雨宿りという言葉が綺麗に聴こえる
中々の間を空けてしまい申し訳ありませんでした。
結局帰れませんでした。山から。村に入る直前から雨がものすごい降ってきて村から一歩も出れなくなった。
山の天気は変わりやすいというがここまで酷いとは思わなかった。村の人いわく、近年稀にみる豪雨らしい。完全に絶海の孤島状態。
はっ、殺人事件の予感。
「犯人はこの中にいる!」
「なんのだよ」
実篤が俺の心を読んだかのようにボケを放ってきた。
「こんな殺人犯と一緒の部屋になんかいられるか私は自分の部屋に帰らせてもらうよ」
「鬼無里先輩」
「ビクッ なんだ猫か。驚かせやがって」
「花凛さん」
「この登山が終わったら(兄さん)と結婚するんだ」
「霞」
いや、みんなどうしたの急に。
なんでみんな死亡フラグを立ててんの?鬼無里先輩のは状況的にあっていなくもないけど、他二人はホラーと戦争ものなんだけど。霞は無表情でそのセリフを言うのはなんか怖いよ。することがなさすぎてヒマなんだよね。
まあ、雨宿りというか避難させてもらってるこの公民館、テレビが雨の影響で映んないしね。いや〜久しぶりみたなこんな見事なブラウン管のテレビ。体積どうなってんのってぐらいデカイ。
閑話休題
「このまま、雨が止まないとどうなるんですか?」
「ここに泊まっていくしかなかろう。幸い明日も休日だ。みんなでこの公民館で寝泊まりしていいか頼もうと思う」
「最後の山を降りるバスまで後どのくらいですか?」
「後、三十分ほどだね」
これは今日ここに泊まることが確定しそうだな。
「スマホは繋がるから家の連絡はできるな」
「必要ありませんよ」
「だって爺ちゃんが居るだろう?」」
「あんな人は私たちがいなくて半狂乱になってればいいんですよ」
「……俺から連絡しとくな」
また、はなれにこもっている可能性もあるけどね。両親?はっ、ゴールデンウィークで飛行機が混む前に旅立ちました。何処なんだよリヒテンシュタインって。絶対日本からの直行便出てない。
「蓮水、蓮水」
「なんだよ」
実篤が興奮したようにおれの肩を叩いてくる。
「今日ってこのまま泊まる感じだよな!」
「ああ」
「なんかテンション上がってくるよな!」
「何故?」
「おまっ……バカなの?」
ケンカ売ってんなら買うぞ。ガチケンカしたら実篤に敵うはずはないけど。
「英さんという可愛い女子と一つ屋根の下だぞ!どんだけスペシャルなイベントなことか!」
「かぁーぺっ」
「何その反応。仮にも主人公がやっていい行動じゃない」
「実篤甘いよ。甘い。甘ちゃんだよ。甘々だよ。甘すぎて胃がもたれるよ」
「?」
「一つ屋根の下に居られると思うのか?俺が女子だったらテントを渡されて野宿だよ」
「いや、外豪雨なんですけど」
「人の身より、自分の身の安全が大事に決まってるだろ」
当たり前だ。だいたい学校の行事でも一緒に泊まるの嫌らしいぞ。だから女子の部屋に遊びに誘われているのは、男子の安全性を試しているからついていかないほうがいい。霞が言ってた。女子自身が言っているから間違いない。
「良くて軒下にはいれて貰えるかもな」
「そんな、悲しい一つ屋根の下は嫌だぁぁぁ!」
ここまで割と男子の現状を言ってきたが、例外はある。いわゆる『ただし、イケメンに限る』というやつだ。
「「(だから、きっとこいつだけは部屋に入れてもらえるんだろうな)」」
「「ん?」」
「お前今何か言ったか?」
「いいや、何も」
おかしいな今、頭の中で声がリフレインしたような?気のせいか。
「で、今日ここに泊まれるかどうかを聞きに言った鬼無里先輩は戻ってきたのか?」
「帰ってきた瞬間から女子だけを集めて部屋の隅で話してるよ。」
男子の処遇についてですよね。




