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肉食系女子に狙われています  作者: シュガー後輩
第3章 俺と吸血鬼
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首トンで人は気絶しないらしい

「さて、じゃあね。こちらの用事は済んだから帰るわね。安心して良いわよ。あなたが余計なことをしないかぎりあなたには危害を加えないから」


「それはそれはお優しいことで。今現在進行形で女の子を襲っている人のセリフだと思うとその優しさが染み渡りますわ」


「ふふ。何もできないくせに、その口の聞き方はある意味滑稽よ。まっ、今回はお兄さんみたいな一般人には何の関係もない話だったのよ。だからここで手を引いて正解」


そう言うとスマふをポッケに入れて俺に背を向ける。何もできないくせにか。今更それぐらいの毒で悔しいとか思う性格はしていない。そんな言葉は何回も自分で自分にぶつけてきた。


「はは」


俺の口から笑いが溢れる。それを耳聡く聞きつけたのか女性の歩みは止まる。


「あっはははは!」


「何がおかしいのかしら?」


俺の態度を肩越しに振り返って問う。その声音は心底不思議そうで。あまりの状況に狂ったの?そんな声が聞こえてくるようだった。


「決まっています。俺たちの下衆っぷりにですよ」


一人は自分の目の前に人をさらう宣言をした人がいるというのに我が身かわいさに何もできないヘタレ。もちろん犯罪者が目の前に居たからって万人が立ち向かえなんて無理な話だ。それでも自分のできることをするのが人間だ。何も行動を起こそうともしないのは弁解の余地もなく最低最悪だ。


一人は人の心をへし折るためにわざわざ誘拐することを報告してきた人でなし。吸血鬼を捕まえたい理由があるのだろう。だけどたとえ怪物を退治するヒーロー気取りだろうと、よってたかって女の子を襲って良い理由を俺は知らない。そんなのは論ずるまでもなく最低最悪だ。


「言うに事欠いて何を言いだしたかと思ったら。立ち止まるまでもなかったわ」


「お姉さんは俺に対する評価高すぎですよね。俺はそれほどの人じゃないですよ」


「…………」


肩越しに振り返る目がスッと細まったが構わずつ続ける。


「お姉さん達はアリーさんを吸血鬼を捕まえるのにどれほどの人数を連れてきたんですか?5人?10人?もっとですか?まあ住宅街でたくさん人が居たら目立つから人数は最小限ですよね」


「何?その人数で攻めるのは卑怯だと言うの?そんなこと」


「いえいえ、俺はそんなことを言いたいんじゃありませんよ。吸血鬼を捕まえようとしてるぐらいだ。万全の人数をきっと整えてるんでしょうね」


女性はこちらに向き直ると大きくため息をつく。


「で?何が言いたいの?」


「吸血鬼のことをよ〜く知っているお姉さん達に聞きたいことが一つあります…………日本の妖怪 天狗って知ってます?」


「はぁ?」


ピリリリリリリリリ


そのタイミングで女性のスマホが鳴り始めた。こちらを訝しげに見ながらスマホを耳に当てる。


「何?もう終わった?」


『………………ぁ』


「聞こえない。もっと大きな声で言って」


『し、失敗しました……』


「はぁ!?何に!」


『で、ですから。吸血鬼を攫うのにです!』


「どうしてそんなことが起きるの?まだ夕方よ吸血鬼の力は十全には出せないはずなのよ!」


女性の顔がどんどん険しくなっていく。電話口に怒鳴りつけている。


『違うんです』


「まさかもうすでに覚醒して、正真正銘の化け物になっていたというの?」


え?何?吸血鬼って覚醒すんの?すごっ。


『そうじゃないです!化け物だったのは一緒にいた少女の方です!掴みかかっていったやつから塀に向かって飛ばされて。ナイフとか出したやつが言ったんですけど、武器が勝手に手から離れて向かってきたりして……』


「そんな戯言が通じるとでも?」


『信じられないことに本当です。結局全員のされちゃって。俺は逃げ出したんで。あれ?からだの自由が効かない?足が手が動かない!?っあああ!おまえは』


「今度は何?」


『ーーーーーーー』


「ちょっと!返事をしなさい!ねぇ!」


女性はスマホからゆっくりと耳を離すと、スマホを地面に叩きつけた。スマホを踏みにじりながら俺に話しかけてくる。


「これが天狗の力かしら?」


「俺がここに来たのはあなた達と一人で対決しにきたわけじゃありません。その逆です。役に立たないどころか足手纏いなんで逃げ出して来ただけです」


「よく言うわね。私たちが別働隊で吸血鬼を捕まえようとしてるのはバレバレだったようだけど?化け物の周りには化け物が集まるのかしらね?」


「類ともってやつですよね。わかります」


「その軽口も今になっては憎たらしいわね。強がりかと思ったらただの余裕だったとわね」


女性は長い銀髪を書き上げると言った。


「作戦変更。あなたを人質にして誘い出すわ」


ガンっ!




俺は後頭部からの衝撃で地面に倒れこんだ。


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