田舎の子供の順応力は異常
「よし、まずは自己紹介からしよっか。お兄ちゃんの名前は遠江 蓮水だ。言いやすいよう好きなように呼んでくれ」
「じゃあ、メシだにゃ」
「却下だ。天狗」
速攻で茶々を入れてくる少女に食い気味に拒否の意を表す。というか肩から早く降りてくれないかな。重いし、照れる。なまあs何でもないです。
「却下だにゃ。お兄ちゃん♫」
……あざとい。だけど割と好き。もっと呼んで。最近霞が冷たいせいで妹成分がたりないのです。
「メメはメメだよ」
「僕は光輝です」
「私は、沙百合!」
次々に名前を言う三人。ふむ、メメに光輝に沙百合ね。特になんの共通点もない名前だね。ふむとか心の中で思って恥ずかしい。
「君ら三人はやっぱりこいつに誘拐されてきたの?」
「「「うん」」」
「よし有罪、天狗正座」
「あい」
天狗童女(笑)は身軽にも頭の上に正座し始める。120センチくらいの女の子が、男子高校生の上に乗っているというのも中々シュールな光景だな。まあ無理矢理下ろすけどね。
「で、何か釈明があるか?」
「ぶー私のせいだけじゃないにゃ。あの三人も別に抵抗しなかったにゃ。むしろ望んでたにゃ」
「本当に?」
「「「………………」」」
おうおう。わかりやすくこちらから目を逸らしやがりまして。さて、この三人とももう少しOHANASIが必要のようだ。防犯意識が足りない。
***
三人とプラス1の要領を得ない子どもらしい説明をまとめてわかったことは嘘偽りなく三人は望んでここに来たと言うこと。
沙百合が悪さして母親に怒られて家を飛び出して泣いていたところ、光輝とメメが慰めに行った時に天狗童女がそこに付け込んでここに連れてきたと言う。
きっと母親と売り言葉に買い言葉で帰るに帰れなくなったということが推測できる。
まあ、あるよね。子供の時に『もう、家出する!』とか言って飛び出しちゃうことって。俺の家の場合は小学生5年のときそれをしたら『達者で生きなよ』と送られたけどな。ガチで三日間ほど家を出たのになんの行動も起こさなかったらしい。
帰ったら母親に舌打ちされたので枕を濡らしたものさ。
「そういえばお前らの村ってここから近いんだよな?」
小学生の足で来れるくらいなんだから。
「別に……近いわけじゃないぞ」
「そうなの、てっちゃんが運んでくれたから」
「てっちゃんすごい!」
「てっちゃん?」
俺が疑問符をあげると三人は天狗童女を指差した。そうかよく考えたらこいつおかしくないか?(←今更感)
「俺を持ち上げたり、枝と枝の間を走ったり、人の心の中を読んだり、頭に正座した時重さを感じさせなかったり。なあ、お前は一体何者なんだ?」
「むーだから天狗って言ってるにゃ!見ててにゃ」
徐に俺の手を掴むと、掴んでいない方の手で遠くに置いてある岩に向ける。
「とうぅ!」 岩が浮いた。
「とりゃ!」 岩が回転した。
「オラオラオラオラオラァ!」 岩が粉々に砕け散った。
すげぇ。ヤベェ。かっけぇ!
これ天狗の神通力ってやつなんじゃないの。そうか天狗は実在したのか。花凛さんみたいな中途半端なやつじゃなくてマジもんだよ。花凛さんなんてしでかしたことは男を襲っただけだからね。
気がつくと天狗童女がまじまじと俺の顔を見ていた。
「何か?」
「いやー別になのにゃ」
一気に破顔した天狗童女は再び俺の肩の上に座り込んだ。俺の頭に顎を置いて機嫌良さそうにしている。
「いやーお兄ちゃんが子供でよかったにゃ〜」
「なんだそれ。というかお前は本当に名前ないのか?」
「うん」
「……そうか。わかった。だからてっちゃんと呼ばれてんのか」
「さっきまでと同じで天狗とか天狗(笑)とか天狗童女とかで呼んでもいいにゃ」
「申し訳ありませんでした。てっちゃんと呼ばせてもらいます」
やだ、この子心が読める。てっちゃん恐ろしい子。
下山するにしてもメメたちの村に行くにしても、てっちゃんに頼まないといけないしどうするかな。
***
「そういえば、なんで語尾に『にゃ』ってつけてんの?」
「そうした方がかわいいよって言われたからにゃ」
「ほ〜」
「『YESロリータNOタッチ!あっでも手を繋いじゃってる!あひゃぁぁぁぁぁ。』って心の中で言っていた人からにゃ」
事案だ。
「アウトぉ!てっちゃんはどんな人をさっらてきてるんだよ。ちゃんと考えて。」
「メメ達と同じぐらいの人だったにゃ」
「そいつもショタかよ」




