別れの挨拶でさよならって言うのは気恥ずかしい
お兄ちゃん、お姉ちゃんにたくさんあそんでもらいました!まる!という風に小学生達の日記に書かれそうなぐらいに俺たちは遊びまくった。
それはもう完璧に一夏の思い出をつくりにいってたね。
突然だけど 一夏の思い出と一夏の思い出とでは読み方が違うだけなのの全然違うよね。
一夏の思い出だったら、幼馴染とか金髪美女とか銀髪美女とかその従者とかとキャッキャッウフフ戯れてるんだろうね。
それに比べてこちらの一夏の思い出時たら……いや待て。さっきまで美人の先輩と女友達と妹とロリ達と一緒に遊んでたよな俺。キタコレ。惜しむべくは誰も好意を持っていないということかな。
俺ももう少しで一夏の思い出だったのに……あ〜あ。ハーレム主人公なんか滅べばいいのに。
ーーーーゲシッ
「痛ッ……なんで蹴るんだ実篤?」
「いや、なんかイラッときたから」
「お前はどこのチンピラだよ」
「お前がいつも俺にやっている事と変わらないけどな」
「ええ!!!!!俺がいつそんなことをした!!!」
「驚き方がわざとらしいんだよ!自覚症状ありまくりじゃねぇか!」
全く……俺のにはお前に対する愛(笑)があるだろ。
「はぁ……まあそんなことはどうでもいいんだ。そろそろ時間的に帰らないとバスに間に合わないんだよ」
もうそんな時間か。
「あいつらを村に送っていく余裕はあるのか?」
「それぐらいならあるよ。あいつらあれだろいなくなったとかいう子供達だろ。村で親が騒いでたよ。ん?そういえば天狗がどうとか言ってたな。あれ?お前がいなくなった時もおかしな点が」
「よし。じゃあサクサク行動しようか。な。な」
そうだった。俺ってここに連れ去られてきているんだった。
「じゃあ実篤は、子供達にそろそろ帰ることを伝えてきてくれ」
「了解だ」
実篤が子供達の方へ歩いていく。それじゃあ俺はと……
「てっちゃん」
唯一村の子供ではない天狗に話しかける。
「なんにゃ?」
「俺らはそろそろ帰るんだが……子供達も連れて帰っていいよな?」
「いいもなにも、みんなが望んだから連れてきただけにゃ。別に私の許可は必要ないにゃ」
「俺は望んでないけどな」
「そんな食べちゃいたいぐらいいい匂いをさせているお兄ちゃんが悪いにゃ!」
「逆ギレかよ」
「まあ今日はこれぐらいで許してやるかにゃ」
「何が!?」
一通りボケとツッコミをしたあと一息つく。
「じゃあ、私は村に帰らなくて不自然に思われるといけにゃいから、ここで退散するんにゃ」
「ああ、さっきのゆるふわ美人さんと帰ったとでも説明しておくよ」
「にゃははははは。お兄ちゃん。あの美人さんにドキドキしたでしょ」
「当たり前だ。彼女いない歴equal年齢を舐めるなよ」
「イコールの妙に良い発音がむかつくにゃ。あの誰かが彼女さんじゃなかったのにゃ?」
「おいおい。そんなことを言うのはあいつらに失礼ってもんだ。つりあわないよ俺とあの人たちじゃ。みんなすごい人だからな。仲はいいとは思うよ」
「……あっちはそう思ってないと思うけどにゃ」
「そうだったら嬉しいけどな」
まあ、そういうのを妄想乙wwっていうんだけどな。思春期の男子が一回は思う。『あれ、この人俺に気があるんじゃないの?』の罠。いや本当になんで俺あんなことを。
「これなら当分ほっといても私にもチャンスがありそうにゃ」
「なんの話だ?」
「こっちの話にゃ」
そう言うとてっちゃんはこちらに背を向ける。
「もう行くのにゃ」
「元気でな」
言葉数少なく別れを告げる。
「……お兄ちゃんは私のことを忘れないでね」
「約束したからな。まあ、この手をみるかぎり忘れないし、忘れない限り忘れないよ。」
「そこは、普通かっこよく忘れないって言い切るところにゃ」
「さっきも言ったろ。それを俺に求めるな」
後ろ姿を見てもてっちゃんが呆れていることがわかる。むう、むしろかなり誠実に対応しているんだが……厳しい現実より優しい嘘の方が好きなのかねぇ。まだまだこどもだぜ。やれやれ。
「はぁ……じゃあね」
「ああ、またな」
てっちゃんはロリとは思えないかっこよさで、後ろ向きに手をヒラヒラさせながら森の方に消えていった。
俺も帰りますかね。みんなが待っている。それなりに楽しい登山だったな。
あんまり山登ってないけど、最初の目的はハイキングだからそれでいいのか?




