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肉食系女子に狙われています  作者: シュガー後輩
第3章 俺と吸血鬼
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てっちゃん改め遠江 天

「よし、これで全員かな」


私とアリーちゃんを襲ってきた男達を縛り上げる。もちろん縄とかは持っていなっかったから男達のベルトや服を破いたりして代用した。この人たちが絵に描いたような黒服さん達でよかった。とりあえず傷害罪と書いた張り紙を貼ってまとめて近くの警察署に運んでおこう。貼り紙を信じるかはわからないけど、ナイフとか色々持ってたから銃刀法違反には引っかかるよね。


あとは。


「アリーちゃん?」


「……ッ!」


からだを抱きしめながら地面に座り込んでいるアリーちゃんに声をかける。アリーちゃんは黒服達に襲われた時に突然震え出して、座り込んでしまった。 私に呼びかけられてゆるゆると顔をあげる。


「ソ……ラ……?」


「うん。そうだよ。もう大丈夫。悪い人はこの頼りになる天ちゃんがぶっ飛ばしちゃったからね」


「ソラ」


「おお?」


アリーちゃんが抱きついてくる。こちらかはたくさん抱きしめたことはあるけど、アリーちゃんからは初めてだ。とりあえず、頭を撫でる。うわぁ!サラサラ!


「ごめんなさい」


「どうして謝るの?」


「ソラが襲われたのは私のせいだから。私がここに居るから」


きっとあいつらはアリーちゃんを地元にいる時も襲ったのだろう。でなきゃこんなに自分のことを責めるわけがない。 もっと痛めつけておけばよかったかな。


「アリーちゃんのせいじゃないよ」


私は抱きしめ返しながら続ける。


「アリーちゃんが謝ることじゃない。いけないのは襲ったあいつらの方。気にすることなんてない。今度来ても私がボコボコにして追い返しちゃうから」


「でもそもそも、私がいなければ」


「てい」


アリーちゃんのほっぺを両手で掴む。


「いひゃい」


「そんな悪いことを言う口にはお仕置き。アリーちゃんがここにいなかったら?それは私たちの出会いそのものを否定する言葉だよ。私だけじゃない。霞も、鬼無里先輩や花凛ちゃん、それに蓮水も」


喋りながらうりうりと頬っぺたを持て遊ぶ。


「アリーちゃんは私たちと一緒に居るのは嫌?」


「そんなことない!」


「じゃあ、一緒にいよう。どんなに迷惑かけようが一緒にいたいならいればいい。ありきたりだけど人に迷惑をかけない人はいないってね」


まあ、私たち二人とも人じゃないけど。


「他に言いたいことは?」


「ごめ……ううん。ありがとう」


「うん、オッケー。じゃあ帰ろう?」


「うん」


アリーちゃんと並んで歩き出す。


天狗と吸血鬼。決して交わることがなかった道がこうして合わさったのだ。揺らぐことなくこうやって一緒にみんなで歩いていこう。



***



「兄さん。遅いですねぇ」


霞が食卓をコツコツと指で叩く。明らかにお兄ちゃんがいなくて不機嫌だ。 こちらとしてもこちらで内心汗をバリバリかいている。お兄ちゃんのことだから自分は役に立たないって思って逃げ出したのかと思ったけど、もしかして大ボス的な人と最終決戦しに行ってます?まさか勇者一人レベル1で魔王に挑むとは思わなかった。というかそれは私だけには言って欲しかった。そしたらアリーちゃんを家に置いた瞬間に協力しに行ったのに。


テロン


誰かのスマホー霞しか持ってないから持ち主はわかってるけどーがなる。


「むっ……兄さんが盗聴器の範囲外から出てる」


怖いぃぃぃ!イヤイヤ、それ何の報告。盗聴器って何?というか何でそれがわかったの?お兄ちゃんも変だと思うけどこの子も大概だよ。


「発信機の位置は……道理で。随分遠いですね。盗聴器ももっと高価なものを使っとけば」


ブツブツ言いながらスマホをしまう。


聞きたいことはだいたいわかったけど、狂気しか感じない。妖怪に私にそう思われる霞って一体?人間じゃないの?


