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最近の高校って屋上に入れるんですか?

一万PV達成しました!今まで目にしてくださった方々に平に平に感謝を。これからも読んでくれたら嬉しいです。

週の始まりというのは大変憂鬱なものである。勿論ここで言っている週の始まりというのは、月曜日のことだ。偶に日曜日を週の始まりだという人もいるが、感覚的には違和感しかない。だってそうだろサザ○さんのオープニングを聞きながら、『ああ、もう終わるんだな』って思うだろう。世に言うそれだよ。


 感覚論でもう一つ。太陽には始まりの月には終わりのイメージがある。こいつは突然何を言い出すんだと思う人もいるかもしれないが、ここでさっきの話とくっ付けると。


 一週間というのは、終わりで始まり始まりで終わるものである。


 痛々しいな。俺。


 土曜日の夜から日曜日を使って色々考察に考察を重ねてきた。そのせいで日曜日がさらっと終わってしまいこんなことを清々しい月曜日の朝から宣っているわけだ。本当にもう俺ってやつは……取り敢えずどことなく怠い身体を引きずりながら自転車を漕ぐ。


 程なくして学校に到着する。まだ始業までには時間があるので朝部活をしている人達が目立つ。そんな運動部をしり目に昇降口を通り抜け、吹奏楽部が奏でる音を聞きながら校舎を歩く。


 教室のドアを開くとまばらに人がいる。朝からスマホを突き合わせてゲームをする男子。クスクスと笑いながら話している女子。


 そして勉強に勤しむ英さんがいた。ドアを開けたこちらに気づいたらしい。


 「おはよう。蓮水くん」


 英さんが柔らかに微笑みながら挨拶をしてくる。俺はそのまま真っ直ぐ英さんの元に歩く。


 「今日の放課後に屋上に来てもらっていいですか?」


 「えっ?」



***


 屋上のフェンスに寄りかかりながら、空を見上げる。どうでもいいが屋上というのは創作物でターニングポイントになりうる場所だと思っている。


 告白の場所というのは言わずもがな密談の場所、決断の場所にも使われるのではないか。後、野球の練習のグラウンドにもなるしね。


 それだけ屋上というのは校舎の隔絶された場所にあるという事だ。


ーーガチャ


 どうやら英さんはちゃんと来てくれたようだ。これで無視でもされていたら恥ずかしさで爆発する。


 「こ、こんな所に呼び出して一体なんのようなの!」


 ……君は誰だよ。口調が全然違うんですが……テンパりすぎだろ。


 放課後、屋上、呼び出し、男女。ふむ。あれだね、これから告白するみたいだね。ごめんね。察しが良くて、最近の鈍感主人公だったら気付かないで『あれ、英さんどうしたんだろう?』って思うかもしれないが一般ピーポーである俺は違うよ。


 まあね、これは俺の配慮不足だからね敢えて触れずにこのまま話をこちらが冷静に進めてあげるかな。


 「は、英さん。落ちdgづdvしづdjd」


 「はっ?」


 うん、俺も緊張してたよ。テヘペロ。こっつんこ。


 いや意識した瞬間この状況めっちゃ恥ずかしくなってきた。がんばれ俺の羞恥心。耐えろ、耐えるんだ。


 「今何て言ったのか聞き取れなかったんだけど……」


 「すいません。今のは聞かなかった事にしてください。…………………英さん。落ち着いてください」


 「うん。お陰様で落ち着いてるよ。まさかテイク2を自分でするなんて」


 いやーやめてーそんな生温かい目でこちらを見ないで。英さんだって中々恥ずかしい口調だったくせにー。


 「まあいいです。本題に入らせてもらってもいいですか?」


 「そ、そうだね。きゅ、急に呼び出してどうしたの?」


 「まず話は土曜日の夜まで遡ります」


 「えっ?土曜日っていたら私たちの……初デートの日。」


 赤面して俯くぐらいなら最初からデートって言わないでほしいです。


 照れてる女の子は可愛いけどね。やっぱあれだよねツンデレが一気にボッと赤面するのより、クーデレがカーって徐々に赤くなっていく方が心躍ると思わないかい?どうでもいいか、いやよくない。



***


 土曜日の夜、呼び出された蔵の中で俺は『ひとくいおにとうつくしひめ』を読んでいた。図書館にあったような綺麗に製本されたものではなく、古惚けた紐で綴じられた冊子のようなものだ。


 最初は興味本意で読んでいたが、一気にその内容に引き込まれた。頭の中で荒唐無稽な仮説が組み立てられていく。理性がそれを否定する。本能がそれを肯定する。


ーガタッ


 「なんじゃ、来ているなら声をかけい」


 暗がりから突然、古惚けたじじいもとい俺のじいちゃんが出てくる。霞と同じ道着を着ている。長めの白髪を後ろで一本に縛り、あご髭をたずさえている。未だに背筋がピンと伸びており、身長が170センチぐらいある。


 「じいちゃん」


 「なんじゃ?久しぶりの再会に感動しておるのか?いいぞ。わしの胸に飛び込んでこい」


 「……なんで生きてんだよ」


 「くはぁ!孫の辛辣な言葉が胸に突き刺さる。だがまだわしは死なん!そこに孫たちがいる限り」


 そうだよね。じいちゃんがいくらか変わっているか期待した俺が馬鹿でした。何にための修行だ。まずその孫バカを改善しろ。


 よしがんばれ俺。なんとか今の雰囲気をシリアスに持っていくんだ。



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