スタートダッシュを失敗した場合なかなか挽回できないものです。
「んん〜〜〜〜〜」
今日もやっとこさ授業が終わり、俺は大きく伸びをする。べ、別に寝てたわけじゃないんだからね!長時間座ってたから体が凝っただけなんだからね!
俺は今誰にツンデレをしたんだろうか?授業にかな?その場合俺が授業を本当は好きみたいになるから違うか。じゃあ自分かな?『いつも自虐ばっかだけど自分の事が本当は好きなの!』末期ですね。入院しよう。
クスクスクス
おいおい、笑われちっまたじゃないか。声出てたかな。もしそうなら相当気持ち悪い。笑い声の方向みたら、放課後ペロリ事件の主犯で本当に俺の隣の英さんだった。
英さんの説明長いな。あとで若者が大好きっぽい感じで略しておこう。
どうでもいいけど、『最近の若者は〜』っていう定型文を『最近のティーンエイジャーは〜』って言い換えるとなんか最先端。
「遠江くん、寝すぎだから。もう〜今日の授業ほとんど寝てたんじゃん」
はい、ごめんなさい。
「まぁ眠かったんだで。あんだけ課題と予習、復習があったら睡眠時間削られません?」
「それで授業寝てたら意味ないけどね」
「おっしゃる通りです」
『ほぺしゅと』こと(俺の中さっき決まった)英さんだが例のあの日以降、朝普通に挨拶をしてくれ、隣の人と喋る程度の会話を俺としている。
というか自分であんな事をしておいたのに普通に会話できる、神経に敬礼。何回も言うようだがかなり褒めている。
もしかして俺気を使われてんのかな?未だにクラスの人と会話ゼロのおれに。いや全部クラスでずっと寝てる俺が悪いんだけどさ。
だけどもうクラスで集団ができてるんだけど。そんな中俺が入っていけるわけなくない?
「遠江くんは部活動見学いかないの?」
「これから行こうかと」
この高校には部活は普通のものが普通に揃っている。野球部、サッカー部、バスケ部、テニス部などの運動系のものから吹奏楽部、新聞部、文芸部などの文科系のもの。少し変わったところだと、競技かるた部、乗馬部、科学同好会などが存在する。ああ後、民俗研究部とか。
「じゃあ一緒に行こうか」
「えっ、いやです」
「えっ?」
しまった。状況が掴めなくて咄嗟に本音が出てしまった。もう少しオブラートにつつめよ俺の馬鹿。社交辞令に決まってんだろ。本気で嫌がるなよ。会話の流れだろ。怒涛の反省。
「私と周るのそんなにいや……かな。無理に誘ってごめんね」
やめて、そんな残念そうな顔でこっち見ないで。これは本気で俺に惚れたか。勘違い野郎で草。 今の自分のセリフ気持ち悪すぎる。
もしかして英さん友達いないの?それとも友達はいるけどこんな事に付き合わせるほどでもないって事。友達って何だろうね。
「いいですよ。俺も一人で周るの少し気まずかったところなので。一緒に行ってくれませんか?英さん」
「ううん、こっちから誘ったんだもん。ありがとう。後、英さんって言いにくいでしょ。花凛でいいよ」
「はあ……ありがとうございます?」
「なんで疑問系なの。じゃあ行こっか?」
女子と一緒に部活動見学か……俺は何処の勝ち組なんだろうか。もはやリア充。違うか、違うな。
***
何処の部活も勧誘に一所懸命だった。何とか新入部員を入れようとグイグイきたね。それはもう。
隣にいた英さん目当てだった感は否めないけどな。声をかけてくる割合が、俺3に対して英さん7ってどういう事だ。同じ一人だぞ。全然付加価値が違った。
民俗研究部は活動してなかった。ちょっと鬼無里先輩!後輩入れる気あるんですか?
んで俺は今英さんと二人、屋上のベンチに座っている。
いや、なぜ?なんだろうねこのシュチュエーションは。ここから恋が始まっちゃうのかな。世界は故意に~♪誤字ってる?気のせいだろ。
「ねぇ、遠江くん。人の嗜好ってどう思う」
突然の英さんからの質問。それはこれから私の好きなもので俺を言うって事ですか?深読みしすぎですね。
「それは好きなものっていう意味の嗜好ですか?」
「そう、歯の間とかにあるやつでも考えるっていう意味でもなくて、好み」
いや、そんなに同音異義語は考えなかったけど。しかし、嗜好ねぇ。辞書的な意味を聞いてるわけではないですよね。しかしあまりにも質問が抽象的すぎる。哲学の話ですか?
「他の人には共感できないものですかね」
「どういう事?」
「好きになるのに理由なんていらない。だからこそその感覚は自分独自なものであり、本当の意味でわかりあえる、共感できるわけない。頑張れば理解できても、きっと共感はできないんだと思うです」
以上、中学二年生時に俺が勝手に考察した言葉集より。
面倒だったからてきとうに答えすぎた。絶対引かれた。そんなに押し黙らないで。こちとら神メンタルだぞ。
「そっか理解はされるのか………」
「えっ?」
何故か英さんはこっちに倒れ掛かってきていた。立ちくらみかな?
「あれ?」
受け止め用としたら、そのまま体重かけられてベンチから引きずり降ろされてた。しかもちゃっかり入り口と給水塔の影の方に。
「あれ?」
高校1年生の春、俺は屋上で女子に押し倒された。