


「とりあえず昨日は部活終わってから部室で雑談していたな」


「女子とかとも話すんか?」


「そりゃ話すさ」


決定。こいつ殴りたい。


「てめぇ。その状況でイベントがないとか言ってんじゃねぞ。青春イベントたちまくりじゃねぇか」


「うっせぇ!俺の実情を知らないからそんなことを言えんだお前は。クラスの女子に『実篤くんって話しやすいくていい人だけど。みんなにとっていい人で終わって誰とも付き合えないよね』って断定で言われた俺の気持ちがわかるか!?」


「はっ。俺なんか未だにクラスメイトからよそよそしい態度を取られてるし、一部の女子からは日々軽蔑の視線で見られてんだぞ」


主にてっちゃんとか花凛さんとかアリー関係で。 俺と実篤は互いに胸ぐらを掴みあってムムムムムムと唸る。


「やめよう。悲しくなってきた」


「そうだな」


何が悲しくて男と至近距離で見つめ合わなければならないのか。


「てか、蓮水は文句を言ってるが俺みたいに学校生活を過ごすつもりはないんだろう?」


「まあな」


「じゃあ、今の会話は一体なんだっただよ……」


雑談だよ。特に生産性のない暇を潰すだけの会話です。 疲れたように肩を落とす実篤をほっといて先へ進む。


ん?


俺は本屋のショーウィンドウの前で立ち止まる。


「ああ、それな」


後からきた実篤も俺と同じものを見つけ立ち止まる。それはショーウィンドウの中のベストセラー本や話題の教育本でもなく、ショーウィンドウの外側に貼られたもの。そう、我らが学校の学園祭のポスターである。


「これはなかなか思い切ったことをしたよな」


「ああ、まさか全校写真を使うなんてな」


例年ならば美術部の何人かが描いたポスターの中から全校の投票によってポスターを決めるのだが、今年の生徒会長が全校写真がいいと言い張り先生方に頼んでこういう風になっていた。 全校が校庭に集まり校舎の上から撮った写真なのだが……


「これじゃあ、誰がどこにいるかわかんないよな」


「まあ、人数が多すぎるからな」


色んな所に張り出されるからそれはそれでいいんだろうが、ほとんど顔の識別はできていなかった。印刷したこともあり、顔を近ずけてやっとわかる程度だった。 まあ、こういうの見るとつい知り合い探したくなるよね。花凛さんとかてっちゃんはどこかな?ん?


「「あっ。お前いたわ」」


俺と実篤が同じタイミングでポスターを指差す。


「「おいおい、そう簡単に見つかるわけ」」


俺は実篤を実篤は俺を綺麗に指差していた。えっと相性ばっちしてことでいいのかな?だからそんな嫌そうな顔するなよ実篤。鏡かと思ったわ。さっきよりもテンションを数段階落とした俺たちは無言で帰路につく。 俺より知り合いが多い実篤が真っ先に指差したのが俺って……


「そりゃ実篤。お前モテないわ」


「カッチーン」


その後しばしの殴り合いが発生した。





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