男子高校生に門限は必要ですか?
「アリーさんの両親が来れない理由は、彼女の両親はもういないからだと思います」
失踪なのか亡くなったのかはわからない。ただアリーさんと過ごしてきて、言葉の節々からそう感じた。彼女は寂しがっていた。温もりを欲していった。そんなことを直接口にも出していた。
普通に考えてみよう。会って間もない人にあれだけ懐くだろうか。あれだけ無防備になれるだろうか。しかも男性だぞ。警戒してしかるべきだ。余りにもアリーさんの心の壁は脆すぎた。
「さてこれから俺の妄想はピークに達します。アリーさんの両親は、何故いなくなったのか?それは何かしらの事件に巻き込まれたんでしょう」
「何故?」
「アリーさんは別に日本人のハーフでもクォーターでもありません。なのになんでわざわざ遠く離れた日本まで来たのか?それは高飛びしたんでしょう。うちの両親が安全だと思った日本まで」
一番は両親のどちらかが吸血鬼ってことだけど。
「そう考えた。俺はアリーさんの周りを警戒していました。それで今日の出来事です」
ふう、なんとかここまで説明できたか。
「あの女の人は言ってましたよね。『金髪の少女を見かけた』『彼氏がいるかどうかはわからないのが、少女は一人歩いていた』と」
「確かにそんなことを言っていたね。『あと人形みたいで可愛らしい』みたいなことも言っていたね」
「先輩はそれを聞いて誰を思い浮かべました?」
「それは勿論アリーくんだね」
「俺もそう思いました。だけど女性が言っていることが本当だとしたら、それはアリーさんではないんですよ」
「なぜだい?」
「俺はアリーさんを一人で外を歩かせたことがないからです」
過保護かもしれないが、それぐらいの心配はして当然だと思っている。
「あの女性が言った人が、アリーさんではないのかもしれない。それはそれでいいです。だけどもしアリーさんを探している人だったのなら」
「ふむ」
鬼無里先輩は目を瞑って考え込む。俺の“なぜなら”や“だから”がごっちゃな、理由と結論が入れ替わる理論を頭の中でまとめているようだった。
わかっている。この後先輩がどういう反応するかは。
「わかった。こちらもアリーくんのことを気にかけておこう」
やっぱりだ。
「どうしたんだい?そんな生意気な笑みを浮かべて?」
「いや、今日一日でどんだけ先輩らしさを俺に見せつけてくるんですかね?」
「そうかい。それはいいアピールができて良かった。惚れても構わないんだよ?」
「本当に惚れてしまいそうですよ」
「「…………」」
「「…………ププッ!アハハハハ!」」
二人で顔を見合わせて笑った。人に話を聞いてもらうというのもなかなかバカにできない。確かに悩みを解決してもらったらそりゃ女の子だっておちちゃうわ。チョロインなんて言ってごめんよ。日常系ラブコメのヒロイン達よ。
***
「何か申しひらきは?」
「ありません。すいません」
家に帰ってきた俺は絶賛土下座中であった。最近俺の土下座が安すぎてやばい。大盤振る舞いだ。
「遅くなるという連絡もせずに何処をほっつき歩いてんですか!?」
「鬼無里先輩の家に行ってました」
「むぅ、実篤さんの家ですか……」
少しだけ口ごもる霞。霞も霞で連絡もせずに遅く帰ってきたのはいただけないが、男同士の付き合いに口を出すのもどうだろうと思ってるようだ。
「ん?今、鬼無里先輩の家っていいました?実篤さんの家ではなく」
ギクっ。 いや、ギクはおかしいか場所は同じなんだから。別に突っ込まれる所ではないだろ。
「兄さん正直に答えてくださいね。今日の一緒にいたのは実篤さんんですか?それとも美麗さんですか?」
「いんやーおらが落としたのはボロちぃ鉄の斧でっさ」
「ああん!?」
「申し訳ございません」
言い方が悪いでしょうに。聞き方が悪いでしょうに。そんな聞き方されたらこう答えちゃうって。10人に3人はそう答えるよ。
あれ?少ない。
「今日一緒にいたのは鬼無里先輩ですね」
隠すほどのことでもない。
「へぇ」
「ちょっと、お兄ちゃん私もその話詳しく聞きたいな」
てっちゃんまでどうしたの。顔に闇が指してるけど。詳しくたって
「いや、最初は放課後の教室で話してて」
「「放課後」」
「それでファミレス寄って」
「「ファミレス」」
「相談したいからって先輩の部屋に行って」
「「先輩の部屋」」
「その単語を復唱するやつやめて。なんか胃が絞り取られるから」
何?東◯フレンドパークのクイズなの?
「ねぇ霞ちゃんどう思う?」
「そうですね〜私も同意見です」
ねぇ〜みたいに顔を合わせないで。かわいいなーおい。一瞬天使かと思った。
「「兄さん(お兄ちゃん)。有罪」」
やだぁ。もうぅ。本当にお迎えが来ちゃう………あががが。
 
 




