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こんな物語の結末も。

  目を覚ましたらそこは知らない国でした。


  すいません。嘘です。周りを見渡すにここは保健室です。


 ……この際だから二度寝するか。保健室のベットふかふかだし。まあ、学校が閉まる時間になったら誰かが起こしてくれるだろう。起こされなくても朝まで起きない自信があるから問題なし。


ーーシャァァ


 「あっ蓮水くん目が覚めたんだ。……ってどうしたのそんな残念そうな顔して」


  二度寝しようとした所で邪魔されるとは……英さんめ。


  少し恨みがかった目で見ている俺を気にもとめず、英さんは椅子を引きずってきて近くに座る。ん?なんだろう英さんの目がいつもより三割増しぐらいで慈愛に満ちているんだが。


  なにシスターなの?迷える子羊である俺を導いてくれんの。シスターの肌を全く見せないあの格好って一周回ってエロいと思います。というかシスターってどこで逢えんの?まだ見たことないんだけど。


  そういえば日本では神に仕えている巫女さんがいるけど、正月にお守りとか売っている人はバイトらしいね。つまりあの服装は誰でも出来ると。なんだろう神社は俺たちに謝った方がいいと思うよ。


……なんで英さんはずっと喋らないのかな。ニコニコしながらなんでこっちずっとみっているのかな。おいおい俺に会話を始めさせるとか難題すぎない。俺は『えっと…会話しませんか?』と言ったことがあるんだぞ。会話をする前に。



「どう?気分は?」


  やっと英さんから言葉が飛ぶ。


「いいですよ。頭痛もありませんし、クラクラもしてません。いつも通りです。もはやこのまま二度寝できる勢いです」


 「前後の言葉が噛み合ってないよ!」


 英さんはツッコミをした後、クスクスと笑う。だからそうどうしてそんなに穏やかに笑うのだろうか。


「あ〜蓮水くんはおかしいなぁ」


「そうですか?そこら辺に生息しているリア充とか捕まえたらもっと面白い話を一生懸命話してくれますよ」


 「ううん。だって普通の人だったら女子を屋上に呼び出しておいて『あなたはおにです』みたいなこと言わないよ」


 確かに俺氏普通に気持ち悪いな。フヒッ。


 「だけど正解だったでしょう?」


 「うん。説明はできないけど、あの時あったことは夢でも幻覚でもない。だって今私は満ちたれた気分だから」


 これで食欲がおさまればいいんですけどね。食欲がまた出てきたら青いサングラスでもプレゼントしようかな。それはダイエットの方法だろ。


  一人ボケツッコミほど虚しいものはないと思いました。


 「そ、それでね蓮水くん」


 「なんですか?」


 「うん……その……ね」」


 「言いにくい事だったら無理して言わなくてもいいですよ」


 「大丈夫だよ」


  英さんは一度深呼吸すると一気に言葉を吐き出す。


 「わ、私はあなたを襲ったことあんまり覚えてないから!だからあの時あったことも私の意思じゃないから!だからキ」


 「はぁ、わかってますけど?」


  シーンという擬音がぴったりの状況が生まれる。英さんはかわいい顔を台無しにするようなアホヅラを晒していたけど、徐々に目は剣呑に頬を膨らませていく。なんだか不満気な顔だ。


「……キスをしたっていうのに……この反応はなんなのよ。そっちにしたら大したことではないって事?……キスを……私しちゃったのか……えへへ。」


  なんか呟いてて怖いから帰ろうかな。いや、さすがにここで帰ったら俺最低だろ。ちゃんと一声かけてから帰るべきだな。うん。


 「そろそろ帰「蓮水くん」


 「……はい。なんでしょうか?」


  英さんは下を向きながら言う。


 「なんで私を助けてくれたの?」


 ………………………………………………………。


 「助けたんじゃない。人が勝手にた「真面目に」


 あの名言を使うチャンスきたと思ったらさえぎられた。英さんもこのネタ知っているんだ。友達になれそう。


 「前にもこんな話をして答えた気がするんですけど」


 「それでも自分の手首を切って解決しようとするなんておかしいよ」


 「そりゃ自分の安全の……」


  止めた。建前じゃないちゃんと正直に話そう。打算に塗れてても英さんが望んでるのは俺の本心だから。


 「……友達が欲しかったんです」


 「え?」


 「英さんがおにである可能性が出たときこう思ったんです。『おにならうつくしひめの能力は効かないのではないか』と。本音を言えるような、喋る事に怯えないような。そんな友達が欲しかったんです。だから優しくしようと思いました。これで仲良くなれたらなと。結局は自分のためなんですよ」


 「自分のためなんて当たり前じゃない」


  今度は俺が聞き返す番だった。顔を上げて真っ直ぐに俺を見る目は輝いていた。


 「そんなの当たり前だよ。100パーセント相手を思って行動する事なんて出来るはずがない。そんな役目はヒーローがやってくれるよ。だけどここにいるのはおに(悪役)ひめ(ヒロイン)。だからそれでいいんだよ」


  それは随分と恥ずかしいセリフだった。でも心が軽くなった気がした。


 「なんてね。じゃあ帰ろっか」


  英さんはイスからくるりと立ち上がる。そんな背中に呼びかける。


 「英さん」


 「花凛」


 「えっと……英さん?」


 「花凜でいいよ。友達でしょ?はい、か・り・ん」


 「花凛さん」


 「……………。」


 「か、花凛」


 「なに?蓮水」


  笑ってしまう。こんな事に向きになる花凛(••)もそれを楽しいと思った自分自身も。


 「俺とーーーーー」


 保健室は優しいオレンジ色の光で包まれていた。






これにて第1章は終了です!まだまだ連載は続きます。お付き合いいたただけると嬉しい限りです。

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