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野球部の4番はピッチャーかサードのイメージがある。

 「私ってさあ好きな食べ物が変わってるんだよね」

 

 「そうなんですかー」


 俺を押し倒したまま普通に喋りかけてくる英さん。俺のお腹の辺り跨ってのっかている状態だ。


 言い忘れていたが、この高校は今時珍しく女子はセーラー服、男子は学ランを着ている。なんで今こんな話をしたかというと、スカートで俺に跨っている事が重要な事だからです。


 「私ね生肉が好きなの」


 「ユッケとかレバ刺しとかですか?後は、タルタルステーキとかメット、キットフォーなんてのもありますよね。最近は食中毒とかで見なくなりましたけど」


 「なんで遠江くんそんなに海外の生肉料理に詳しいの?遠江くんも生肉ユーザー?」


 生肉ユーザーってなんだよ。別に生肉を使用してるわけじゃないわ。生肉料理の名前通じるとは思わんかった。


 「まあ、そういう調理されてるやつも好きなんだけどね。もっと好きなのは、調理されてない肉そのものなんだ。牛肉が好き。豚肉が好き。鳥肉が好き。羊肉が好き。犬肉が好き。鯨肉が好き。馬肉が好き。トナカイ肉が好き。肉と一緒にね入っている血も飲み干すの」


 女の子がトナカイって言葉使うときはクリスマスしかないって思ってた。あれだろ動物園とかでトナカイ見ても『わ〜シカさんだ〜』とか言うんだろ?


 ふう、霞が言ってた通りの変な人だったぜ。てか犬肉食った事あるんだ。中国とかでかな。


 きっと、これはあれだな。お茶目な自己紹介って奴だな。みんなとちょっと違うから恥ずかしいんだよね。これは照れ隠しなんだよね。わかるわかる。今は人と違うことが気になるよね。大丈夫。それを乗り越えれば快感にかわるから。人とは違う俺。カッコいい。


 違った。これは俺の中学時代の話だ。沈まれ。


「その生肉への欲求かな?我慢できてんだ。スーパーとかで買う動物の肉でさ。だけどね入学式のあの日ね。あなたに会ったの」


 最後の一文だけ読めば、ここから恋物語が始まりそうなんだけどな。前文で肉の事語り過ぎだし。やだよ。もう俺英さんのプリッとした唇から生肉とかそんな言葉聞きたくないよ。


 「貴方の血を見てね、匂いを嗅いだ瞬間。私は今までにない欲求に襲われたんだ。自分の心の奥底から。他の人の血を見てもそんな事にはなった事なかったのにね。で、つい血を舐めちゃったの。美味しかった。今までに飲んだ中で一番美味しかった」


 「そ、それはどうもありがとうございます。きっとあれですね、食事を作っている妹のおかげですね。きっとバランスとか栄養とかしっかり考えてあるんだろうなー」


 「でね舐めたらね……


ちょっとぉ?英さんお願いだから俺と会話しようとして。完全に自分語りモード入らないで。


 あなたに喰らいつきたくなったの」


 「はい?」


 「ねぇ……貴方を食べさせて?」






 …………はっ!完全に思考がフリーズしていた。あまりの衝撃的すぎる言葉に。今まで会ってきた中で中々の上位に入る変人だわ。


おいおいこんな素敵な言葉いわれたんだぜ。頑張れよ俺の頭脳。いつもみたいに妄想の翼を広げてくれよ。『あっこういうガチの身の危険とかは、俺の管轄じゃないんでby脳』役に立たねぇ。


てかこんな一人ボケとツッコミしてる場合じゃなかった。英さん、舌なめずりしないで。てか目が完全にいっちゃてる。


てか力強くない?俺さっきから全力で動いてんのに英さんに掴まれてる腕とか押さえつけられる体とかびくともしないんだけど。


「待ってください!ストップ、ストップ」


「大丈夫だよ。最初だけだから痛いのは」


「あなた人間食った事ないって言ってたじゃん!その情報絶対嘘じゃん!」


久しぶりのマジ焦り。


 ピリリリリリリリリ


 おっしゃあ!神は俺を見捨てなかった。今まで色々想定(もうそう)してマナーモードにしてなかった成果が今ここに。


 今おかしなルビが振られた気が。


 「英さん英さん。ほら電話鳴ってるし出ないと怪しまれるんじゃないかな。ほらそうするとゆっくり味わうこともできないと思うんだけどな」


 少し考え込んでから徐にポッケを探り出す英さん。片手でも力が強すぎ。これ立場男女逆じゃないの?なんで男子が押し倒されて床に押さえつけられてんの?


バキッとね。


 砕いた。片手でスマホを真っ二つにしやがった。スマホってこんな感じで壊れるんだ。霞の箸が可愛く見えやがる。


 「私の食事をを邪魔するものは、何人たりとも許さん」


 「いや、どこの流川さんだよ。お前のサバサバ系みたいなキャラはどこへいった」


 「あーん」


 「言葉のキャッチボール。こっちのボールもちゃんと捕球して」


 てかどうやって食うつもりなんだろう。このままかぶりつくのかな。俺の分もちゃんと残しておいてね。


 あれなんか校庭からすげぇ歓声が聞こえてくるな。


ヒューーーーーースコーーーン


「あう。」


 バタリ


 俺に倒れてくる英さん。あっ意外に胸ある。なんて事を考えてるんだ俺は。健全な男子高校生か。その通りだよ。


 校庭から飛んできたであろう野球ボールが英さんの頭に直撃した。いやもう珍プレーも真っ青てレベルで。てかこれ硬球なんだけど。


 まあとにかく助かった。ありがとう野球部。目指せ甲子園。俺たちの戦いはこれからだ。


 保健室に連れて行ってあげよう。






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