漫画表現を現実でするとえらいことになる
「ゆ、許してください。グフッ」
てっちゃん(母親モード)がこちらに超高速キラーパスをしたせいで4対の目がこちらに突き刺さる。
「やだなぁ。蓮水。全然、こちらは怒ってないよ。ただ、ロリコンにシスコンに人妻とかいうどんどん性癖を積んでいくから。こっちがちょうky…しつけをしようと思っているだけだよ」
「……シスコンだったら私を愛してくださればいいのに。やはり兄さんはかわいい系が好きなのでしょうか?でも今更甘えるのも恥ずかしい。どちらかというと兄さんに甘えられたい。私なしで生きられないようにしたい」
「蓮水……姉ちゃんや霞ちゃん、花凛ちゃんみたいな人がありながらあんなに綺麗な人に手を出すなんてなぁ。万死に値する」
「さ、さっき言っていた事は冗談だよね?じょ、冗談にきまっている。まさか、もう私にチャンスはな、な、な、ないのかい。いやまだだ。………頑張れ私。蓮水くんは年上好きだと証明された。お姉さん系路線でいけば……うん頑張れ私」
うん。花凛さんと実篤以外は、俺と会話をする気があるのかな?全く声が聞こえないんだが。
「うわー!お兄ちゃんダサい!」
「お兄ちゃんクズい」
「カス」
「あらあら、そんなことを言ってはダメよ。お兄ちゃんが悪い訳じゃないんだから。頑張ってねあ・な・た♡」
霞たちから少し離れたところで子供三人とてっちゃんがこちらを見ている。
みんな温かい言葉をありがとうね。(錯乱)もう胸がいっぱいだよ。それに心配してくれた花凛さん達のことやずっと待っていてくれた子供達のことを思うと……くっ胸が、胸が張り裂けそうに痛む。胸が、むねが、む、
………腹がきつい。出る。出る。なんか出る。気にしないようにしようとしたけどやっぱり無理だ。
意識が飛ぶ。
ーーーーバシャァ
「ぐべっ」
「勝手におちないでください。人の話を最後まで聞くように教わらなかったんですか?」
「いや、気絶したからって水をかけたり、お仕置きのために木に吊るす人に教育とか言われたくないから。」
いい加減さあ俺をこの状態から抜けさせてくれ。腹に縄が食い込んできて痛いんですけど。というか拷問で自重を利用したものなかったけ?一歩間違えたらこれそういう感じだからね。
全く……体を縄で縛って木に吊るすなんて。
「大丈夫ですよ兄さん。聖書にちゃんと書いてありましたから。」
「えっ?ああ、聖書ってたまにぶっ飛んだエピソードが含まれているからその一つにあるのか?だけどそれとこれとは話が別……」
「あの偉大な銀◯などワン◯ースなどで一度は普通にやっていますよ」
「うん。それ違う。バイブル違い」
「だから兄さんならきっと大丈夫。私は兄さんのことを信じていますよ」
「だったら俺の言い分を聞け」
***
「痛たたた」
俺はやっと降ろしてもらい縄で縛られた手首をさする。
なんか手首に縄の跡って女子にあったらエロくない?…………聞かなかったことにしてください。
「蓮水、その手の平に書いてあるのは何?」
花凛さんがふと気付いたように尋ねてくる。
手の平っていうとこの『てっちゃん』という字のことかな。まあ、それしかないだろう。
「ちょっとよく見せてよ。」
そう言ってこちらに手を伸ばしてくる。どうやって説明しようかまだ迷っているが、見せるぐらいならいいか。俺はそう思っていた。
ーーーーギュッ
手が握られていた。いつものロリの方のてっちゃんが握っていた。俗にいう恋人つなぎで。指の一本一本からてっちゃんの小さなスベスベとした手が感じられる。
その顔には何故か焦りが生まれていた。
全員が突然現れたてっちゃんと突発的な行動に驚いている。
「てっちゃん?」
「………………!」
俺に呼びかけられるとビクッと反応する。状況を確認すると少しどもりながらいつもの笑顔で言う。
「あっ………知らないのにゃ?持ち物にはしっかり自分の名前を書くんのにゃ」
「「「はぁ?」」」
てっちゃんの軽口に反応する三人。
「兄さんは私の奴隷ですけど」 違うね。
「蓮水は私の唯一の友達だけど」 重いね。
「蓮水くんは僕の部活のメンバー。つまり部活の所有物。ということは僕の所有物」 間違っているね。
「「「つまり私のものだから」」」 論理の破綻。
そんなことを口火にガイガイと四人は話し始める。
「………おしっ」
俺はスクッと立ち上がると、まだ手をつないでいたてっちゃんをお姫様だっこで持ち上げると走り始める。子供達の方へ。
「「「あ?」」」
なんかとてつもなく怖い声が聞こえた気がするが後ろを振り返らずに子供達に言う。
「よし、行くぞ。今からおにごっこだ。おには未だに状況が飲み込めていない馬鹿なお兄ちゃんだ。逃げろぉ」
わーーと子供達が散り散りに逃げ始める。
「ちょっとちょっとお兄ちゃん!速く!もっと速くにゃ!おにごっこの鬼じゃなくてなんかリアル鬼みたいのも追っかけてきてるにゃ!」
てっちゃんが腕の中で何か喚いているがこちらはハイになっているのか聞き取れない。
わはは。なんか高校生になってから全力疾走なんて久しぶりで楽しくなってきた。
そんな気分がてっちゃんにも通じたのかてっちゃんの頬が緩み始める。
「……ふふふ。あはは。あはははははは!」
洞窟に笑い声が響きわたった。