やっぱり最後はこうでなくては
「……ん」
俺はぬくもりに包まれた状態で目が覚める。こういう時の布団って本当に出たくない。布団の内部でずっと過ごせるようになりたい。小学生の時はあんなに大人が夜遅くまで起きてるのが羨ましかったのに今じゃその時逆である。
ん?俺昨日布団で寝たっけ?確か洞窟の草むらでそのまま寝た筈じゃ。
眠気まなこを頑張って開けると目の前に花凛さんの顔があった。というか花凛さんの手は俺の首に回り足の片方が俺の足の間に絡まるという抱きつくような格好である。
最近おなごとの接触が多いぜ。
この状況は何ですかぁ。どゆこと、どゆこと?なんかめちゃくちゃいい匂いするし。足の感触とかえらいことになってるからね。
とにかくだ。まずは足を抜こう。この状態はちとまずい。具体的には俺の膝が花凛さんの股に挟まっている。
そっ〜と、そっ〜とだ。
「……んあっ……ぁあ………いゃ」
なんか色っぽい声を出している花凛さんの目が開く。
「お、おはようございます」
「…………………ん」
ギュ
えっ?二度寝。二度寝するの?ちょっと花凛さん状況わかってる?後で後悔するのそっちだからね。というかさっきより強く抱き締めないで。いつの間にか足も絡まみ直されてるし。花凛さんって抱き枕使うタイプなの?
「ん〜」
何で顔を近づけてくるの?一体どんな夢を見てるの。こんなに近くでキス顔を見れるなんてどうもありがとうございます。じゃなくて。
「花凛さん、起きて起きて。とんでも無いことになてっるから」
「………………ふにゃ?……あう……キャーーーーーーーー!」
目がさめる。→状況を把握する。→赤面する。→ぶっ叩かれる。という一連のコンボ技をくらった。何この理不尽。いや、甘んじて受け入れよう。花凛さんの精神的被害の方がでかい。
「(私は何を!無防備な蓮水の顔を堪能してるうちに寝てしまうなんて!挙げ句の果てに夢かと思って蓮水にキ、キスを迫るなんて)」
「花凛さん。とりあえずすみません。とんだお目汚しをしてしまい、後悔の念がたえません」
「いえいえ、こちらこそご恐縮で。結構なお手前でありんした」
二人とも日本語がおかしかった。
「んっんん。花凛さんは俺を追いかけてここまで来たということですよね。唯一、能力が効かないわけですし」
「そうだよ。流石に私もちょっとビビって動けなかったけど……てっちゃんは私と同じ感じなのかな?」
「似たようなもんです」
俺は花凛さんにてっちゃんのことを伝えた。てっちゃんの正体。てっちゃんが何故ここにいないのか。てっちゃんが戻ってくるには。
「そう。そんなことがあったんだ。じゃあ、今は少し休憩中なんだ」
「そうですね」
「あの子が帰ってくるまでここで待つの?」
「いいえ、待ちませんよ。それはあの子供たちの仕事です。俺はちゃんと別れの挨拶をしました。てっちゃんにお礼も別れも言えなくてやきもきするのは子供たちの仕事です。俺も少しムカついてるんですよ。だからそれぐらいの気持ちは味わってもらいます。歳は関係ありません」
「ふふ、そっか」
「俺はてっちゃんが帰ってきたことを電話で教えてもらってからきます」
「うわーーさいてー」
そう俺は最低なのだ。だって高校生だから。いいとこ取り格好つけたがりのお年頃だから。
「じゃあ、帰ろうか」
「ええ、帰りましょう」
***
ボスッボスッボスッ
「兄さん。早く起きてください。ゴールデンウィークだからっていつまで寝てるつもりですか」
襖を叩く音と霞の声で起こされる。俺の毎朝の光景だ。今度は布団の温もりに包まれながら自分の部屋で寝ていると確認できる。人肌のあったかさと布団、大差が無いな。俺が洞窟で間違えたのも頷ける。寝ぼけた頭でそんなことを考える。
ん?布団ってこんなに重かったけ。五月だからそこまで布団はかけてないはずなんだけどな。
俺は目を開けると、目が合った。
黒いくりくりとした目と目が合った。
仰向けで寝ている俺の上に誰かが乗っていた。誰か?違うな。俺はこの顔を知っている。おかっぱ頭に薄く赤色の肌、見知ったものより成長しているようだが、それは紛れもなく。
「てっちゃん?」
「……おはよう。お兄ちゃん♫」
「てっちゃん」
「うん。そう」
「 「……………」」
「何で?」
残念な男かもしれないが、俺がてっちゃんを真っ先に見て感じたのは喜びでも驚きでもなく疑いだった。
「復活してから、さっさとこっちまで来てくれたのか?」
「違うよ。起きたらここにいたの」
「何故?てっちゃんは復活場所はあそこの洞窟の祭壇みたいなところだって言ってなかったけか?」
「私、よくわかんない♫」
本当かよ。てか何で成長してるんだろう。ロリキャラの供給ストップは何かときついものがあるよ。だけど自分の胸板に当たる感触が、これはこれで……
「お兄ちゃんは私が心を読めることを忘れちゃったの?」
ドゴン
雑念を払うために自分の頬をグーで殴り飛ばす。
「はははは。なにをいってるんだいてっちゃん。覚えているに決まってるじゃないか」
「まあ、今更取り繕っても意味ないけどね」
俺の馬鹿野郎!もうこの正直者のお茶目さん。
「何でもいいが、てっちゃんとまた遊ぶことができるって事でいいんだよな」
「何で遊ぶことに限定したのかは置いといて、まあそういうこと」
そうか。そりゃは良かった。俺は上体を起こしててっちゃんを抱きしめた。
「にゃ!!」
「ありがとう、また俺の前に来てくれて」
俺は感謝の言葉を伝えた。細かいことは考えるだけ無駄。ただでさえ天狗とかいうファンタジーの存在なのだ。だから、この場で起きていることが一番大事。てっちゃんが、俺の友達がここにいること。それだけが。
「ふふ、ありがとう。お兄ちゃん。でも友達は嫌かな」
「えっ?」
「私が消えたときのこと忘れちゃったの?貴方のことが大好きです」
そう言っててっちゃんは俺の唇を奪った。唇にしっとりとした感触と共に鼻腔を太陽のいい匂いがくすぐった。この後俺がどういう反応をするのかは俺にもわからないが。鈍感主人公にはどう考えてもなれないことはわかった。そして、この時この瞬間だけは確かにてっちゃんに、とても純粋な一人の女の子に心を奪われた。
とりあえず、構想していた分はこれで終わりました。思いつきで書いてきました。ここまで、読んでくださった方々には感謝の念がたえません。本当にありがとうございました。
また、書きたくなったら書くかもしれません。




