好感度や信頼が一気に下がるのは不公平
気分が乗ったから連続投稿!
バッーーーン
閃光。俺の意識が現実に帰結した時最初に感じたのは。間に合うはずもなかった俺の足掻き。そんなの関係ないよというようにこの場所に来て、木を吹っ飛ばし、子供達を助けたヒーローがいた。
何故か天狗の仮面をかぶっているてっちゃんだ。
てっちゃんは泣き出してしまった三人を抱き上げながらあやしている。あやしたいならそのやけにリアルな仮面を外した方がいいんじゃないのか?
今度こそ、本当に一件落着かな。
そう思った。しかし世界はそんなに優しくなかった。
「キャァァァァァァァァーーーー!」
絹を裂くような悲鳴が自然の音にまけじとひびいた。
今度は何だ。土砂崩れが起きたか?熊とかイノシシが出たか?もう、何が起こってもおどろかねぇぞ。よし、ばっちこい。
そう、少しヤケになって振り返ると、村人達が駆けつけていた。一緒に捜索をしていた大人達。子供達のお母さんらしき女性。実篤に花凛さん。
因みに悲鳴をあげたのはお母さんがたの一人だ。何で、悲鳴を。
「子供達を返してぇぇぇーーーー!!」
…………………………………………………………………………はぁ?
この人は何を勘違いしているのだろうか?てっちゃんは子供達を助けてくれたんだぞ。それをよりにもよってそんな事を。
「お願いだから、子供を解放してぇぇ…」「子供達をどうするつもりだ!」「そんなに泣かせて、お前は恥ずかしくないのか!」「天狗の仮面なんか付けやがって。」「俺らの村の言い伝えを馬鹿にしてるのか。」「何とか言ったらどうなんだ!」「皆さん、あんまり犯人を刺激しないで…」「はん、見てみろ逃げ場なんてどこにもなぇよ。」「見ろよ。こっちのあまりの人数に焦ってやがるぜ。」「今すぐ、捕まえろ!」「いや、でも子供達が近くにいるから、迂闊なことは…」「ーーーーーーーーー。」「ーーーーーーーーー。」「ーーーーーーーーー!。」「ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー。」「ーーーーーーーーーーーーーー。!」
やめてくれ。お願いだ。やめてくれ。今すぐ皆、その口を閉じてくれ。そんな醜悪な言葉を吐きかけるのをやめてくれ。
よく、見ろよ。雨で縮尺が狂ってんのか?あの犯人子供達と同じぐらいの身長だろ。よく、見ろよ。周りに散らばる木片と倒れている木を。よく、見ろよ。子供達を守るように使っている小さな体を。
「違う。待ってください!俺の話を聞いて」
「そこの兄ちゃん!危ねぇからこっちに来い!よく子供達の居場所を見つけてくれた!」
俺に労わるような目を向けてくれる。優しい言葉をかけてくる。そしててっちゃんには親の仇でも見るような目を向ける。同じ人だ。
違うだろ。その目だけは、向けちゃいけないだろう。俺は再び、声を荒げようとしたその時。
「あの人は、犯人じゃありませんよ。皆さん」
実篤が優しく声を発した。訝しげに見られる事をも恐れず。
「そうそう。あの人はきっと助けてくれたんだよ」
花凛さんも加勢するように言う。
よかった。村人達も少しはこちらの話を聞くことができそうだ。集団心理とかいうのか。一人がこう思うとどんどん伝播していくのには恐怖を覚えたが。まあ、これで少しは事態が好転するはず。
「お前らもしかして、犯人とグルか?」
誰かがその一言を投じた。
たちまち広がっていくのは疑惑。
「おいおい、そりゃないだろ……」
実篤を冷や汗をかきながら呟く。
本当に。
てっちゃんが道を塞いでいた大木を少し時間をかけてよじのぼり向こう側に消えていく。
まるで、自分は人間ですよと印象づけるような動きで方で。天狗などあやふやなものではなく。そしてまるで俺らを助けるようなタイミングで。
「あっ!あいつ逃げやがったぞ!」「でも、よかった子供達は無事そうだ!」「本当に本当によかったな」「しかし、犯人も間抜けな奴だ。こんな雨の日に決行しなくてもな」「そうだな」「というか、カラスの羽とか置いといたら俺ら探してなかったかもな」「ああ、ありそうですねそれ」
子供達に駆け寄る母と。笑いあう大人達。いかにも自分は冷静ですよみたいな人は俺らにまだ注目している。
「《お前ら、黙れよ》」
ザァーーと雨の音だけになる。ああ静かだ。煩くない。
混乱した様子でこちらを見る
「《村に帰れ》」
もう見たくなかった。
***
「ゲホッ!ゲホッ!オエッ………クソッ」
俺は再び、雨の中を全力疾走していた。目指しているのはもちろん。てっちゃんの洞窟だ。
俺がもっとうまくやっていれば。てっちゃんにあんな目に合わせないで済んだのに。俺のせいで、俺のせいで。
たらればの話に意味はない。過去は変えることはできない。後で悔やむから後悔。そんな当たり前の事が頭の中で考えていた。




