かくれんぼで素で忘れられるのが一番悲しい
「じゃあ、お兄ちゃんは見つけたという事で他の人を探すにゃ」
見つかったというか嵌められたというか。穴だけに。
一応かくれんぼしていた事を覚えていたらしい。あの三人組はこの間ずっと隠れてんのかな。
「ちなみにおにに見つかった人はおにの奴隷になるにゃ」
「ちょっと待て」
それどんなゲーム?何カ◯ジなの?負けたら人としての尊厳を奪われちゃうの?今時の鬱系大人コミックの設定かよ。若しくはエロ同人誌。
一応補足するが、べ、別にエロ同人誌を読んだことがあるわけじゃないしー。知識として知っているだけだしー。そりゃあ興味がないわけじゃないよ。だけど見ないよ。うん。キマリハマモラナイトネ。
そういえば最近スマホでネット使用していると、広告がエロ漫画ばっかりなんだが。やっぱり調べすぎたことが原因かな。後、検索しようと『え』って打つと予測変換のところに『えろ』とか『h』とか出てくる。
「うわぁ……お兄ちゃん最低。そんなもの見てるにゃ?」
いつの間にかてっちゃんが俺と手をつないでいた。ものすごい蔑んだ目で見られている。
まさか俺がツンデレさんとかヤンデレさんとかクーデレさんとかメイドさんとかJKとか女教師とかエルフとか女騎士とかで心を日々ウキウキさせていることがばれたか。
「お兄ちゃんに精神的に汚されたにゃ」
「あははははははははは。…………なんなりとお申し付けくださいご主人様」
誤魔化すためにとりあえずひざまづいてみる。気分はイケメンできる執事風。てっちゃんの執事始まるよ。執事じゃなくて奴隷でした。てへ。
そんなに変わらないと思うけどね執事と奴隷。その人に奉仕してお金が貰えるか罵倒が貰えるかの違いでしょう。どちらもご褒美でしょ(瞳孔開き気味)。おっと危ない危ない。小さい子から蔑んだ目で見られて新たな扉を開けちまったぜ。
てっちゃんの反応がない。引き気味に固まっていた。怒りで興奮しているのか顔も赤い。息遣いも荒い。
「……てっちゃん?ボケの放置は困るんだけど」
そう言いつつてっちゃんの頬に手を近づける。
「んにゃぁぁぁ!」
「へでぃぶ」
見えない力で吹き飛ばされる。ゴロゴロと硬い岩肌を転がっていく。
ーーーーゴツン
「痛い」
結局壁際まで飛んでいき逆さまの状態で壁に背中をあずけるようにして止まる。ふう、俺が受け身を覚えていなかったらケガをするところだったぜ。
「……やばいにゃ。やばいにゃ。やばいにゃ。さっきの自分の顔を少し下から見られる角度はやばいにゃ。はぅぅぅぅ。なんかお兄ちゃんがすごい頼りになりそうな優しいお兄ちゃんに見えたにゃ。あれ?だけどお兄ちゃんは優しいお兄ちゃんだからこれは必然なわけでありますにゃ?にゃにゃにゃ?あんな時だけキメ顔をするにゃんて……」
てっちゃんが盛大に悶えていた。あっちもあっちで盛大に地面を転がっている。なんか所々で『にゃ』って言っているのだけわかる。
俺も難儀なもんだ。まさかその言葉?だけこの耳が拾ってしまうなんて。
てっちゃんが重力系の技をかけられようになっている。なんか地面に倒れていて、てっちゃんに何本もの縦線を幻視する。俺が自分の黒歴史を掘り返された時に似てる。
「てっちゃん?どうしたの?魔王を決める百人の魔物の子の戦いにでも巻き込まれた?」
「……雷なんてもの口からはけないにゃ。てっちゃんがはくのは毒とか暴言とかぐらいにゃ」
「それはどちらかというと吐き捨てるみたいな感じだよね」
「漢が細かいことを……ぺっ」
「てっちゃん」
凄いワイルド風になってたけど?男が漢みたいになっってたけど?何故?いきなりすれ始めた。
「てっちゃん。お父さんそんな子に育てた覚えないわよ!」
「お父さんなのかお母さんなのかどっちなのにゃ……というかそろそろ二人とも立とうにゃ。」
おっと、二人ともさっきの状態のまま話していた。
ーーーーパンパン
「さて、じゃあ未だに正直に隠れているかもしれないあいつらでも探しに行ってやるか」
「にゃはははは。忘れられのはかわいそうだしにゃ」
そう経験者のように語る。悲観に満ちた風にではなく茶目っ気たっぷりに。
てっちゃんは差し出した俺の右手を強く握りしめた。あたかも右手にあるものを俺に染み込ませるように。
「それじゃあ行くにゃ!」
はじける笑顔がそこにあった。




