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肉食系女子に狙われています  作者: シュガー後輩
第3章 俺と吸血鬼
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バンパイアほど弱点がダダ漏れな怪物はいない

状況を確認。身体。ピクリとも動きません。脳。意外に活性化しています。フル回転です。視界。不明瞭。美女の顔のドアップ。てっちゃん。殺気は感じます。今日の一言。へるぷみー。


きっちり状況確認を終わらせました。いつものパターンです。どうにかしなければ、今にもあの牙で食いつかれてしまいそうです。あの牙で……牙……の近くにある唇。柔らかそうな唇。ぷっくりとした唇。薄紅色の唇。が、俺の首につくかもしれない……


噛まれてもいいかな。


まあ、あれだ噛まれてもどうなるかとか決まったわけじゃないしね。うん。きっと大丈夫でしょ。もしも危険人物だったら尊敬に値するお父様が家に連れて来るわけないしね。それにこれは……献血!そう献血だ。人助け人助け。やむにやまれぬことがあるよね。


さぁ、ばっちこい。


グギリっ


「ーーーっ!いったぁぁぁぁ」


「お兄ちゃんは何をやっているのかにゃ?な・ん・で、自分の首をさし出そうとしているのかにゃ?」


「だからって首を変な方向に折るなよ」


「せっかく助けてあげたのに、それを無に帰すような人にはそれぐらいが丁度いいのなにゃ」


「まあ、それに関してはありがとう」


アリーさんは畳に突っ伏して寝ていた。顔を畳にお尻が上に上がっている少しあられもない格好なのでごく自然に目をそらす。その目のそらしっぷりといったら、俺が街中で中学の同級生に会った時ぐらいだ。分かんねぇよ。


「眠っているのか?」


「うん。ちょーと脳の方に心地よいものを送り込んでにゃ。無理矢理落としたのにゃ」


「何それ怖い」


てっちゃんには逆らわないようにしておこう。むむっ。花凛さんも鬼の力が怖すぎて逆らえないし、鬼無里先輩には頭が上がらないし、霞にいったては反論さえ許して貰えないと。あっ俺ってばすごい底辺。みんなの土台になって支えてるなんて、さすがは俺。


「ただいま帰りました」


「おかえり、霞」


「おかえりなさ〜い。ありゃ?お義父さんはどこへいったのかにゃ?」


少し息を切らしながら霞が帰ってきた。ただ、汗を全くかいておらず少しばかりいい匂いがするところに女性の神秘を感じる。まあ、俺は汗をかいてる女性嫌いじゃないけどね。俺も可愛い後輩にシー◯ーリーズを渡すかっこいい先輩になりたい!


「逃げ足だけは速いようで取り逃がしました。アリーさんは寝てしまったのですか?」


「うん」


「そんな格好でですか?」


「うん」


「その近くにいる兄さんは一体何をしようとしているんですかね?ねぇ?」


「うん?」


「(アリーちゃんが)しゃぶりつこうとしていたにゃ」


「ちょっ!」


「ほう……」


霞の目がスッと細まる。完全に鷹が獲物を狙う目です。鷹…見たことないけど。殺し屋がターゲットを仕留める時の目です。殺し屋……見たことないけど。


「反論の余地をください」


「ありません。事実はこの場にあります」


みんな、俺の分まで生きて……


***


どうも殺気に晒された死地に追い込まれすぎて、常日頃から戦場の気持ちを忘れない相◯宗介みたいな男です。


ただいま深夜2時客間の前にきております。中にはアリーさんが寝かしてあります。とりあえずアリーさんの事を聞こうときております。


ふふっ。みなさん案ずるなかれ。俺がここで一人で侵入しようとしているとでも?中にはすでにてっちゃんがスネークしておるんですよ。


そしてふすまがあく。


「お兄ちゃん。入っていいにゃ」


「もう、話せそう?」


「今はおさまっているにゃ。聞きたいことがあるなら今にゃよ。アリーちゃんの親のこととか正体とか」


「?」


てっちゃんの言葉に疑問を浮かべつつも部屋に入る。アリーさんが敷布団の上に女の子座りをしていた。豆電球の光がかすかにみんなを照らしている。


「落ち着きましたか?」


「うん……」


「一つだけ聞きたいことがあります……血って吸われたらなんかなるんですか?」


「「?」」


二人がキョトンとした顔を見せる。


「最初の質問がそんなことにゃ!」


「そんなって……大切なことだろ?どうなんですか?」


「大丈夫……血を少しもらう。身体も……大丈夫」


「そうですか。ではどうぞ」


俺はシャツを引っ張り首元を差し出す。一杯いっとく的な感じで一思いにやってほしい。


スパカーン


「何をやってるにゃーーー!もっと他に聞くことがあるでしょうにゃ!もっと読者が知りたいことがあるだろうにゃ!」


「はい?他に聞くことなんてないでしょうに。俺が知りたいのはそこだけです」


「お兄ちゃんは、これから一緒に住むかもしれにゃいんだよ!しかもお義父さんに認められたこ、こ、こ、…こんやくしゃである可能性もなきにしもあらずかもしれなくないんだよ」


「うん、落ち着けてっちゃん。日本語がおかしいからね。それに婚約者だって、親父の冗談だし……婚約者かぁ」


「なんでちょっと嬉しそうかぁぁぁ!」


夜中にも関わらずてっちゃんとやんややんやしていると、アリーさんが俺の袖をクイクイと引く。


「何も聞かない?」


「ごめんなさい。聞きません。きっと色々ややこしいことがあるんだろうと思いますが、絶対に聞きません。もう、同じ轍はふみません」


「私を…いじめない…?」


「いじめる?なんでですか…ってなんで泣いてるんですか?えっと俺いじめてないですよ。ねぇ?ええっと話を聞いた方が良かったのかなぁ〜?いやだけどそれをしちゃうとなぁ」


俺が突き放したせいかアリーさんが俺の手を自分の顔に当てながら泣いてしまった。手に温かい雫がポツンポツンと当たる。だけど心を鬼にしないとここで譲ってしまったらまたきっと面倒ごとに巻き込まれるし……


「てっちゃん。どうすればいいかな?」


「はぁ〜」


「ちょっと!?なんで呆れたようにどこかにいっちゃうの?泣いてる女の子がいるんだから慰めようよ」


「(なんでお兄ちゃんはこうもたらしセンサーが敏感なのにゃ。お兄ちゃんは突き放したとか思っているんにゃろうけど、人によっては何も聞かず寄り添う方がいい人もいるのに。まったくもう……今夜だけは貸してあげるよ。てっちゃんのものだけど)」


てっちゃんに置いてかれた俺はなんとこのまま一晩過ごすことになった。泣き疲れて寝てしまったアリーさんが俺の手を離してくれなかったからである。


添い寝はしてないからな。










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