『前の車を追ってください!』は運転手さんに対する無茶振りでしかない
遅くなって申し訳ありませんでした。約一ヶ月ぶりの投稿です。
気まずい。親切心からノリで了承しちゃったけど知らない人と一緒に座ることがこんなに気まずいことだとは思わなかった。後、鬼無里先輩の機嫌が悪い。さっきまでフォークでケーキを綺麗に切っていたのだが、その動きは段々と早くなっていった。今はすごい高速でケーキを串刺しの刑に処している。
そういえばこの人は注文しないんだろうか? そう思っていたらベルを押して店員さんを呼んだ。頼んだものはドリンクバー。
「ごめんなさいね。相席してもらっちゃて」
注文をしてからこちらに話しかけてきた。
「いえ、しょうがないですよ。混んでるんですから」
「そう?だけどデートの邪魔じゃなかったかしら?」
カチャンと鬼無里先輩がフォークを落とす。
「デ、デートしている風に見えました?」
「え?ええ仲良いカップルだなと思いました。この席で隣同士で座るんなんて対したバ………カップルだなって」
この人バカップルって言おうとしたね完全に。
「カ、カップル……お姉さんはケーキいりますか?」
先輩がフォークでボロボロにしたケーキを差し出す。何の嫌がらせ?確かに俺とカップリングされたのは嫌だよね。知ってた。
「け、結構よ」
少し顔引きつっている。
「では、私は胸がいっぱいなので蓮水くんにあげよう」
まさかの流れ弾がきた。
「はい、あ〜ん」
それはない。この状況でそれをするのは酷だよ鬼無里先輩。俺ももちろんきついし、それを目の前で見せられるこのお姉さんもきつい。 鬼無里先輩の考えてることがわからないよ……
「あ、私飲み物とってきますね」
気をつかわれた。というか逃げた。ちょっと待って。しかも何であのお姉さんこっちに向かってウインクしてきたの?何そのグーサインは?全然グーじゃないなからね。かなりのバッドだからね。
「はい、あ〜ん」
やめて。鬼無里先輩。そんなニコニコとした目で見ないで。謎のプレッシャーだから。
やめて。お姉さん。ドリンクバーに行く振りをしてこっちチラチラ見ないで。恥ずかしいから。
ニコニコニコニコニコニコ
チラチラチラチラチラチラ
…………。
***
「それがおかしいのよねぇ〜」
「それはまた興味深いですね」
「いや〜やっぱり魅麗ちゃんはわかってる!」
和気藹々かよ。 鬼無里先輩とお姉さんが仲良くなっちゃたよ。会話が弾んでるよ。俺はボーっとしてるっている。死んだ目で虚空を見つめながら。ケーキ?食べたよ。食べてやったよ。全部先輩の手で食べさせてもらったよ。死んだ目の原因だよ。
精神力削られまくり。それとアーンに興味もしくは羨望をおぼえてる男子諸君に言いたいことがある。 アーンは意外につらい。自分のペースで食べれないからめんどくさいし、人に自分の口の中にものを突っ込まれるの不安でしょうがない。
ホチキスを口につっこまれてから始まったあの恋はなかなか強者に位置してるよね。
そういう感じでケーキのフォークは俺にとって死神の鎌に成り代わったわけだけど、良かった点が一つ。その二人の行為に爆笑をした相席の人と仲良くなったよ。
「いや〜しかし魅麗ちゃんは綺麗ね〜羨ましいぐらい肌が白いし。それなのに彼氏がいないの?男って馬鹿よね〜(この子彼氏じゃなかったの?)」
「そうなんです。男子ってかっこつけのくせして自分からはそれを言わないですし、こっちを気にかけるくせに鈍感とかほんとに迷惑な話ですよ」
「「はぁ」」
いや、別に俺は男子代表じゃないですからこっち見て言わないでくださいよ。周りの鬼無里先輩をガン見してる男子どもにいってやれよ。 そんな会話をしている時お姉さんが不意に言った。
「そういえば、最近この近くですごい綺麗な金髪の子を見たのよね〜」
ん?
「高校生ぐらいで魅麗ちゃんとは違う感じの可愛い系の顔立ちなんだけど、お人形さんみたいな金髪碧眼ですごい可愛かったわ〜」
「ああ、それはきっと「へ〜そんな可愛い子がこの近くにいるんですか?」
鬼無里先輩の言葉を俺は遮る。訝しげに鬼無里先輩が俺を見るが気にしない。
「おお、興味津々だね。まさか金髪の人がタイプかい?」
「いや、そんなことはありませんが……やっぱり男としては気になるじゃないですか。中々金髪少女なんて巡り会える訳でもありませんし。でもやっぱり彼氏とかいそうでしたよね?」
「ふふ、あなたもやっぱり思春期の男の子ね。彼氏はどうかしらね〜その時は一人で歩いていたけど……」
「そうですか。なら俺にもチャンスがありそうですね」
一人で歩いていたか。
「おっともうこんな時間ですね。俺たちはこれで失礼します。鬼無里先輩行きましょう」
「ああ」
少し困惑しているが俺の言うことに従ってくれる。
「あらそう、あなた達と話せて楽しかったわ。また機会があったら。ね?」
俺は無言で礼をすると、会計をしてからファミレスを出る。
どんどん歩き続ける。
「蓮水くん」
ふと気付いた時には鬼無里先輩と別れる交差点まで来ていた。 どうやらずっと手を握りながら歩き続けてしまったらしい。手汗がすごい。俺は慌てて手を放すと先輩の手をハンカチで拭う。
「すいません」
「蓮水くん。どうしたんだい?」
先輩の綺麗な手から目線を上に向ける。とても優しげな目でこちらを見ている。こちらの薄っぺらい意地を見透かすような目だ。 この先輩に吐き出してもいいのだろうか?さっき頭をよぎった突拍子も無いことを。
花凛さんにも言わなかった。誰かにまた迷惑をかけないように言わなかったアリーさんの諸々を。
「蓮水くん。私は年上だ。部活の先輩でもある。いつも先輩ヅラさせてもらっているのだ。少しぐらい私を頼ってくれなければ、先輩の面目が丸潰れというものだよ。君は私をダサい先輩にする気かい?」
笑ってしまいそうになる。 やはり鬼無里先輩は優しすぎる。
「先輩……少しお話があります」
「ふむ、まるで告白のようだね」




