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肉食系女子に狙われています  作者: シュガー後輩
第3章 俺と吸血鬼
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ハーレム主人公は女性の弱みにつけこんでいる

待ったか、世界。俺は帰ってきたよ。人をダメにする楽園から救いようのない現実に。


女の子と一晩一緒に過ごしちゃいました。その結果……


「あのそろそろ離してくれませんかね」

「いや」

「そうですか……」


アリーさんが背中にべったりとひっついて離れなくなった。後ろから両手を首に回されて朝からこのまんま。


なんでだろうな?俺何かしたっけな?昨日の夜ー今日の深夜?は突き放したはずなんだけど、なんでこんなに懐かれてしまったのやら。んん、わからん。


「朝ご飯が食べにくいんです」


「はい」


「うん、別にアーンをしてもらいたいわけじゃないんだよね」


うん、そういうこっちゃない。そういうこっちゃないんだよ。


「朝からイチャイチャと随分といいご身分ですね?」


黙々と口に白米を運びながら霞が言う。いや、白米掴んでなかったは。ただ、箸が上下に動いているだけだな。怖い。


「イチャイチャなんかしてないんだからね!」


「はぁ?」


「ごめんなさい」


食卓を明るくしようとしたお茶目なのに怒られた。えへへ、失敗♫失敗♩


「ごちそうさまでした!さぁ学校に行く準備でもしようかな」


戦略的撤退!なお、アリーさんは立ち上がってもなお俺にくっついたまま。ぶら下がっている筈なのに全く俺に体重をかけないという凄技をしている。それと何故かてっちゃんは朝食の間、ぶすっとして喋らなかった。嫌だけど仕方がない、みたいな顔をしていた。俺の主観だけどね。


「あれ?俺どうやって着替えんの……」


***


突然だが、ただいま失踪中のうちの親父は適当であるように見えるがそうでもない。痒いところにしか(・・)届かない人物といえよう。


「だからってアリーさんの転入の手続きを済ませてるとか」


「?」


懇切丁寧な説明によりなんとか離れてもらい着替えた俺は登校していた。アリーさんを引っ付けた状態で。玄関で学校に行くために再び説得に移ろうとしていた俺だが、アリーさんが出してきた書類に黙らざるおえなかった。そこにはお偉いさんのハンコと共に転入が許可されていた。何処と無くドヤ顔で見せられたブツに俺は諦めを覚えた。


「お兄ちゃんは甘ちゃんだにゃ。アリーさんを振り解けばいいのに」


「できたらとっくにやってるよ。異様に力が強いから困ってんだよ」


「どれどれにゃ」


何か背中が見えない力で引っ張られる。どうやらてっちゃんの仕業らしい。


「むむ、しつこいにゃ。ほっ、ほっ、ほい!」


アリーさんの体が俺の首のあたりを基点に上に右に左に振り回される。それでもウンともスンともならないの。いや!上はまずいでしょう!完全に両足地面からはなれてんじゃん!誰かに見られでもしたら……


「のわぁぁっぁあぁぁあ!」


ほら見られた。しかし凄い声だな。どんな人が……鬼無里先輩ではないですか…乙女の出す声ではないよ。


「何、なっ、なげぇ、な、なぁぁぁぁ!」


「ちょっと落ち着いてください。鬼無里先輩。キャラが崩れてますよ。だから、ぐらぐら揺らさないでください」


鬼無里先輩が頼れる先輩をかなぐりすて俺の首元を掴んで揺らしてくる。先輩でも人が浮いてるの見ると驚くんだなぁ


「何で背中に女の子をつけてるのかな!」


そっちかぁ。


「そこは私の特等席のはずだろ!?」


「違いますね」


それは俺に人間椅子になれって言ってんのかい?俺が四つん這いで鬼無里先輩がその上に足を組んで座る。すっごい似合うなその光景。俺の三下感と鬼無里先輩のお姉様感が絶妙にマッチしていますな。


「そんな…君はあの背中を預けあい戦場を駆け抜けた日々を忘れたのかい?」


「忘れどころか記憶に刻まれていません」


「そんな、あの時言ったじゃないか……」


「……何をですか」


「『背中をお前に預ける、今度向き合う時はキスをする時だ』って」


「気持ち悪い。俺がかなり気持ち悪いです。たいしてかっこよくもないですね!」


どうやら鬼無里先輩は落ち着いてきたようだ。冗談を言える余裕が出てきた。


「鬼無里さん、おはようございます」


「おはよう、天くん。で、そちらのお嬢さんはどなたなのかな」


「アリー・ウィークです。はじめまして」


「……ああ、おはよう」


アリーさんは一回俺から両手を外すと折り目正しく挨拶をした。そして再び定位置へ。…いやいや定位置ではなかった。あまりにも自然な動きだったから騙されるところだったぜ。急に鬼無里先輩がてっちゃんを引っ掴んで俺たちに背を向ける。


「あの羨ましい状況は何なんだい?」


「何でしょうね……私が聞きたいですよ」


「君と霞くんが近くにいながら、何故むざむざと女の子を増やしてしまうんだ!」


「違います。あれはお義父さんが連れてきたんです。それに私だってまさか一日で落とされるとは思わないですか?」


「それは蓮水くんが魅力的なのが悪いな。それに君だって私が初めて君に会った時から蓮水くんにべったりだった気がするな。ならば予想してしかるべきだったはずだ」


「うぐっ……」


「まあ、此方としては負けるつもりはないがね。最後に笑うのは蓮水くんと一番付き合いの長いこの私だ。」

「時間で測っているうちはまだまだですよ。鬼無里さん、愛は時間を超越するんですよ」


「なんだと」


二人がずっとボソボソと話をしていて此方に構ってくれない。そろそろ学校に向かいたいんだけどな〜


「……んん」


アリーさんが俺のほっぺに自分のほっぺを擦り付けてくる。その行為から気をそらすように俺はまだ見えぬ学校生活を憂いていた。


アリーさん。擦り付けて満足そうな声出すのやめて。

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