生まれ育ちは性格に大きな影響を及ぼす
ものすごい更新が遅れてしまい申し訳ありませんでした。
なんかうまく書けませんでした。
途中から視点が変わります。
「のわぁぁぁ」
滑ってる。滑ってる。滑ってる!だが良かった。斜面になっていて、垂直だったら怪我しているレベルで深い。
しかし地面に尻は擦れるし、思いの外速くて怖すぎるよ。なんで俺がこんなことに……うさぎを追いかけたわけじゃないのに。
ーーーーーーーードンッ
「痛ったぁ」
俺は地面に打ち付けた尻をさすりながら周りを見る。落とし穴はどうやら地下の空間へと繋がっていたらしい。その空間は祭壇?が置いてあり、蝋燭の灯りに照らされるなんだか物々しい部屋である。
なんかあれだ。RPGで生き返る所みたいな。某有名ネット小説の中に出てくる復活する場所みたいな。
「何処だここは?」
「天狗が生まれる場所にゃ」
誰かが答えてくれるとも思わなかった問いに反応される。いつの間にか祭壇にてっちゃんが座っており、ふちに腰をかけ足をぶらぶらさせている。
「ごめんにゃ。どうしても二人で話しかったにゃ。少し手荒い歓迎許してニャン★」
「全然許す」
はっ!つい可愛くて食い気味に許してしまった。手を猫のポーズにしてからの上目遣い、それに『ニャン』の時の絶妙な首の傾げ具合。まさに至高。
なんども言おう。ロリコンではない。ただ可愛いものを可愛いと言っているだけ。あれだ、女子が犬猫獣小動物を見て『かわぁいい〜』と言っているのと同じ。
「お兄ちゃんは単純でやりやすいにゃ」
「そりゃもう純真の代名詞と言われる俺だからな。だからもう少しみんなは俺に優しくするべきだと思うよ。メンタルの紙装甲具合が極まっているから」
「お兄ちゃんは純真というより純次とか純一って感じだにゃ」
「それどういう意味?」
俺が高田さんとか石田さんに似ているということかな。俺はてきとうでもたらしでもないんだけど。
「まあ、俺のことはどうでもいいけど………ここが何処だって?」
「私達が生まれる場所にゃ」
『私達』に、『生まれた』ではなく『生まれる』か。
てっちゃんは勢いをつけてピョンと祭壇から降りる。そして俺の目の前までくると真っ直ぐに俺の目を見て言う。
「貴方に私のことを知ってほしい」
てっちゃんの表情は子供が浮かべていいような表情では無かった。瞳に弱々しい輝きをたたえている。さっきまでの空気は何処へやら。そこにおふざけは存在しない。
「いいよ」
知るだけなら。俺はなるべく軽く答える。単純に一緒に遊んでいる相手が楽しそうではないのが嫌だからな。聴くぐらいならお安い御用。
俺は4月の時のように再びこの少女に深くかかわることになる。
***
今、私はいつになく心地よい温もりを感じていた。背中にお兄ちゃんの体温や心臓の鼓動を感じる。私はお兄ちゃんのあぐらをかいた足の上に座っていた。
この体勢になったのには、理由がある。これから話すことは面と向かって話したくなかったから。まあ、お兄ちゃんと触れ合いたかったというのは否定しなけど。
それと天狗は相手の身体に触れていることで相手の心を読むことができるから。
「では、天狗物語のはじまりはじまりにゃ」
「あれそんなテンションでいいの?さっきシリアスぽかったけどどうでもいいの?」
「それは聞いてからのお楽しみにゃ。言うなれば君の知らない◯語にゃ」
「何故危ない方向に言い直した」
ボケればしっかりとツッコんでくれるのはいいよね。小学生だとはこうはいかないもん。さすが高校生(笑)。
「ん〜まずは何から話しておくべきかにゃ〜あっ!天狗に性別はないのにゃ」
「えっ……」
「愕然としてるのが見なくても伝わってくるのにゃ。ついでに言えば寿命も、姿でさえ明確には定まってないのにゃ」
天狗は容姿などという見た目だけならいくらでも変わることができる。ただ、成り易い姿というのがあるのであながち定まってないとは言えないかもしれない。
寿命なんてものはそれはもう綺麗サッパリ存在しない。
「おいおい、寿命がないんだったら今頃この世界が天狗で埋め尽くされないか?」
それが今日伝えたかった事。
「寿命はないけど、消滅はするのにゃ。天狗って」
お兄ちゃんは何も言わない。
「誰かに存在を忘れられた時。誰かに存在を拒絶された時。誰かに存在を否定された時。誰かに存在を殺された時。天狗は消滅するの」
お兄ちゃんは何も言わない。
「天狗は存在が認められなければ生きられないの」
だから私は子供と遊ぶの。超能力を見せても純粋に喜んでくれるから。大人のように畏怖の目で見たりしないから。
「だからお願い。私の事を忘れないで欲しい。この世界に繋ぎとめて置いて欲しい」
私たちは記憶を引き継ぐ。何度もあの目で見られてきた。もう、人に切り離されて消えたくない。もうあんな思いはしたくない。
「約束はできない」
無情な言葉だった。ヒュッと冷気のようなものが胸の中に入り込む。
でも、お兄ちゃんは苦笑いしながら続けた。
「約束は絶対まもるものだから安易にカッコよく主人公みたいに『君の事を忘れない』なんて口が裂けても言えない。だから……」
お兄ちゃんはどこからかマジックペンを取り出すと手の平に何かを書きつける。
「ほら、これで忘れない」
目の前にかざされた右手には大きく『てっちゃん』と書かれていた。
小学生の絶対に忘れ物をしないようなほうほうみたいに。いびつな字で書かれていた。
「あは……あははは……本当にお兄ちゃんは馬鹿みたいにゃ……………ヒック……」
私はその右手に縋り付きながら顔をお兄ちゃんの胸に埋めた。頬に流れ落ちてくるものは温かった。




