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肉食系女子に狙われています  作者: シュガー後輩
第3章 俺と吸血鬼
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登下校と昇降口の漢字には共通性がある

さて学校に着いたが……みんなの目がいとうございます。そりゃそうだろう。平民の俺が二人の女の子を引き連れて登校してるんだから。


学校が近づくにつれて生徒の目が多くなってきたのでアリーさんには背中から降りてもらった。が、そんなことは『無駄!無駄!無駄ァ!』とでも言うように今度は俺の右腕の袖をギュッと握ってついてくるようになった。


どういうことなん。一気に接触面積が減ったはずなのに、胸の高まりが増加傾向にあるんだけど。ちらっと振り返ると不思議そうに首を傾げてこちらを見てくる。そんなに無垢な目で見ないで欲しい……


ちなみに空いている左腕はてっちゃんに組まれてるよ。こちらは童女の時よりもはるかに成長した身体を直に感じております。どんな感じか?ご想像にお任せします。やわっこい。


「では、鬼無里先輩。俺たちはアリーさんを職員室に連れ行くので」


「ああ、ではまた放課後に……」


俺たちの横を歩いていた鬼無里先輩がトボトボと教室に歩いていく。足取りが重いけどどうしたんだろう?実篤がいなかったからかな。仲良いし。いつも実篤と遊ぶときも一緒にくるし。軽めのブラコンなのかな?友達の姉弟の怪しい関係がここにきての発覚か。


ブラコンの姉。あると思います。束縛系でも、甘やかし系でも、天邪鬼系でもいい。妹とは違う、こう姉ならではの弟がちょっと強気に出れない感じがいいよね。妹系も捨てがたいので、一番最強系はやはり姉妹ものだろう。


ちなみに俺は捻くれぼっちの近く在住の胸格差姉妹が好きだよ。胸の話もそうだけど、あの二人だけでどんだけ属性を網羅すれば気がすむんだろうね。ね。


そんなことより、隣の金髪さんのお世話だった。


「ここの部屋に先生がいますから。あとはその人が案内してくれますよ」


「え?……ハスミじゃないの?」


「はい」


「一緒にいちゃダメ?」


「はい」


「わかった」


「うん、じゃあ指離してください。そろそろ布を突き破りそうです」


ハキハキとした返事と不安そうな表情が全然あってません。謂れもない罪悪感が……心を鬼にするんだ俺。独り立ちを促す父親のように。


やっと指を離してくれたアリーさんを置いて教室に向かう。絶対みんなに注目される。嫌やわー。まっ、すぐにおさまるだろうけどね。


「ハスミ」


「ん?」


アリーさんに呼ばれたので振り向く。


「……またね」


微かに笑ったアリーさんがこちらに小さく手を振っている。窓から入る光がアリーさんの金髪を輝かしていた。それは吸血鬼というよりまるで女神みたいだった。


「はい、また」


アリーさんは異国の地で寄りかかるところを見つけた。それが俺。かなり頼りなく張りぼてのようだけれど、少しぐらいアリーさんを支えたいとそう思った。


はぁ。最初は突き放しておいて、相手が可愛いとすぐこれだ。男なんて馬鹿ばっかだ。つくづく自分が嫌いになる。


「ふぅ。じゃあ、てっちゃん行こうか……あれ?」


てっちゃんがいなくなっとる。さっきまで横にいたはずなんだけどな。現にまだ左腕にはてっちゃんの温もりが。温もり……






トントン


「おおう!」


「きゃあ!そんなに驚くこと?」


「なんだ花凛さんか」


ふぅ、急に後ろから叩かれたせいでびっくりしたぜ。


「なんだとはなによ。ていうか、蓮水はなんでこんなところで左腕に顔を埋めてたの?自分の汗の匂いでもチェックしてたの?」


「え。はいはいはいはい。そんな感じでありますでございまするしだいですね。うん。エチケットってやつですね。はい。とんだお恥ずかしい仕草を見せてしまったようで。おほほ」


「動揺しすぎでキャラぶれすぎだから。怪しすぎるから」


花凛さんがジト目で見てくるが、真実なんて言えやしない。汗っかきの称号を冠されようとも、変態の勲章だけは受け取ってはならんのです。まあ、汗っかきって普通に言われても傷つくんだけどね。


霞にもよく言われてるし。『クンクン。もう兄さんこんなに汗の匂いをさせて人に迷惑ですよ。スンスン。これはもはや異臭で訴えられるレベルです。スゥーー早く脱いでくださいそのYシャツ。匂い移りがする前に』って。


そういえば匂い移りってなんなんだろうか?洗濯をしない俺にはよくわからんけど。むう、霞に任せっきりてのもよくないか。ちゃんとありがとうと伝えなきゃな。


「まあいいけどね。それより蓮水これからちょっとつきあってくれない?」


「これからって、もう授業が始めるんですけど」


「少しで済むからさ」


「あんまり引っ張らないいでくださいよ。自分で歩けますから…って痛い痛い痛い。花凛さん。腕がギシギシいってます。力を抑えてください」


「いいから♩いいから♫」


「軽く楽しげな言葉とは裏腹に力が強くなってますけど」


***


「ほら入った入った」


「どうしたんですか?部室まで連れてきて。こっからクラスルーム遠いんですけど」


ガチャリ


は?なんで、花凛さんは入口の施錠をしたのかな。


密室に男女が二人きり。もうすぐ授業だから廊下を人が通る心配も少ない。


まさか、密室殺人完全犯罪。


花凛さんは鍵を閉めて、振り返るとこちらに歩いてくる。上履きなのに何故かコツコツという足音の幻聴が聞こえる。


「ねぇ」


「はい」


バッとポケットから出したものを俺の眼前に構える。 それはスマホ。画面には写真。俺とてっちゃん、アリーさんの登校スリーショット(鬼無里先輩見きれとる。)だ。しかも抱きつきバージョン。


「これなに?」


いい笑顔で聞いてくる。しかしなんだろうかこの寒気は……室内温度が三度は下がったね。


「これだれ?」


花凛さんが笑顔のまま近づく。俺は下がる。昔、テレビで笑顔は一種の威嚇行動と見たことがある。確かにすごい気迫だ。尋常ではない気迫で俺の意識もだんだんと希薄。なんちって。


痛い痛い痛い。スマホの角を頰に押し付けないで。違うことを考えていたのがバレたのかな。とりあえず質問に簡潔にわかりやすく丁寧に答えるか。気分は先生のつもりで。


キーンコーンカーンコーン


授業が始まっちゃったよ。





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