「兄さんは確か学校に忘れ物を取りに向かったんですよね?」


「はいぃぃ!」


「そんなにかしこまってどうしました?まさか何か知ってるんですか?例えば女の子を助けに行ったとか?少女を助けに行ったとか?女性を助けに行ったとか?幼女を助けに行ったとか?泥棒猫を助けに行ったとか?」


どうも助けれらた童女です。キラーン。横ピース!


「あれ?ハスミは?」


襖をあけてお風呂に入っていたアリーちゃんが部屋に入ってくる。お風呂の文化にももう慣れたようで。


「兄さんはまだ帰ってきてません。どうやらどっかに行ってしまったようで」


「ハスミがいない?」


アリーちゃんがどんどんと青ざめていく。アリーちゃんもどうやら今日の襲撃関連だと気付いたようだ。あっ!まずいかも。


「ハスミが……ハスミが!」


どんどん取り乱していくアリーちゃん。


「ちょ、ちょっと落ち着こうアリーちゃん!大丈夫。お兄ちゃんは大丈夫だから!」


やばい!目の色が赤色に変わりはじめている!


「一体何をそんなに取り乱して……」


「ああぁぁぁぁあぁぁ!」


霞の言葉に重ねるようにアリーちゃんが叫んだその時。


バリィ!


アリーちゃんの背中から蝙蝠のような黒い翼が突き出した。 霞が隣で息を呑んだのがわかる。 目は完全に赤色に変わり、牙も完全に伸びきっている。金髪が風もないのにゆらゆらと揺れている。


ちぃ!


今にも飛び立ちそうなアリーちゃんを念動力で押さえ込み、畳に組み敷く。ぐっ……前回とは大違い。すごい力!


「アリーちゃん!冷静になって!飛び出していってもお兄ちゃんの場所わからないでしょ!」


「ーーーー!」


「ちゃんと私たちもお兄ちゃんのことを探すから!お願い少しだけ時間を頂戴!」


アリーちゃんは抵抗をやめた。 私も力をとく。それからゆっくりと霞の方に向く。霞はいつも通りの冷たい目を私に向けていた。私たちに向けていた。そのいつも通りが温かい。


「説明をしてくれるんですよね?」


「うん、全部話すよ」


私のことも含めて全部話そう。


しかし霞はその決意を軽々と踏みにじる。


「全部?バカ言わないでください。今必要な兄さんのことだけを簡潔に迅速に述べなさい」


こっちの思惑は完全無視。やっぱり君達は兄妹だよ。


「お兄ちゃんが一人でカッコつけてる。助けに行こう」


「わかりました」


私たちはアリーちゃんを両側から引っ張り上げると、夜の街に繰り出した。



***



「で!お兄ちゃんのいる方はこっちで会ってるの!?」


「はい!この方向に真っ直ぐです!」


私たちは空を駆けていた。アリーちゃんが飛べるとわかった今それを出し惜しみする気は無い。


アリーちゃんが飛び、その横を私が霞を抱え屋根の上を走っている。



『……ジジ』


「どうやら盗聴器の範囲内に入ったようです。このペースだともうすぐつきます」


「何でお兄ちゃんに盗聴器と発信機付いているか聞いてもいい?」


「はぁ?愛する人の全てを知りたいのは普通のことです?」


とんだ、アブノーマル!


『…ぁ……ぅ』


「もう少しで声がはっきりと聞こえそうです」


それを聞いちゃうとこっちまで汚れちゃいそう。緊急事態だからしょうがないかな!



しかしながらその機械からはき出された音を私たちは認識できなかった。いや頭が理解を拒否した。




『………あなたを愛しています』


















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