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肉食系女子に狙われています  作者: シュガー後輩
第3章 俺と吸血鬼
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授業中の校舎の静けさと言ったら

どうした方がいいだろうか。簡潔に答えるとは言ったが……この場合に俺が取れる選択肢は二つ。一つ正直に全部話してしまう。吸血鬼のことを含めて全て。それで花凛さんがどう動くかはわからないが、少しぐらいアリーさんを気にかけてくれたら儲けもの。


二つ目に黙って従姉妹という程で話を続ける。こうポンポン従姉妹が増えるのは設定として無理がある気がしなくもないが、花凛さんがにはてっちゃんの正体がバレているのでなんとかなるはず……きっと、多分。


さてどうしたものか。


此処で問題にしたいのは花凛さんをまた俺の体質のせいで迷惑をかけていいかということ。流石にそろそろ疎ましく思われてもおかしくないよな。


「父方の遠縁にあたる子です。今少し事情があって家で預かっているだけです」


俺は嘘をつくことにした。花凛さんを騙すことにした。


「ふ〜ん。遠縁ね〜仲が良さげよね〜」


こちらをを怪しむ目で見ているが、気にしない。ここは一気に押し切る。どすこい。


「アリー・ウィークさんって言います。ほら、外人ですしボディタッチが多めなんですよ。挨拶みたいなもんですよ。挨拶」


それはハグ。これはおんぶ(っぽいなにか)。全然違うわ。なんだこの言い訳。


「わかった」


「わかったんですか?」


花凛さんって実はアホなのかな。もしや本当に外国ではこんな事をしてるの人前で?やだ、はしたない。


「その代わり後ろ向いて」


「え?ヤキを入れるんですか?」


「何でそういう発想に……いいから」


俺は恐る恐る後ろを向く。何でか人に後ろを取られるのは居心地が悪い。寒気がする。ゴル◯さんもこういう気持ちだったのかな?違うか。


そんなバカな想像をしていたら首元に腕が回される。


「え?」


柔らかい感触が背中一面に広がる。人肌がほのかに暖かく正直ドキドキする。


「これは……挨拶……でしょ?」


耳元で文節で区切りながら囁かれる。


ええ、まあ言いましたよ。挨拶だって。だけど今挨拶する意味がわからない。何で花凛さんがアリーさんと張り合ってるのかがわからない。


どういう反応すればいいのだろうか。


俺は何もできないまま受け入れ続けた。


ただただ、二人の息遣いだけが聞こえる。


ぐしぐしと肩に顔を擦り付けられる。まるでマーキングでもするかのように。これは自分のだとでもいうよう。はたまた甘えるように。


少しして花凛さんの体が離れる。手だけが微かに自分の背中に触れられているのがわかる。


「あの……花凛さん「振り向かないで!」


俺は体を反転させようとしたところを中途半端に止められる。チラリと見たところ花凛さんは顔を伏せていた。


「今はダメ」


弱々しい声で言う。


その言葉に心臓が大きく跳ねたような気がした。この気持ちは何だろうか?『萌え』とは同じようで違うような。


トスっと小さく音がした。少しだけ後ろを見ると花凛さんが床にへたり込んでいた。


「大丈夫ですか!?」


慌てて床にしゃがみこむと花凛さんに声をかける。一体どうしたんだろうか?俺に触れすぎたことによる気持ち悪さかな。へこむ。


俺が花凛さんの肩を触るか触らないか右手を彷徨わせていると、その右手を掴まれる。


「やっぱり私……蓮水のことが……」


花凛さんが何かを言いかける。花凛さんの顔は真っ赤に染まっている。というか待ってくれ、その文章はまるで。


花凛さんの口がすぼめられ。


「ここかぁーーーーーー!」


鍵が壊される音とともにドアが開け放たれる。


来たのはてっちゃんだった。シャキーンという風にドアを開け放った体勢で固まる。


どうやら少しおかしな俺たち二人の状況を確認したらしい。二人でしゃがみこんで、手を繋ぎ、顔を合わせている。誰でも固まるよ、そりゃ。


「お邪魔虫だったかな……あはは」


その言葉で花凛さんは起動する。俺の手を放すと、立ち上がりてっちゃんの横を駆け抜けていく。


今が授業中なんてことは花凛さんの頭の中にはないのだろう。顔を伏せたままではあったが、少し見えた耳は真っ赤に染まっていた。


「お邪魔虫だったかな」


てっちゃんがさっきと同じ言葉を落ち込んだようにいう。


「てっちゃんはどうしてここに?」


「授業にお兄ちゃんと花凛ちゃんが出ていなかったから」


「それで心配して?」


「いや、絶対どこかでイチャイチャしてるだろうと思って混ざりに来たんだけど」


ちょっと?何を言ってるん?


「まさかあんな感じの雰囲気になってるとは思ってなくて。何したのお兄ちゃん?」


「何で俺が何かした前提なんだよ」


「だって意外にヘタレな花凛さんだよ!」


「登校風景を見られた」


てっちゃんの戯言に付き合ってたら時間がどれだけあっても足りんよ。


「あちゃーそれが起爆剤かーおよよ?さすがのお兄ちゃんでも花凛ちゃんの気持ちに……」


「まあ、だいたいは。さっきの行動を見れば」


「そっか」


てっちゃんが残念そうな気持ちと安堵の気持ちの両方をはらんだ目でこちらをを見てくる。


「じゃあ、教室に戻ろうか」


てっちゃんはペタペタと上履きを鳴らしながら誰もいない廊下を歩いていく。


花凛さんの気持ちね。安易にわかってるとは言いたくない。ただ予想はしていた。今までの花凛さんやてっちゃんからの反応からも判断してもそうなのだろう。


やっぱりモテない男子が妄想を拗らせているだけかもしれない。


ただそれでも俺の予想が正しいのなら。


「……ひどい誤解だ」


俺は呟いて立ち上がった。











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